【沈みゆく島を見詰めて】
文字数 477文字
今、おれは小さなイカダにひとりで乗っている。
イカダの上からおれが見詰めているのは、沈みゆくひとつの島。島には小さな集落があり、そこには十数人の人たちが暮らしている。
だが、島の沈没と共に集落も沈みつつあり、逃げることを知らない住民は島と集落と共に心中の一途を辿っている。
そもそもおれも島の集落の住人だった。だが、脱出した。理由は沈みゆく島をどうするか、 説いた結果、他の住人は「沈むワケがない」と言い張ったからだった。
正直、沈まなければいいと思う。おれの早とちりであればいいと思う。
だが、判断力の鈍った集落の幹部たちと、自分が何とかしなければと必死に動き回るひと握りの人、そして、危機感を抱くことなく沈みゆくことを他人事のように思っている傍観者のような残りの住人たち。状況はもはや致命的で、救いようのないレベルまで来てきた。
だから、おれは島を脱出した。
それだけだ。
でも、やはりあの島が沈まないことを祈るのは、帰巣本能からなのか。ただのノスタルジアか。おれは振り返り島から背を向けた。
目の前には何処までも続く大海原だけが広がるだけだった。
イカダの上からおれが見詰めているのは、沈みゆくひとつの島。島には小さな集落があり、そこには十数人の人たちが暮らしている。
だが、島の沈没と共に集落も沈みつつあり、逃げることを知らない住民は島と集落と共に心中の一途を辿っている。
そもそもおれも島の集落の住人だった。だが、脱出した。理由は沈みゆく島をどうするか、 説いた結果、他の住人は「沈むワケがない」と言い張ったからだった。
正直、沈まなければいいと思う。おれの早とちりであればいいと思う。
だが、判断力の鈍った集落の幹部たちと、自分が何とかしなければと必死に動き回るひと握りの人、そして、危機感を抱くことなく沈みゆくことを他人事のように思っている傍観者のような残りの住人たち。状況はもはや致命的で、救いようのないレベルまで来てきた。
だから、おれは島を脱出した。
それだけだ。
でも、やはりあの島が沈まないことを祈るのは、帰巣本能からなのか。ただのノスタルジアか。おれは振り返り島から背を向けた。
目の前には何処までも続く大海原だけが広がるだけだった。