【孔明は翔ぶことを許さない】

文字数 2,456文字

 人生においてとんでもない人に出会ったことはあるだろうか?

 お前みたいなガイキチには会ったことないよといわれたら、それは仕方ないのだけど、おれがいいたいのは、とんでもない能力値やポテンシャルを持っているヤツのことだ。

 そういう人っていうのは、いつやっているのだろうと思えるほどに努力をしているし、困難なこともサラッとやってのけたりする。

 まぁ、おれの場合それに当てハマるのは、数日前に書いた、自称パーフェクト・ヒューマンの高橋がもこみちの教科書に卑猥な落書きをして小野寺先生に怒られたという話に登場した「麻生」だろう。

 あの時はあまり説明できなかったが、麻生というヤツはとんでもない男だった。

 麻生とは今でも友人として会う仲で、今年の頭、例のアレで外出自粛になる前に一緒に旅行にいくくらいには仲が良かったりする。

 そんな麻生の話で本当に驚いた話といえば、大学卒業後に県庁に勤めていたのだが、「手に職をつけたい」という理由でーー

 国立大の医学部に入学してしまったのだ。

 これには、中学の同期たちに激震が走った。現実にバグが生じたのかと思うレベルだった。

 そもそも「手に職をつける」といって思いつくことといえば、資格を取るとか、技術職の修行をするとかだと思うのだが、麻生の思うそれは、医者になることだったのだ。

 そんな、ちょっとコンビニいってくるみたいな感覚で国立の医学部に入るとか止めてくれよとも思うのだが、一体いつ勉強していたのか、と訊ねると、

「仕事終わってから適当に」

 とのことだった。うん、可笑しい。

 ちなみに彼は日本トップの国立大を出ているのだけど、その時おれに打ち明けた悩みは、趣味がないことだった。

 まぁ、趣味なんて気づいたら出来ているもので、自分から探すものなのかとも思うのだけど、気づいたらーー

 ロードバイクを買って日本一周してた。

 これにも驚きだったのだけど、どうしてそれをしたのか好奇心で訊いてみると、

「いやぁ、やってみたくて」

 とのことだった。ロードバイクを買ってサイクリングにハマるのはいいと思う。でも、いきなりそんな大それたことをされると、自分が単なる雑魚に思えてくるから不思議。まぁ、雑魚なんだけど。

 それからというもの、トライアスロンの大会や自転車レースに出たりしてエンジョイしていたようなのだけど、もはや趣味というレベルを越えてるんじゃないかという感じだった。

 多分、おれのような凡人にないのは、この「入れ込み様」なのだと思う。

 おれのような雑魚は、何かにハマってもそこまで突き詰めて極めることができない。ただ、すごいことを平気で成し遂げてしまう人は、それを普通にする。そこの違いだ。

 とはいえ、麻生は他の雑魚とは違って、特異な性質の持ち主でもあった。性癖がどうとかではなく、シンプルにネジが外れたようなことをやらかしてしまうことが普通にあったのだ。

 というワケで、今日は麻生についてだ。

 あれは、中学一年か、二年の時だったと思う。どちらかは定かではないのだけど、一年か二年かは大した問題ではないので、気にしないでくれ。話を戻そうーー

 その日は朝から卓球部の練習があった。普段は下の階も使えるのだが、その日は女子バスケと男子バレーが一階で朝練をやっており卓球部は二階のバルコニーにて練習をしていたのだ。

 練習は何のトラブルもなく進んだ。強いていうならもこみちがウザかったぐらいだろうか。それはいいとして、練習も難なく終わり、おれはそのまま教室へ帰ったのだ。

 それから時間は過ぎてとある休み時間。おれは次の授業の教科書を忘れたことに気づき、麻生に借りにいこうと、麻生のいるクラスへと向かったのだ。

 本来別のクラスに入ることは禁じられているのだが、そんなことはお構いなしに教室に入り、麻生を探したのだ。がーー

 麻生がいないのだ。

 トイレかなとも思ったのだけど、一応その場にいる適当なヤツに麻生はトイレかと訊ねてみたのだ。そしたらーー

「麻生なら病院に運ばれたよ」

 ……は?

 まったくもって意味がわからなかった。そもそも救急車のサイレンも聴こえなかったし、それらしき騒ぎも何もなかったのだ。

 理由を訊ねるも、詳しいことはわからないとのことだった。そこで後に麻生と一緒に副部長となるグッチョンに話を訊くことにした。

 ちなみにグッチョンも、今でも関係が続いている友人のひとりで、彼が結婚した今も年末になると家に招かれ、グッチョン夫妻とグッチョンの両親と食事するのが恒例になっている。

 グッチョンのことはさておき、おれは隣のクラスまでいってグッチョンに麻生のことを何か知っているか訊ねにーーついでに教科書を借りにーーいったのだ。

 グッチョンに麻生のことを訊ねると、

「アイツ、バカなんだよ」

 といいつつ、

「でも、大丈夫なのかなぁ……」

 と随分と深刻そうにしていた。更に話を訊くと、驚愕の事実が明らかとなった。何とーー

 階段でジャンプした麻生は、天井に頭をぶつけ、更には段差に頭をぶつけたというのだ。

 そう、二階バルコニーから階段で下に降りる途中で、ジャンプして事故ったのだ。

 初めそれを聴いたときは顔面も蒼白する思いだったのだけど、生きて今では医者になろうとしているので敢えていうとーーバカなのか?

 というか、階段でジャンプして天井に頭をぶつけて更に階段の段差に頭をぶつけるとか、ギャグマンガの世界だぞ。まぁ、今現在生きているからいえることなんだけどね。

 これには流石に驚いておれも彼のことが心配だったのだけど、翌日には普通に学校に来てまして、事情を訊いたらーー

「大丈夫なんじゃない?いやぁ、まさかあんなことになるとは思わなかったよ」

 と笑ってました。そんな風にあっけらかんとしてたもんだから、卒業までずっとこの「階段ジャンプ事件」はネタにされることとなったワケだ。凄いヤツはやることも突拍子ない。

 麻生に関してはまだそういった話があるんで、また話すわ。とりあえず、今日はこれで。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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