【一年三組の皇帝~漆拾死~】

文字数 650文字

 まるで地獄の扉を開いたようだった。

 いっせーの、の掛け声と共に裏返しのカードを表向きに掲げる。当然、自分が何のカードを持っているかはわからない。

 ゲームの参加者は五人。関口、関口の取り巻きふたり、辻、そしてぼく。関口は8という中途半端なカード。取り巻きふたりはそれぞれ5とJ。辻は10だった。取り巻きの片割れが持つ5を除けばかなり厳しい条件だった。

 関口と取り巻きふたりは完全なグル。ぼくと辻は事実上のパートナー。つまり、2対3の勝負ということになるのだけど、単純に考えても仲間の数が多いほうが強い数を出しやすく、勝つ確率も必然的に上がって来る。だが、何よりも困ったのは、どういうワケか、関口たち三人はそれぞれ自分たちのカードの数字を把握している。それは仲間の分だけでなく、自分自身のも。目配せやちょっとした会話ですら怪しく思えてくる。

 だが、疑い過ぎてはいけないのはわかりきっていた。人間、疑い出したら裏の裏の裏の裏の裏まで考え出して、結局は墓穴を掘ることになるからだ。これはストレートにーー

 辻と目が合った。目を細めてぼくのカードを見たかと思いきや、首を横に振った。それが「交換するな」という意味なのか「そのカードじゃダメだ」という意味なのかはわからなかった。所詮は付け焼き刃、即席のコンビネーションでしかない。だが、怪しまれてはいけない。ぼくはーー

「カード、変えるよ」

 といって、カードをテーブルの真ん中に置こうとした。がーー

「ちょうど待って」と関口。「今、何か合図してなかった?」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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