【一年三組の皇帝~漆拾弐~】

文字数 665文字

 断る理由なんて何処にもなかったのかもしれなかった。

 ぼくと辻、このふたりを一辺に自分の下に付けることが出来るなら、こんなに楽なことはないだろう。辻を押さえてしまえば山路と海野は潰したのも同じになる。ぼくを潰せば事実上、このクラスの男子を制覇したも同じになる。『ネイティブ』をやっていない男子は和田を含めてクラスでもまだ数人だけいた。だが、彼らはもはやクラスでも発言権が殆どないような人たちだった。

 もちろん、女子にはまだ何人か発言権もあり、ゲームにも参加していない人がいたが、彼女らに下手な負担を掛けるワケにはいかないし、彼女らが単体で関口たちのチームプレーに打ち勝てるとも思えなかった。

 つまり、ぼくと辻が関口に歯向かえる最後の存在といって過言ではなかった。

「大丈夫なの?」

 関口がぼくと辻に向かって訊ねて来た。辻は気だるそうな雰囲気で、「何が?」と訊ね返した。関口はうっすらとした笑みを浮かべていったーー

「これで負けたら、終わりだけど」

 終わりだけどーーその具体的な理由は答えなかった。それにぼくというゲストがいようとお構い無しにそれをいうというのは、関口の真意を見たような気がした。それとも、これはぼくではなくて、辻にだけ向けたことばだったのだろうか。いや、関口のことだ。ぼくがどう考えてこのゲームに参加したかも見抜いているのはいうまでもないだろう。

「今吐いたツバ、自分で飲み込むなよ?」

 辻がいうと、関口はニンマリと笑って今度はぼくのほうへと目を向けた。ぼくは表情を変えず何もいわなかった。

 カードが配られた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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