【ナナフシギ~玖拾伍~】

文字数 514文字

 グロテスクというにはあまりにも異形過ぎたのかもしれなかった。

 祐太朗の表情は引き吊っていた。口はポッカリと開き、唇は震えていた。岩淵のいつもの余裕な表情もこの時ばかりは息を潜め、顔から笑いジワが消えていた。

 それは霊魂という霊魂の集合体、それも顔だけ、上体だけといった様々な亡霊たちが幾多にも蠢き、それらの母体となっているのは目が空洞となったひとつの大きな人間の顔のような影だった。

 辺りに大量の亡霊が飛び交い始めた。まるで行き場を失い彷徨っているようだった。

 祐太朗は完全にことばを失っていた。

「きっと、いなくなった人たちはあの亡霊たちの中に取り込まれたのでしょう」

 岩淵がいうと祐太朗はハッとした。目は見開かれ不自然に首を回して岩淵を見ていった。

「それって......」

 それ以上のことばは出なかった。というより、出したくなかったのかもしれない。不吉なことばは望まなくとも具象化するのがこの世の中の基本だ。岩淵は首を傾げていった。

「どうでしょう。死んだ者もいるかもしれないし、まだ生きている者もいるかもしれない。わたしたちに出来ることは、早くあの化物を除霊することか、死ぬことだけです」

 岩淵は奥歯を噛み締めた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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