【一年三組の皇帝~拾弐~】

文字数 1,053文字

 放課後となった。

 さすがに放課後ともなれば『ネイティブ』に時間を割くことはなくなる。そもそも、みんな部活へ行くか帰るかするから、人も集まらないのだ。そして、それ以上に放課後はいつ何処で先生が見回りに来るかわからない。そう考えると、下手にトランプをやっている瞬間を見られるのは決まりが悪い。

 仮にそれでトランプをやっている瞬間が見つかれば、それはそれで問題になり、賭けをやっていることが表沙汰になってしまうのはいうまでもない。そして、学校内におけるトランプの持ち込みは例外なく禁止、これからある修学旅行や宿泊学習においてもトランプは全面禁止となるのが目に見える。

 ゲームのマスターである関口としても、それは本望ではないはず。いくら口が上手く、先生から気に入られているとはいえ、関口も自分の立場が明らかに悪くなるであろうことはやらないのは目に見えていた。

 とまぁ、それはさておき、ぼくは入ったばかりの演劇部の稽古をやっている多目的室にいた。目の前では先輩たちが台本を持ちながら演技をしている。何というか、演技演技した演技だった。というのは、シンプルにわざとらしさを感じさせるモノだったということだ。ぼくはどうもこの手の演技が苦手だった。それに変にウケを狙うような演技も。

 そもそもぼくは半強制的にこの演劇部に入れられたのであって、自分から望んで入ったワケではなかった。そう考えれば考えるほどに、自分が何をやってんだか、と思えてならなかった。

 突然、頭に衝撃が来た。痛ッ、といい隣を見ると、長野いずみが胡散臭いモノを見るようにしてこちらを眺めていた。

「何だよ?」ぼくはいった。

「何だよじゃないだろ。全然気が入ってないし、本当に演劇やりたいのかよ」

 中々に辛辣な指摘だった。その答えはズバリ、別にだった。ぼくが曖昧に答えあぐねていると、いずみはいった。

「何だよ、大して演劇に興味もねえのに何でここ入って来たんだよ。ウザいから辞めろよ」

 何だかそう強気で来られると少々イラッとするモンだ。ぼくも何かいい返してやろうかと思ったけど、何も思いつかなかった。だって、ぼく自身、何もいい返せる材料を持っていなかったのだから。

「そこのふたり」

 岩波先輩がこちらを見ていた。むしろ、ぼくにとっての目当ては岩波先輩だった。今回の件のことを相談するなら副委員長の岩波先輩が一番の適任だろう。それにしても岩波先輩の表情は強張っていた。ぼくは、何ですかと訊ねた。するとーー

「私語するならふたりとも帰っていい」

 これはマズイ。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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