【一年三組の皇帝~死拾弐~】

文字数 1,149文字

 心臓が爆発しそうだった。

 いくら決意し、決心しても緊張する時は緊張するモノだ。吐き気が止まらない。

 席につくと対面にいるのは関口だった。相変わらずの澄まし顔で、ぼくのことを挑発するかのように真っ直ぐに見詰めていた。他の取り巻きたちはあからさまに獲物が来たといわんばかりの笑みを浮かべていた。そう、ぼくは今、獲物でしかないのだ。

 と、関口がぼくのほうへとカードの山を置いた。ぼくはそれを見て表情で疑問を呈した。

「カード、林崎くんが配ってよ」関口がいった。「流石にこっちもチームみたいになっちゃってるし、イカサマしてると思われたら良くないからね」

 コイツ、流石によく頭が回る。ぼくがそう考えていることはとっくの昔にお見通し、というワケか。しかし、そこが見通せるということは別の方法を考える余裕もあるということ。またいつ可笑しなことをしてくるかわからない。つまり、この勝負、一切気が抜けないということだ。

 ぼくはゆっくりとカードの山を手に取り、丁寧にシャッフルしていった。細かすぎず、大雑把すぎず。どちらでもイカサマをするには都合がいいのはいうまでもない。

 シャッフルをする間は野次馬たちのコショコショ話す声が耳に響いた。うるさくてたまらなかった。今のぼくに必要なのは集中力であって、どっちが勝つかなんて下世話なオッズの予想なんかではなかった。

 シャッフルを終えると、関口はーー

「じゃあ、一枚、みんなに配ってもらっていいかな?」

 ぼくはそれに対してゆっくりと頷き、カードを裏向きにしたまま、その場にいる五人に配った。最後に自分のカードを目の前に置く。

「じゃ、準備はいいかな?」関口がいうと、周りのヤツラがみんな頷いた。「オッケー、じゃあ、レッツ『ネイティブ!』」

 そのことばと同時にプレイヤーはみな自分のカードを自分の前で翳して見せた。当然、そのカードが何なのかは自分では把握してはいない。もちろん、ぼくも。

 5、9、4、13、2......。

 ぼく以外の手札はそんな感じだった。警戒感しなければならないのは、関口の取り巻きふたりーー13と2。この『ネイティブ』は大富豪と同じような数字換算になっている。つまり、最強は2で最弱が3ということになる。そこから考えてみると、取り巻きのひとりの5と関口の4という数字はそこまで脅威にはならない。だが、もうひとつ問題はある。

 9ーーここが一番判断に困るのだ。

 このゲームにおいて9の前後はちょうど中間あたりの数字になる。つまり、自分が勝っているか負けているか、その判断を一番狂わされる数字というワケだ。

 しかし、もしここでぼくのことをカモにするとしたら、まず仕掛けて来るであろうことはーー

「おれ、交換するわ」

 2を持つ取り巻きが宣言した。

 始まった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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