【藪医者放浪記~百参~】

文字数 563文字

 時間と運命は何処までも残酷だった。

 土佐から川越まで歩いて戻るのも、早くても七日は掛かる。荷車を使っても早くて五日がいいところだった。だが、荷車を使うのも困難な懐事情ではひたすらに歩くしかなかった。結局、源之助が川越まで歩いて戻るのに必要だった時間は六日から七日目に差し掛からんぐらいだった。

 これでもかなり早いくらいだった。普通の人間の足腰ではもっと掛かったのはいうまでもなかった。だが、それでも遅すぎた。父を殺した狼藉者の姿はとっくの昔に川越から姿を消していた。葬儀を終えると、源之助は手配書を頼りに道行く人たちに下手人の行く先を追った、追ったーー追い続けた。

 だが、そう簡単に見つかるワケがなかった。 

 この時代の人探しはいうまでもなく現代よりも困難を極めていた。そもそも他人を追うための手掛かりも圧倒的に少なく、移動するにも時間が掛かり過ぎる。そもそも国を移動するのには関所を通らねばならず、通るには手形が必要になる。当初は下手人も関所を通行出来ず、簡単に見つかるのでは、と思われていた。だが、それは希望的観測でしかなかった。下手人はそう簡単には見つからなかった。探して探して、道行く人からの話を頼りに探し回ってもなかなか見つからない。

 結果、源之助が復讐を果たすまでには十年の歳月が必要となってしまった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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