【藪医者放浪記~捌拾捌~】

文字数 614文字

 濡れ衣を着せられるのは何とも不愉快なことだ。

 そもそも、自分がやっていないことをやったとされてウダウダいわれたり、罰を受けたりすることになるのであれば理不尽もいいところだ。しかし、濡れ衣を着せられることは生きていれば往々にしてよくあることだ。

 特にいえば、その疑われる人がどういう人なのか、そこに焦点を当てると疑われやすくなることも全然ある。

 例えるなら、その人がかつて罪人だったという場合。これは単純に過去に罪を犯したのだから、こういうことをしても可笑しくはないだろうということだ。或いは罪人ではないが、性格が暴力的、横暴だったりすれば、それだけで悪いことをしそうだと疑われることもあることだ。またはウソつきで、人から信用がないという場合もそうなるだろう。

「泥棒! 泥棒だ!」

 そのことばが響き渡った時、斎藤はもちろん、お雉も呆然としていた。かと思いきや老人は斎藤の羽織を引きつつ、

「お役人様! この泥棒めを早く捕まえて下され!」

 これには斎藤もお雉もワケがわからない様子だった。が、それからすぐにお雉は声を上げて不快感と不満を露にし、斎藤はお雉を宥めつつ老人に説明した。

「滅多なこというモンじゃありませんよ! この方はお屋敷から出て来たのですから盗人のようなマネ出来るワケがないですよ!」

 もっともなことではあるが、この箱自体はそもそもお雉が猿田源之助も牛野寅三郎から盗んだモノなのだが。

 老人は不服そうだった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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