【ナナフシギ~伍拾壱~】
文字数 1,043文字
まさにプールが水を打ったように場は静けさに包まれていた。
弓永の顔には緊張感が漂い、引き吊っていた。森永と石川先生はそんな弓永を呆然と眺めていた。
「おいおい、何いってんだよ」森永が弓永をなだめようとした。「やっと石川先生を見つけたんだし、変なこというなよ」
「コイツは本当に石川先生なのか?」
弓永はピシャリといった。森永は弓永のことばの意味を理解しかねたようだった。
「......何いってんだよ、どっからどう見てもーー」
「じゃあ、さっきの鮫島は何だった?」
鮫島の名前で一気に空気が張り詰めた。森永もその名を聞いて、弓永が何をいわんとしているかを察したようだった。だがーー
「......そりゃ、確かにあの時はどうなってんだって思ったよ。でもよ、あの鮫島はどう見ても可笑しかった。でも、この石川先生はさっきの鮫島とはワケが違うだろ」
確かに、更衣室にいた鮫島のニセモノはあからさまに可笑しかった。もはや人間ではないような顔つき、表情に、人間とは思えないようなグロテスクな動き。見た目は鮫島でも、中身は鮫島ではないといっても過言ではないような様子だった。
それに対して目の前にいる石川先生に可笑しな点はないといっても、確かに即座に本物の石川先生だと断言することは危険だ。
「まぁ、な。でも、だ。この人は今おれたちが起こすまでに起きたことを何も覚えてないっていう。そこなんだよ、引っ掛かるのは。確かに酷い目にあって記憶がなくなることはあるかもしれないけど、もしそれが自分の正体を隠すためのウソだとしたら? それに、ここまでに起きたことを覚えていなくても、おれらのフルネームと出席番号くらいは覚えてるはずだろーー本物の石川先生だったら」
「......なるほど」森永は納得したようにそういうと、今度は石川先生にいった。「先生、コイツのいう通りかもしれない。先生ならおれらの名前と出席番号くらいは覚えてるだろ? 頼むよ、答えてくれよ」
石川先生はまだ夢見心地といった様子で不思議そうにふたりを眺めていたが、ふたりが合点し、問い掛けて来たことで漸く自分の陥っている立場を理解したのか、慌てふためきながらいった。
「キミたち、どうしたの一体!? いや、わたしはわたしだよ! わかんないの?」
「頼むから!」弓永は石川先生を制していった。「......答えてくれよ」
弓永は意気消沈したようにいった。森永はそんな弓永の姿が意外だったのか、目を丸くして弓永のことを見ていた。
石川先生は戸惑っていた。
【続く】
弓永の顔には緊張感が漂い、引き吊っていた。森永と石川先生はそんな弓永を呆然と眺めていた。
「おいおい、何いってんだよ」森永が弓永をなだめようとした。「やっと石川先生を見つけたんだし、変なこというなよ」
「コイツは本当に石川先生なのか?」
弓永はピシャリといった。森永は弓永のことばの意味を理解しかねたようだった。
「......何いってんだよ、どっからどう見てもーー」
「じゃあ、さっきの鮫島は何だった?」
鮫島の名前で一気に空気が張り詰めた。森永もその名を聞いて、弓永が何をいわんとしているかを察したようだった。だがーー
「......そりゃ、確かにあの時はどうなってんだって思ったよ。でもよ、あの鮫島はどう見ても可笑しかった。でも、この石川先生はさっきの鮫島とはワケが違うだろ」
確かに、更衣室にいた鮫島のニセモノはあからさまに可笑しかった。もはや人間ではないような顔つき、表情に、人間とは思えないようなグロテスクな動き。見た目は鮫島でも、中身は鮫島ではないといっても過言ではないような様子だった。
それに対して目の前にいる石川先生に可笑しな点はないといっても、確かに即座に本物の石川先生だと断言することは危険だ。
「まぁ、な。でも、だ。この人は今おれたちが起こすまでに起きたことを何も覚えてないっていう。そこなんだよ、引っ掛かるのは。確かに酷い目にあって記憶がなくなることはあるかもしれないけど、もしそれが自分の正体を隠すためのウソだとしたら? それに、ここまでに起きたことを覚えていなくても、おれらのフルネームと出席番号くらいは覚えてるはずだろーー本物の石川先生だったら」
「......なるほど」森永は納得したようにそういうと、今度は石川先生にいった。「先生、コイツのいう通りかもしれない。先生ならおれらの名前と出席番号くらいは覚えてるだろ? 頼むよ、答えてくれよ」
石川先生はまだ夢見心地といった様子で不思議そうにふたりを眺めていたが、ふたりが合点し、問い掛けて来たことで漸く自分の陥っている立場を理解したのか、慌てふためきながらいった。
「キミたち、どうしたの一体!? いや、わたしはわたしだよ! わかんないの?」
「頼むから!」弓永は石川先生を制していった。「......答えてくれよ」
弓永は意気消沈したようにいった。森永はそんな弓永の姿が意外だったのか、目を丸くして弓永のことを見ていた。
石川先生は戸惑っていた。
【続く】