【ナナフシギ~玖拾漆~】
文字数 566文字
祐太朗は何が起きたのか理解できなかった。
石川先生ーー確かにそこには石川先生がいた。服装はいつも通り。この狂った汚れた世界にいながら、石川先生の服はまったく汚れず擦り切れず、何も変化がなかった。それは石川先生自身の身体も同様だった。
「先生......ッ!」祐太朗はハッとした。「どうして、ここに......ッ!?」
だが、石川先生は厳しい表情のまま祐太朗のほうへ寄って行くと、ある程度の距離を保ってストップした。それから祐太朗のことをじっと見詰めた。祐太朗はことばを失っていたが、すぐにーー
「先生、他のヤツラは!? それに、ここは学校なのか!? おれ、どうしてここに」
「何も、覚えてないんだね」
石川先生は哀れむような声でいった。間違いなく声色は石川先生のモノだった。
「何もって、何をだよ。もしかして、おれはこの中に一度入ったままーー」
と、石川先生は何もいわず、だが祐太朗のことばを否定するために首を横に振った。そして、祐太朗がワケがわからないといった表情を浮かべたところで石川先生は口を開いた。
「いいえ、アナタは間違いなく一度この霊道を抜け出したよ。で、また戻って来た」
霊道ーーそのことばが石川先生の口から飛び出して来るとは祐太朗にとっても予想外だった。驚きを顔に張り付け、いった。
「先生は、いったい......」
【続く】
石川先生ーー確かにそこには石川先生がいた。服装はいつも通り。この狂った汚れた世界にいながら、石川先生の服はまったく汚れず擦り切れず、何も変化がなかった。それは石川先生自身の身体も同様だった。
「先生......ッ!」祐太朗はハッとした。「どうして、ここに......ッ!?」
だが、石川先生は厳しい表情のまま祐太朗のほうへ寄って行くと、ある程度の距離を保ってストップした。それから祐太朗のことをじっと見詰めた。祐太朗はことばを失っていたが、すぐにーー
「先生、他のヤツラは!? それに、ここは学校なのか!? おれ、どうしてここに」
「何も、覚えてないんだね」
石川先生は哀れむような声でいった。間違いなく声色は石川先生のモノだった。
「何もって、何をだよ。もしかして、おれはこの中に一度入ったままーー」
と、石川先生は何もいわず、だが祐太朗のことばを否定するために首を横に振った。そして、祐太朗がワケがわからないといった表情を浮かべたところで石川先生は口を開いた。
「いいえ、アナタは間違いなく一度この霊道を抜け出したよ。で、また戻って来た」
霊道ーーそのことばが石川先生の口から飛び出して来るとは祐太朗にとっても予想外だった。驚きを顔に張り付け、いった。
「先生は、いったい......」
【続く】