【チンピラは従わない】
文字数 2,901文字
目の上のたんこぶということばがある。
意味は、「邪魔なもの、鬱陶しいもの」ということで、早い話がおれのことだ。
ただ、この目の上のこぶというのが、いい意味で機能しているかどうかで、組織や団体というのは大きく変わってくるんじゃないかと思う。
例を上げるなら、新日本プロレスにおける、かつての蝶野正洋、現在の内藤哲也じゃないかと思う。
またプロレスの話かよという感じなのだけど、ある意味、プロレス程組織がハッキリしている団体もないんじゃないかと思うのだ。
蝶野正洋と内藤哲也というのは、度々比較されることがある。というのも、唐突な悪役転向から、団体設立とひとつのムーブメントを作り出すカリスマ性と共通点はあるのだが、何よりふたりに共通しているのは、
悪役という立場から会社の在り方に苦言を呈していることだ。
nWoやTeam 2000時代の蝶野、ロスインゴの内藤、ふたりともプロレスラーである以前に新日本プロレスという会社に所属するひとりの社員である。それを悪役というポジションを取りながら上手く立ち回り、会社への批判、苦言を度々呈してきたのだ。
多分、自分が蝶野、内藤のファンなのはそういうところが好きなのもあると思う。
変な話、というか完全な余談なのだけど、おれの部屋には今でもTeam 2000時代の蝶野のポスターが貼ってある。
まだ年末のビンタで有名になる前から蝶野正洋のファンだったおれにとって、蝶野正洋はスターであり、カリスマだった。そして、それは今でもそのままだ。
今でも中学時代にVHSで録画した小橋建太とのGHC戦は観返すし、正直、最後に一度だけでいいからプロレスラー蝶野正洋の試合が観たいと思っている。
多分、自分のこういったいいづらいことを平気でいってしまうスタンスの原点のひとつが、プロレスラー蝶野正洋なのだと思う。
まぁ、このままじゃ蝶野正洋というプロレスラーが如何に素晴らしいかという話になってしまうので、さっさと本編にいこうかと思う。
でも、少しでも興味があったら昔の蝶野のプロレスを観てみるといいと思うよ。アティチュードと比べるとかなり地味な試合をする印象だけど、そこがすごくいいんだよね。
というワケであらすじーー
『次のブラストの公演の演出を務めるのが、ブラストの創立メンバーの宗方さんだと聞いて、五条氏は驚いた。五条氏は新たなメンバーたちとともに稽古へと身を投じるのだがーー』
とこんな感じ。ちなみに、今回から稽古の様子はざっくりとしたものにするわ。
というのも、稽古の模様を詳しく書いているとそれだけで長くなるし、『初舞台篇』と比べるとマインド的にもかなり振り切れていて、稽古中の葛藤のようなものが本当になかったんよな。そんな感じで、書いてくーー
稽古が本格的に開始されて数ヶ月、おれは稽古を楽しみつつも、周りに注意を払っていた。
というのも、自分以外の役者がどんな様子でいるかを把握するためだった。
このように心掛けるようになったのは、ブラストにゲスト出演した辺りからだと思う。
理由は、かつてブラスト内で横行していた「自分さえ良ければいい」というベテランメンバーのやり方や思考に対するアンチテーゼだ。
おれが何よりも嫌ったのは、つけられた演出の内容をモノにできないでいる経験の浅いメンバーを笑い者にするという流れだ。
かつてのブラストにはそういう流れが普通に存在した。
それはヨシエさんが演出を務めていた時点でも普通にあった。ヨシエさんが辞めた次の公演では演出がテリーだったこともあってその流れは殆どなかったが、問題はその次の公演だ。
その公演で演出を務めることとなったのが、ゆーきさんだったのだが、ゆーきさんが演出を務めることとなった理由というのが、
「ブラストに入って長いし、キャリアもあるから」
という滅茶苦茶なモノだった。確かにゆーきさんは役者としてはいいかもしれないが、いい役者がいい演出になるとは限らない。この選定はかなり無謀なモノだった。
当然、そういってゆーきさんを選出したのは、老害化した他のベテランメンバーなワケなんだけど、要はソイツらは自分が楽をして自分だけが楽しみたかっただけなのだ。
そして、その負担はその公演で主演を務めることとなったおれにも降り注いだ。
まぁ、酷いもんだった。簡単にいえば、老害ベテランたちは何を勘違いしたか、協力者を罵倒し、セリフも覚えてこない上に、自主稽古もせず、ただただ人の稽古を観ては文句を垂れているだけ。そして、できないヤツのことは嘲笑い、自分ができないとその理由を正当化する。
面倒なんで名前をいえば、正さん、X、尚ちゃんだ。あと、「手伝ってやっている」というスタンスを露にした協力者ーー早い話がタカシさん、みさおさんーーとも関係が険悪になり、優柔不断なスタンスでおろおろしていたゆーきさんとも微妙な関係になったしまった。
おれはこれを繰り返したくはなかったのだ。
だからこそ、ベテランメンバーに対して強く出ることにしたし、相手がどんなに偉くても、年上でも間違っていることは間違っているとハッキリいい放つようになったのだ。
結果ーー宗方さんの演出とぶつかり続けることとなった。
まぁ、宗方さんの演出に関しては役者全員が違和感を抱いており、主演のさとちんを始め、台本を滅茶苦茶に改変された名人も、新規メンバーのヤマムー、タム、ゆなち、おれ同様中堅メンバーのよっしー、果ては宗方さんと付き合いの古いタケシさんまでもが宗方さんの演出に疑問を抱いていた。
その中でも特に強硬な姿勢に出ていたのが、おれとタケシさんというワケだ。
揉めた。そりゃ揉めた。おれも引く気はまったくなく、出捌けの確認等、確認の甘い部分は徹底的に指摘し、確認を促し続けた。
そんな中、どうしても演出からのダメ出しが集中する主演のさとちんのことは徹底的にサポートした。
まぁ、外野から下らない口出しをしようとする老害の意見は全部遮り、納得できる範囲の演出の意見と、同じ舞台に立つ役者との擦り合わせ、演技の提案と実践を行った。
やり方としてはかなりイレギュラーで、邪道ではあったが、このままバカみたいに指示待ち、イエスマンに徹していてはダメだと悟った結果、そうなっただけだ。
おれは、昔のブラスト像を完全に破壊するつもりまんまんだったのだ。
「昔のブラストはよかった」
そんなことをいうOB、OGは叩きのめすつもりだった。そんなことをいうこと自体、そもそも現役メンバーに失礼だしな。わざわざ公演や稽古を観に来てそれをいうバカがいるとするならば、おれは徹底的にやり合うつもりだった。
とはいえ、役者と演出の徹底抗戦をしていたら、気づけば本番が近づいていた。
芝居自体の出来は、個人的には上々だったと思う。少なくとも、おれが主演を務めた舞台なんかより圧倒的によかった。
きっと上手くいくーーおれはそう思った。
今日はここまでやね。いやぁ、飛ばした。一回本編とはまったく関係ない回を交えてあと二、三回で終わるかな。ま、適当にやってくわ。
アスタラビスタ。
意味は、「邪魔なもの、鬱陶しいもの」ということで、早い話がおれのことだ。
ただ、この目の上のこぶというのが、いい意味で機能しているかどうかで、組織や団体というのは大きく変わってくるんじゃないかと思う。
例を上げるなら、新日本プロレスにおける、かつての蝶野正洋、現在の内藤哲也じゃないかと思う。
またプロレスの話かよという感じなのだけど、ある意味、プロレス程組織がハッキリしている団体もないんじゃないかと思うのだ。
蝶野正洋と内藤哲也というのは、度々比較されることがある。というのも、唐突な悪役転向から、団体設立とひとつのムーブメントを作り出すカリスマ性と共通点はあるのだが、何よりふたりに共通しているのは、
悪役という立場から会社の在り方に苦言を呈していることだ。
nWoやTeam 2000時代の蝶野、ロスインゴの内藤、ふたりともプロレスラーである以前に新日本プロレスという会社に所属するひとりの社員である。それを悪役というポジションを取りながら上手く立ち回り、会社への批判、苦言を度々呈してきたのだ。
多分、自分が蝶野、内藤のファンなのはそういうところが好きなのもあると思う。
変な話、というか完全な余談なのだけど、おれの部屋には今でもTeam 2000時代の蝶野のポスターが貼ってある。
まだ年末のビンタで有名になる前から蝶野正洋のファンだったおれにとって、蝶野正洋はスターであり、カリスマだった。そして、それは今でもそのままだ。
今でも中学時代にVHSで録画した小橋建太とのGHC戦は観返すし、正直、最後に一度だけでいいからプロレスラー蝶野正洋の試合が観たいと思っている。
多分、自分のこういったいいづらいことを平気でいってしまうスタンスの原点のひとつが、プロレスラー蝶野正洋なのだと思う。
まぁ、このままじゃ蝶野正洋というプロレスラーが如何に素晴らしいかという話になってしまうので、さっさと本編にいこうかと思う。
でも、少しでも興味があったら昔の蝶野のプロレスを観てみるといいと思うよ。アティチュードと比べるとかなり地味な試合をする印象だけど、そこがすごくいいんだよね。
というワケであらすじーー
『次のブラストの公演の演出を務めるのが、ブラストの創立メンバーの宗方さんだと聞いて、五条氏は驚いた。五条氏は新たなメンバーたちとともに稽古へと身を投じるのだがーー』
とこんな感じ。ちなみに、今回から稽古の様子はざっくりとしたものにするわ。
というのも、稽古の模様を詳しく書いているとそれだけで長くなるし、『初舞台篇』と比べるとマインド的にもかなり振り切れていて、稽古中の葛藤のようなものが本当になかったんよな。そんな感じで、書いてくーー
稽古が本格的に開始されて数ヶ月、おれは稽古を楽しみつつも、周りに注意を払っていた。
というのも、自分以外の役者がどんな様子でいるかを把握するためだった。
このように心掛けるようになったのは、ブラストにゲスト出演した辺りからだと思う。
理由は、かつてブラスト内で横行していた「自分さえ良ければいい」というベテランメンバーのやり方や思考に対するアンチテーゼだ。
おれが何よりも嫌ったのは、つけられた演出の内容をモノにできないでいる経験の浅いメンバーを笑い者にするという流れだ。
かつてのブラストにはそういう流れが普通に存在した。
それはヨシエさんが演出を務めていた時点でも普通にあった。ヨシエさんが辞めた次の公演では演出がテリーだったこともあってその流れは殆どなかったが、問題はその次の公演だ。
その公演で演出を務めることとなったのが、ゆーきさんだったのだが、ゆーきさんが演出を務めることとなった理由というのが、
「ブラストに入って長いし、キャリアもあるから」
という滅茶苦茶なモノだった。確かにゆーきさんは役者としてはいいかもしれないが、いい役者がいい演出になるとは限らない。この選定はかなり無謀なモノだった。
当然、そういってゆーきさんを選出したのは、老害化した他のベテランメンバーなワケなんだけど、要はソイツらは自分が楽をして自分だけが楽しみたかっただけなのだ。
そして、その負担はその公演で主演を務めることとなったおれにも降り注いだ。
まぁ、酷いもんだった。簡単にいえば、老害ベテランたちは何を勘違いしたか、協力者を罵倒し、セリフも覚えてこない上に、自主稽古もせず、ただただ人の稽古を観ては文句を垂れているだけ。そして、できないヤツのことは嘲笑い、自分ができないとその理由を正当化する。
面倒なんで名前をいえば、正さん、X、尚ちゃんだ。あと、「手伝ってやっている」というスタンスを露にした協力者ーー早い話がタカシさん、みさおさんーーとも関係が険悪になり、優柔不断なスタンスでおろおろしていたゆーきさんとも微妙な関係になったしまった。
おれはこれを繰り返したくはなかったのだ。
だからこそ、ベテランメンバーに対して強く出ることにしたし、相手がどんなに偉くても、年上でも間違っていることは間違っているとハッキリいい放つようになったのだ。
結果ーー宗方さんの演出とぶつかり続けることとなった。
まぁ、宗方さんの演出に関しては役者全員が違和感を抱いており、主演のさとちんを始め、台本を滅茶苦茶に改変された名人も、新規メンバーのヤマムー、タム、ゆなち、おれ同様中堅メンバーのよっしー、果ては宗方さんと付き合いの古いタケシさんまでもが宗方さんの演出に疑問を抱いていた。
その中でも特に強硬な姿勢に出ていたのが、おれとタケシさんというワケだ。
揉めた。そりゃ揉めた。おれも引く気はまったくなく、出捌けの確認等、確認の甘い部分は徹底的に指摘し、確認を促し続けた。
そんな中、どうしても演出からのダメ出しが集中する主演のさとちんのことは徹底的にサポートした。
まぁ、外野から下らない口出しをしようとする老害の意見は全部遮り、納得できる範囲の演出の意見と、同じ舞台に立つ役者との擦り合わせ、演技の提案と実践を行った。
やり方としてはかなりイレギュラーで、邪道ではあったが、このままバカみたいに指示待ち、イエスマンに徹していてはダメだと悟った結果、そうなっただけだ。
おれは、昔のブラスト像を完全に破壊するつもりまんまんだったのだ。
「昔のブラストはよかった」
そんなことをいうOB、OGは叩きのめすつもりだった。そんなことをいうこと自体、そもそも現役メンバーに失礼だしな。わざわざ公演や稽古を観に来てそれをいうバカがいるとするならば、おれは徹底的にやり合うつもりだった。
とはいえ、役者と演出の徹底抗戦をしていたら、気づけば本番が近づいていた。
芝居自体の出来は、個人的には上々だったと思う。少なくとも、おれが主演を務めた舞台なんかより圧倒的によかった。
きっと上手くいくーーおれはそう思った。
今日はここまでやね。いやぁ、飛ばした。一回本編とはまったく関係ない回を交えてあと二、三回で終わるかな。ま、適当にやってくわ。
アスタラビスタ。