【冷たい墓石で鬼は泣く~玖拾弐~】

文字数 542文字

 燃えたぎる松明の炎を受けて矢じりは妖しく不気味に輝いていた。

 まるで、それひとつで命をすべて吸い取ってしまうかのようだった。尖った矢先は血を求めているようにギラギラしていた。そして、松明の炎を受けて光るのはそれだけではなかった。又蔵の目ーー涙が溜まっているからか、氷の粒のように光っていた。

 又蔵のこめかみを汗がじっとりと落ちていく。その汗はわななく唇の横を蔑むように通り、アゴという崖際にて行き場を失うとそのまま力なく下へと落ちて行った。

「どうした、又蔵?」

 親分の声が蜃気楼のように遠く遠く聴こえる。それはわたしですらそうだった。この賭けが成功するか否か、命が懸かっている。だが、それ以上に声が遠く聴こえたのは又蔵のほうだったかもしれない。死ぬーーそれも仲間だと思っていたヤツに裏切られ、わたしという敵をあぶり出すための道具として使われていたという絶望を胸に抱きながら。

 わたしのこころは揺れていた。いつからこんな危ないことに手を出すようになったのか。早く楽になりたいという気持ちと集中しなければという思いがせめぎ合う。呼吸が掠れる。そのまま息絶えてしまいそうだった。

 来い、いつでも来い。何もしなければどっちにしろ死ぬのは見えている。ならばーー

 又蔵が悲鳴を上げた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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