【帝王霊~百捌~】
文字数 568文字
全身が震えた。
スーツケースはまるで棺のように静かだった。イヤな予感が頭を貫いた。
死ーー
吐き気がするほどの不吉な予感。必死に頭から引き離そうとした。急いでスーツケースのもとに駆け寄るも、すぐにそれを開けようという気分にはなれなかった。
助けるためなら早く開けなければならない。だが、開けた結果、直面したくなかった現実が目の前に広がることを考えたら怖くて開けることが出来なくなった。
身体が震える。自分の呼吸も。涙が溢れそうになった。怖い。ハルナ。どうしよう。
自分の弱さ、情けなさが自分を詰った。でも、詰ったからって美しい現実が花を咲かせるワケじゃない。助けて、誰か。
涙が流れた。気づけば涙が流れ落ちて来た。ハルナ、ハルナ。情けない嗚咽が耳に流れた。目を瞑った。ダメだ。このままじゃダメだ。仮に、仮に見たくない現実がそこに広がっていたからといって、ハルナをこんな狭い箱の中に閉じ込めてちゃかわいそうだ。すぐにでも出してあげなきゃ。だから......。
それに、それにこれはぼくの勘違いかもしれない。だとしたら後で警察の人に怒られるだろうけど、だとしてもいい。ぼくが怒られることよりもハルナが無事ならそれでいい。ぼくがどうなろうとハルナが無事でいてくれれば何でもいい。ハルナ、ハルナ......!
スーツケースを開けた。
【続く】
スーツケースはまるで棺のように静かだった。イヤな予感が頭を貫いた。
死ーー
吐き気がするほどの不吉な予感。必死に頭から引き離そうとした。急いでスーツケースのもとに駆け寄るも、すぐにそれを開けようという気分にはなれなかった。
助けるためなら早く開けなければならない。だが、開けた結果、直面したくなかった現実が目の前に広がることを考えたら怖くて開けることが出来なくなった。
身体が震える。自分の呼吸も。涙が溢れそうになった。怖い。ハルナ。どうしよう。
自分の弱さ、情けなさが自分を詰った。でも、詰ったからって美しい現実が花を咲かせるワケじゃない。助けて、誰か。
涙が流れた。気づけば涙が流れ落ちて来た。ハルナ、ハルナ。情けない嗚咽が耳に流れた。目を瞑った。ダメだ。このままじゃダメだ。仮に、仮に見たくない現実がそこに広がっていたからといって、ハルナをこんな狭い箱の中に閉じ込めてちゃかわいそうだ。すぐにでも出してあげなきゃ。だから......。
それに、それにこれはぼくの勘違いかもしれない。だとしたら後で警察の人に怒られるだろうけど、だとしてもいい。ぼくが怒られることよりもハルナが無事ならそれでいい。ぼくがどうなろうとハルナが無事でいてくれれば何でもいい。ハルナ、ハルナ......!
スーツケースを開けた。
【続く】