【あの男、瞬間湯沸し器】
文字数 2,695文字
怒りっぽい人は周りにいるだろうか。
こういう人が周りにいると何かと厄介だと思う。というのも、ひとりの怒りは周りを不安にさせたり、別の怒りを生み出したりと負の連鎖を生みかねないからだ。
基本的に怒りという感情は何の役にも立たない。確かに人間の防衛機制としては必要なのかもしれないけど、総合的に考えて、怒りという感情が役に立つ場面は非常に少ない。
所謂、説教のような行為も「人を諭す」のが目的であって、そこに怒りがあってはならない。何故なら怒りはすべてをブレさせるから。
怒れば目的もブレれば、思考もブレる。下手すれば怒りで、本来すべき諭すという行為もただの私怨に変わりかねないし、そうなれば人からも反感を買い、怨恨を抱かれかねない。
そもそも、人は怒るとそれだけで知能が下がり、魅力も下がるという。マンガや何かでヒーローよりもヒールが人気が出てしまうことが多いのもヒールが基本的に笑っていて、ヒーローが基本的に怒っているからだともいわれている。
やはり、怒りなんて感情は出来ることなら葬り去ってしまったほうが楽には生きられるのだろうーーまぁ、無理だけども。
そうなると如何に怒りをセーブして生きられるかが重要になってくるのはいうまでもない。
何かで怒りを抑えることが出来れば、それだけで人生は楽になる。故に、怒りを抑えるための方法を自分の中で作っておくのが重要だと思うのだ。だが、それが出来ない人はどうなるか。それはーー
結局、暴力によってすべてを委ねることとなってしまうワケだ。
ここでいう暴力とは、物理的なモノだけでなく、精神的なモノも含まれる。要は、暴行や暴言のことをいっているワケだ。
そう、怒りを抑える術を知られなければ、人は他の誰かを傷つけがちになってしまう。
かくいうおれはというと、暴行を働きはせずとも、暴言を吐くことは比較的多い。
まぁ、人になめられるくらいなら、暴言といった形で実力行使をして、相手の中でのグレードをすべてフラットにしてやることも時には必要だとは思うのだ。というか、おれがそれをしがちなんだけど。とはいえ、それをして気分がよくなるかというと、まったくよくならない。
そもそも、おれはどちらかといえば人の悪口をいうのが嫌いで、出来ることならそういうことはいいたくないタイプだったりするーーまぁ、この駄文集、悪口ばっかだけどな。
とはいえ、リアルで陰口をいうのは好きではなく、SNSに愚痴を書くのも実は好きではない。何故なら負の感情は連鎖するから。
だからこそ、余り怒らないよう心掛けているつもりではいるのだけど、人生って難しいよな。生きている限り、怒りからは逃れることが出来ないのが人間のサガだ。
確かに怒りは人間の持つ古来の感情であり、生理現象だとは思う。ただ怒り散らすだけのヤツっていうのは所詮、身体だけデカくなった子供でしかない。まぁ、おれのことなんだけど。
とはいえ、ストリートに出てみると、案外怒っている人は多い。人を恫喝したり、中には暴力を行使するヤツもいないワケではない。
そう、中には暴力に訴えなければ、怒りを鎮めることが出来ない人もいるのだ。
さて、今日はそんな怒りに関する話ーー
あれは小学校低学年のことだった。その日は塾に通う日で、おれは塾でシコシコと問題用紙に鉛筆を走らせていたのだ。
そんな中、唐突に語気の強い、甲高い声が聴こえて来たのだ。
おれは声のしたほうへと目をやった。シンプルに何だろうという好奇心もあったが、何よりもその声に聞き覚えがあったのだ。そして、わかった。やはり、その声はーー
あっちゃんのモノだったのだ。
あっちゃんを覚えているだろうか。あっちゃんはおれの小学校時代からの友人で、小学校に入学して初めて出来た友人であり、その後高校卒業まで同じ学校で学生生活を送った友人だ。
このあっちゃんだが、別に口裏を合わせたワケでもなく、どういうワケか小学校の中学年くらいまでは同じ塾に通っていたのだ。
まぁ、とはいえさっさと勉強を終わらせて帰りたいがためにまともに取り組むおれとは裏腹に、あっちゃんは頬杖をつきながらヨダレを垂らしているような怠け者で、いつも先生にちゃんと勉強するよう怒られていた。
まぁ、以前も何度か書いたと思うけど、このあっちゃん、非常に気が強く怒りっぽいたちだったのだ。そんな性格だから、先生の注意に対しても、
「今からやろうとしてたんだよ!」
とか悪態をついたりしてた。今から勉強しようとしてるヤツが頬杖ついてヨダレ垂らしてるかよって話ではあるのだけど、それはどうでもいい。問題は、彼の声が聴こえたことだ。
そう、あっちゃんが何故か声を荒げていたのだ。おれは何事かとあっちゃんの様子を注視した。すると、すぐに状況を察することが出来てしまった。というのも、あっちゃんはーー
上級生とケンカしていたのだ。
塾でどうして上級生とケンカになるんだよって感じなのは誰もが思うことだと思う。みんな黙々と勉強しているだけだし、揉める要因なんて、普通に考えたらない。
まぁ、ひとりごとがうるさいヤツに関しては確かにイラッと来ることはあったけど、その上級生は比較的普通の生徒で、別にそういったタイプでもなかったのだ。
まぁ、しかしそんな感じで上級生とあっちゃんが口論しているモンだから、先生も止めに入ったのだけど、あっちゃんも上級生もヒートアップするばかりで止まらない。
「もう怒った!」
まるで出来の悪いマンガみたいなセリフをいったのはあっちゃんだった。かと思いきや、あっちゃんは先生の腕を振りほどきーー
突然、鼻水を噴出させたのだ。
そして、次の瞬間、上級生の衣服で鼻水を拭き始めたのだ。
衝撃的な光景だったよな。ケンカするのに相手を殴っちゃうっていうのだったらまだわかる。悪口をいうのもわかる。だが、あっちゃんはそんな低レベルなことではなく、
自分の鼻水を人の服で拭くという暴挙に出たのだ。
服で拭くとはまた如何にーー下らないことをいってしまったのはさておき、あっちゃんに鼻水をつけられた上級生は、
「あ、あぁ……ッ!」
と呆然とした声を漏らして泣き出してしまいました。確かに殴られるより、服に鼻水つけられるほうがショックはデカイかもしれん。
結局、あっちゃんは先生に怒られ、その後は何事もなかったかのように勉強もせずにボケーっとしておりましたとさ。胆が据わってるんだか、ただのバカなんだかわからねぇよな。
アンタらも、頭に来たからって人の服に自分の鼻水を擦り付けたりしないようにーー
するワケねぇか。
アスタラ。
こういう人が周りにいると何かと厄介だと思う。というのも、ひとりの怒りは周りを不安にさせたり、別の怒りを生み出したりと負の連鎖を生みかねないからだ。
基本的に怒りという感情は何の役にも立たない。確かに人間の防衛機制としては必要なのかもしれないけど、総合的に考えて、怒りという感情が役に立つ場面は非常に少ない。
所謂、説教のような行為も「人を諭す」のが目的であって、そこに怒りがあってはならない。何故なら怒りはすべてをブレさせるから。
怒れば目的もブレれば、思考もブレる。下手すれば怒りで、本来すべき諭すという行為もただの私怨に変わりかねないし、そうなれば人からも反感を買い、怨恨を抱かれかねない。
そもそも、人は怒るとそれだけで知能が下がり、魅力も下がるという。マンガや何かでヒーローよりもヒールが人気が出てしまうことが多いのもヒールが基本的に笑っていて、ヒーローが基本的に怒っているからだともいわれている。
やはり、怒りなんて感情は出来ることなら葬り去ってしまったほうが楽には生きられるのだろうーーまぁ、無理だけども。
そうなると如何に怒りをセーブして生きられるかが重要になってくるのはいうまでもない。
何かで怒りを抑えることが出来れば、それだけで人生は楽になる。故に、怒りを抑えるための方法を自分の中で作っておくのが重要だと思うのだ。だが、それが出来ない人はどうなるか。それはーー
結局、暴力によってすべてを委ねることとなってしまうワケだ。
ここでいう暴力とは、物理的なモノだけでなく、精神的なモノも含まれる。要は、暴行や暴言のことをいっているワケだ。
そう、怒りを抑える術を知られなければ、人は他の誰かを傷つけがちになってしまう。
かくいうおれはというと、暴行を働きはせずとも、暴言を吐くことは比較的多い。
まぁ、人になめられるくらいなら、暴言といった形で実力行使をして、相手の中でのグレードをすべてフラットにしてやることも時には必要だとは思うのだ。というか、おれがそれをしがちなんだけど。とはいえ、それをして気分がよくなるかというと、まったくよくならない。
そもそも、おれはどちらかといえば人の悪口をいうのが嫌いで、出来ることならそういうことはいいたくないタイプだったりするーーまぁ、この駄文集、悪口ばっかだけどな。
とはいえ、リアルで陰口をいうのは好きではなく、SNSに愚痴を書くのも実は好きではない。何故なら負の感情は連鎖するから。
だからこそ、余り怒らないよう心掛けているつもりではいるのだけど、人生って難しいよな。生きている限り、怒りからは逃れることが出来ないのが人間のサガだ。
確かに怒りは人間の持つ古来の感情であり、生理現象だとは思う。ただ怒り散らすだけのヤツっていうのは所詮、身体だけデカくなった子供でしかない。まぁ、おれのことなんだけど。
とはいえ、ストリートに出てみると、案外怒っている人は多い。人を恫喝したり、中には暴力を行使するヤツもいないワケではない。
そう、中には暴力に訴えなければ、怒りを鎮めることが出来ない人もいるのだ。
さて、今日はそんな怒りに関する話ーー
あれは小学校低学年のことだった。その日は塾に通う日で、おれは塾でシコシコと問題用紙に鉛筆を走らせていたのだ。
そんな中、唐突に語気の強い、甲高い声が聴こえて来たのだ。
おれは声のしたほうへと目をやった。シンプルに何だろうという好奇心もあったが、何よりもその声に聞き覚えがあったのだ。そして、わかった。やはり、その声はーー
あっちゃんのモノだったのだ。
あっちゃんを覚えているだろうか。あっちゃんはおれの小学校時代からの友人で、小学校に入学して初めて出来た友人であり、その後高校卒業まで同じ学校で学生生活を送った友人だ。
このあっちゃんだが、別に口裏を合わせたワケでもなく、どういうワケか小学校の中学年くらいまでは同じ塾に通っていたのだ。
まぁ、とはいえさっさと勉強を終わらせて帰りたいがためにまともに取り組むおれとは裏腹に、あっちゃんは頬杖をつきながらヨダレを垂らしているような怠け者で、いつも先生にちゃんと勉強するよう怒られていた。
まぁ、以前も何度か書いたと思うけど、このあっちゃん、非常に気が強く怒りっぽいたちだったのだ。そんな性格だから、先生の注意に対しても、
「今からやろうとしてたんだよ!」
とか悪態をついたりしてた。今から勉強しようとしてるヤツが頬杖ついてヨダレ垂らしてるかよって話ではあるのだけど、それはどうでもいい。問題は、彼の声が聴こえたことだ。
そう、あっちゃんが何故か声を荒げていたのだ。おれは何事かとあっちゃんの様子を注視した。すると、すぐに状況を察することが出来てしまった。というのも、あっちゃんはーー
上級生とケンカしていたのだ。
塾でどうして上級生とケンカになるんだよって感じなのは誰もが思うことだと思う。みんな黙々と勉強しているだけだし、揉める要因なんて、普通に考えたらない。
まぁ、ひとりごとがうるさいヤツに関しては確かにイラッと来ることはあったけど、その上級生は比較的普通の生徒で、別にそういったタイプでもなかったのだ。
まぁ、しかしそんな感じで上級生とあっちゃんが口論しているモンだから、先生も止めに入ったのだけど、あっちゃんも上級生もヒートアップするばかりで止まらない。
「もう怒った!」
まるで出来の悪いマンガみたいなセリフをいったのはあっちゃんだった。かと思いきや、あっちゃんは先生の腕を振りほどきーー
突然、鼻水を噴出させたのだ。
そして、次の瞬間、上級生の衣服で鼻水を拭き始めたのだ。
衝撃的な光景だったよな。ケンカするのに相手を殴っちゃうっていうのだったらまだわかる。悪口をいうのもわかる。だが、あっちゃんはそんな低レベルなことではなく、
自分の鼻水を人の服で拭くという暴挙に出たのだ。
服で拭くとはまた如何にーー下らないことをいってしまったのはさておき、あっちゃんに鼻水をつけられた上級生は、
「あ、あぁ……ッ!」
と呆然とした声を漏らして泣き出してしまいました。確かに殴られるより、服に鼻水つけられるほうがショックはデカイかもしれん。
結局、あっちゃんは先生に怒られ、その後は何事もなかったかのように勉強もせずにボケーっとしておりましたとさ。胆が据わってるんだか、ただのバカなんだかわからねぇよな。
アンタらも、頭に来たからって人の服に自分の鼻水を擦り付けたりしないようにーー
するワケねぇか。
アスタラ。