【ナナフシギ~玖拾壱~】

文字数 606文字

 ふたつの視線が釘付けになった。

 カギーーあまりにも都合良く現れたカギ。まるで、これを使って体育館を開けてくれとでもいわんばかりだった。

 いや、確かにそこにカギがある。とはいえ、それが体育館を閉ざしているカギを開けるモノとは限らない。まるでそれを確認し合うように、祐太朗と岩淵は視線をカギから互いのモノへと交差させた。

「どういうことだよ?」

 祐太朗がいうと岩淵はニヤリと笑いながら首を傾げて見せた。わたしにもわかりません。わかりませんが、試すならご自由に。そんな声が聴こえて来るかのようだった。

「......時間は?」

 祐太朗が訊ねると岩淵は「さぁ?」と返した。その意味を問うように祐太朗は更に問い返すと、岩淵は自分の腕時計の文字盤を祐太朗のほうへと向けた。腕時計は完全に狂っていた。秒針と長針は反時計回りにグルグル回り、短針は時計回りにゆったりと回っている。もはや、この世界には時間という概念すらなくなっていた。とはいえ、外の時間は無情にも流れている。もはや、迷っている時間など一秒たりともなかった。

 祐太朗はカギを拾い上げると重く閉ざされた体育館の扉まで歩を進めた。

「開きますかね?」

 岩淵のことばに祐太朗は視線を向けたが、何も答えなかった。そのまま再び体育館の扉に向き合うと手に持っているカギを錠前に差し込んだ。手が止まる。大きく息を吐いてから、少しだけ間を開けてカギをひねった。

 錠前が開いた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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