【マジメは真面目か?】
文字数 2,737文字
マジメなヤツばかりが損をするとはよくいったものだ。
大体、そういう話が出てくるのは昔悪かったヤツが更正してマジメにやっているといったエピソードが出てくる時だ。
人間はそういった「更正」エピソードが大好物だ。ドラマや映画を見れば、不良が更正して良かった良かったとなるけれど、逆にマジメに頑張った人間は狡猾で悪辣に描かれがちだ。
あぁ、立派だなーーそういう意見が飛ぶのはよくある話だ。そして、その対立意見としてよくいわれるのが、マジメに頑張った人間は褒められないのはどうしてなの?といったモノだ。
これは確かにそうだ。
まぁ、自分で自分のことを「マジメ」と称するヤツは基本的に怠惰なことが殆どなので、そういうヤツラが報われないのは当たり前だろって話ではある。
ただ、問題なのは文句もいわず、ひた向きに頑張っているのに、褒められるどころか、ちょっとしたミスでもやたらと咎められてしまうような人のことだ。
こういった人の場合は、マジメであると同時に小心なところがあって自分の不平不満を人にいえないことが多い。だが、そうなれば、ストレスは溜まり、気づけば精神を病んでいるなんてことも普通にある。うつ病は現代病。
ちなみに、おれはマジメじゃないけど、ストレス溜めてパニックになりました。人によって精神を病むシチュエーションは様々ってことだな。それはさておきーー
マジメが損する世の中というのも残念な話ではあるのだけど、本当にマジメなヤツが損をしているのだろうか、とも思ってしまう。
というのも、その人がどういう意味でマジメであるかが重要だと思うのだ。
これはおれの主観でしかないけど、損するタイプのマジメというのは「マジメであることが目的になっている」のではと思えてならない。
これはいうなれば、「マジメでいなければならない、マジメでなければダメだ」みたいな感じである。要は自分に「マジメ」というスタンスを強いているタイプのことだ。
それではどうにもよろしくない。そうなるとマジメの先には何もなく、いざ損をするとなった時に身動きができずに溺れ死ぬ。そうでなくて、おれがいいたいのはーー
マジメは「目的」ではなくて、ひとつの「手段」でしかないということだ。
人は何かを成し遂げようとすると、不真面目ではどうにもならない。だからこそマジメになるのだ。そう、これが「手段としてのマジメ」ーーいい替えるなら、「戦略的マジメ」だ。
マジメというスタンスを戦略として使うと、マジメの先にまた別の道が出来てくる。自らが不利を被りそうになっても、強迫観念的にマジメであろうとしてない分、その時々でスタンスを柔軟に変えて対応できるし、視野も広く持てる上に思考のスイッチも容易になる。
マジメを自らに課したり、強要するのは日本人の悪いクセだと思う。多分、和を重んじる文化故に、そういうことも起こりやすいのだろう。そうーー
マジメというのは使い方を間違えるとろくなことにはならないのだ。
さて、枕が長くなってしまったけれど、こっからが本題ーー今日はマジメに関する話だ。じゃ、やってくーー
あれは中学二年のことだった。
その当時は林間学校の真っ最中で、カレーにキャンプ・ファイヤーにクラスごとの催しモノだったりとみんなエンジョイしていた。
おれもそのひとりで、焦げた白米に煮込み過ぎたカレーを掛けて美味しく食い、燃え盛る炎にこころを奪われ、そしてクラスの出し物だった英語の曲をアカペラ斉唱したのだった。
そんな楽しい時間が終わると各自バンガローに帰り、消灯までのわずかな自由時間を堪能することになっていた。
とはいえ、おれのいたバンガローは、体育脳の人がロフトを占領しており、バカみたいに騒いでいてゆっくりできる雰囲気ではなかった。まぁ、こういう時だし、下手に水を差すのもよろしくない。
そんなこともあって、おれは健太郎くんと榎本と共に風呂と歯磨きへと向かった。
外は虫の音が心地よく響いていた。暗闇の中、隆起のある道を歩くのは妙にワクワクした。全身にへばりつく汗は不快だったが、この雰囲気の中なら許せるような気がした。
風呂は非常に気持ちよかった。ネバネバした汗を洗い流すと、体内に溜まった乳酸も流れ落ちてくれるような気がした。
風呂を出ると、そのまま歯を磨いてバンガローへと戻った。が、部屋に帰ると何だか変な雰囲気。というのも、
やたらと怒っているヤツがいたのだ。
何だろうと思ったのだけど、その怒っているヤツというのは、何とーー
高橋だったのだ。
高橋のことはもはや説明するまでもないだろうけど、自称『遊☆戯☆王世界一で、極真空手の世界チャンピオンで、数学マエストロ』という肩書きだけなら超一流な男だった。
そんな高橋がやたらと怒っている。極真空手の世界チャンピオンが荒ぶっているなんて、よっぽどのことだと思い、おれは高橋に事情を訊いたのだ。するとーー
携帯ゲーム機とタバコを持ち込んだことをチクられたというのだ。
また、そんなバカなことをとも思ったのだけど、話によるとチクられたのは高橋だけでなく、バカみたいに嗜好品を持ち込んだ体育脳の皆様がみんな餌食になったとのこと。
バカだなぁ、と思いつつ、誰にチクられたのかと訊ねてみた。そしたらーー
つよしだった。
つよしを覚えているだろうか。この駄文集だと確か一度しか登場していないと思うのだろうけど、100メートルの短距離走を全力疾走したら酸欠になって病院に運ばれたあのつよしだ。
この当時のつよしはまだ転校してきたばかりで、物静かで運動は苦手だが、授業はマジメに受けていることもあって、教員からはそれなりに評価されていた。
そんな彼が高橋たちをチクったというのだ。
これは学年中でも話題となり、つよしは生徒の間で悪評が出回ることとなったのだった。
とはいえ、この行動によって、つよしは教員たちから更にマジメな子だと思われるようになったのだ。プラス、つよしがチクり魔だとわかってしまって、下手な行動に出れば自分たちが危うくなると髙橋たちも本能で悟ったらしかった。だがーー
林間学校の後のテストで、つよしが異常なまでに勉強が出来ないと発覚してしまったのだ。
結果、つよしはマジメに見えるようでただ鈍臭いヤツみたいな評価になり、気づけば周りの生徒たちからもネタにされるようになってしまったのでした。
多分、つよしもマジメはマジメなのだろう。彼のマジメのタイプが「目的」か「手段」かはわからない。ただ、やっぱり鈍臭いのだと思う。でも、もしかしたら、今となっては大物になっているかもしれないーー
どうでもいいわな。
マジメ過ぎるのも考えモンだ。
アスタラビスタ。
大体、そういう話が出てくるのは昔悪かったヤツが更正してマジメにやっているといったエピソードが出てくる時だ。
人間はそういった「更正」エピソードが大好物だ。ドラマや映画を見れば、不良が更正して良かった良かったとなるけれど、逆にマジメに頑張った人間は狡猾で悪辣に描かれがちだ。
あぁ、立派だなーーそういう意見が飛ぶのはよくある話だ。そして、その対立意見としてよくいわれるのが、マジメに頑張った人間は褒められないのはどうしてなの?といったモノだ。
これは確かにそうだ。
まぁ、自分で自分のことを「マジメ」と称するヤツは基本的に怠惰なことが殆どなので、そういうヤツラが報われないのは当たり前だろって話ではある。
ただ、問題なのは文句もいわず、ひた向きに頑張っているのに、褒められるどころか、ちょっとしたミスでもやたらと咎められてしまうような人のことだ。
こういった人の場合は、マジメであると同時に小心なところがあって自分の不平不満を人にいえないことが多い。だが、そうなれば、ストレスは溜まり、気づけば精神を病んでいるなんてことも普通にある。うつ病は現代病。
ちなみに、おれはマジメじゃないけど、ストレス溜めてパニックになりました。人によって精神を病むシチュエーションは様々ってことだな。それはさておきーー
マジメが損する世の中というのも残念な話ではあるのだけど、本当にマジメなヤツが損をしているのだろうか、とも思ってしまう。
というのも、その人がどういう意味でマジメであるかが重要だと思うのだ。
これはおれの主観でしかないけど、損するタイプのマジメというのは「マジメであることが目的になっている」のではと思えてならない。
これはいうなれば、「マジメでいなければならない、マジメでなければダメだ」みたいな感じである。要は自分に「マジメ」というスタンスを強いているタイプのことだ。
それではどうにもよろしくない。そうなるとマジメの先には何もなく、いざ損をするとなった時に身動きができずに溺れ死ぬ。そうでなくて、おれがいいたいのはーー
マジメは「目的」ではなくて、ひとつの「手段」でしかないということだ。
人は何かを成し遂げようとすると、不真面目ではどうにもならない。だからこそマジメになるのだ。そう、これが「手段としてのマジメ」ーーいい替えるなら、「戦略的マジメ」だ。
マジメというスタンスを戦略として使うと、マジメの先にまた別の道が出来てくる。自らが不利を被りそうになっても、強迫観念的にマジメであろうとしてない分、その時々でスタンスを柔軟に変えて対応できるし、視野も広く持てる上に思考のスイッチも容易になる。
マジメを自らに課したり、強要するのは日本人の悪いクセだと思う。多分、和を重んじる文化故に、そういうことも起こりやすいのだろう。そうーー
マジメというのは使い方を間違えるとろくなことにはならないのだ。
さて、枕が長くなってしまったけれど、こっからが本題ーー今日はマジメに関する話だ。じゃ、やってくーー
あれは中学二年のことだった。
その当時は林間学校の真っ最中で、カレーにキャンプ・ファイヤーにクラスごとの催しモノだったりとみんなエンジョイしていた。
おれもそのひとりで、焦げた白米に煮込み過ぎたカレーを掛けて美味しく食い、燃え盛る炎にこころを奪われ、そしてクラスの出し物だった英語の曲をアカペラ斉唱したのだった。
そんな楽しい時間が終わると各自バンガローに帰り、消灯までのわずかな自由時間を堪能することになっていた。
とはいえ、おれのいたバンガローは、体育脳の人がロフトを占領しており、バカみたいに騒いでいてゆっくりできる雰囲気ではなかった。まぁ、こういう時だし、下手に水を差すのもよろしくない。
そんなこともあって、おれは健太郎くんと榎本と共に風呂と歯磨きへと向かった。
外は虫の音が心地よく響いていた。暗闇の中、隆起のある道を歩くのは妙にワクワクした。全身にへばりつく汗は不快だったが、この雰囲気の中なら許せるような気がした。
風呂は非常に気持ちよかった。ネバネバした汗を洗い流すと、体内に溜まった乳酸も流れ落ちてくれるような気がした。
風呂を出ると、そのまま歯を磨いてバンガローへと戻った。が、部屋に帰ると何だか変な雰囲気。というのも、
やたらと怒っているヤツがいたのだ。
何だろうと思ったのだけど、その怒っているヤツというのは、何とーー
高橋だったのだ。
高橋のことはもはや説明するまでもないだろうけど、自称『遊☆戯☆王世界一で、極真空手の世界チャンピオンで、数学マエストロ』という肩書きだけなら超一流な男だった。
そんな高橋がやたらと怒っている。極真空手の世界チャンピオンが荒ぶっているなんて、よっぽどのことだと思い、おれは高橋に事情を訊いたのだ。するとーー
携帯ゲーム機とタバコを持ち込んだことをチクられたというのだ。
また、そんなバカなことをとも思ったのだけど、話によるとチクられたのは高橋だけでなく、バカみたいに嗜好品を持ち込んだ体育脳の皆様がみんな餌食になったとのこと。
バカだなぁ、と思いつつ、誰にチクられたのかと訊ねてみた。そしたらーー
つよしだった。
つよしを覚えているだろうか。この駄文集だと確か一度しか登場していないと思うのだろうけど、100メートルの短距離走を全力疾走したら酸欠になって病院に運ばれたあのつよしだ。
この当時のつよしはまだ転校してきたばかりで、物静かで運動は苦手だが、授業はマジメに受けていることもあって、教員からはそれなりに評価されていた。
そんな彼が高橋たちをチクったというのだ。
これは学年中でも話題となり、つよしは生徒の間で悪評が出回ることとなったのだった。
とはいえ、この行動によって、つよしは教員たちから更にマジメな子だと思われるようになったのだ。プラス、つよしがチクり魔だとわかってしまって、下手な行動に出れば自分たちが危うくなると髙橋たちも本能で悟ったらしかった。だがーー
林間学校の後のテストで、つよしが異常なまでに勉強が出来ないと発覚してしまったのだ。
結果、つよしはマジメに見えるようでただ鈍臭いヤツみたいな評価になり、気づけば周りの生徒たちからもネタにされるようになってしまったのでした。
多分、つよしもマジメはマジメなのだろう。彼のマジメのタイプが「目的」か「手段」かはわからない。ただ、やっぱり鈍臭いのだと思う。でも、もしかしたら、今となっては大物になっているかもしれないーー
どうでもいいわな。
マジメ過ぎるのも考えモンだ。
アスタラビスタ。