【一年三組の皇帝~参~】
文字数 1,191文字
軟禁や監禁というのは犯罪なのだと聞いたことがある。
難しいことはよくわからないけれど、確かに相手に対して何の了承も得ずにそういったことをするというのは、その人の人権を無視することにもなるし、いいことでないのはぼくでもよくわかる。わかるのだがーー
今ぼくは一種の軟禁の状態にあって、そんなことを考えている場合ではない。
そもそも軟禁される側の人間がする側の人間に「人権侵害だッ!」と訴えたところで、だからどうしたという話にしかならないのはいうまでもない。そんなことでビビって解放してくれるなら、そういった状況にはまずならないだろうから。
そもそも学校といった場所はある意味でいえば、基本的人権なんてモノはあってないようなモノだ。そもそも、先生の中には平気で生徒の権利を侵害する人もいるしね。ここはまるでジャングルだ。
さて、悠長にそんなことを語っている場合ではないのだ。
ぼくはイジメを目撃した教室に今軟禁されている。教室へ無理矢理連行されたぼくの目の前にはたくさんの女子の集団。といっても、派手目な女子はひとりを除いていない。そこにいた女子たちはーーあまりこういうことばは使いたくないけれどーー何処か地味で野暮ったい印象だった。だが、その全員が妙に個性的というか変な自信に満ち満ちている気がした。
それはさておいて、地味目な女子たちの中でひとりだけやたらと目を引く女子がいた。それこそが、ぼくをこのような状況に追いやった派手目な女子ーーいずみと呼ばれた女子だった。いずみはぼくのことを、まるでストリートに出没した変態を眺めるように見ていた。
そして、裁判は始まった。何をしていたのか、何で覗いていたのか、そもそも誰なのか。あれやこれや矢次はやに質問が飛んでくる。しかもそれはまるで石を投げつけるように暴力的に飛んでくる。そして、それはぼくの弁解を許すことなく、ただ一方的に罵倒したいだけのように思えてならない。
これでは収拾がつかない。ぼくはそんな状況にウンザリし始めていた。
「何だよ、その態度」
いずみがいった。いずみのひとことで、まるで嵐が去るように周りの女子たちの罵倒が和らいだ。ぼくはそれにかこつけるようにして口を開いた。
「何だっていいたいのはこっちだよ。そもそもひとりを何人で囲んで罵倒するのが目に入ったら思わず見ちゃうのは当たり前だろ」
「何人もで罵倒?」いずみがいうと、周りの女子たちが顔を見合わせた。
「そうだよ」ぼくはそもそもの疑問を口にした。「大体、何でさっきまで罵倒されてたのに、今になってソイツらと一緒になってぼくのことを悪くいうんだよ」
そう、ぼくが見つかるまで罵倒されていた女子が今になって罵倒していた女子と一緒になってぼくを罵倒してくるのだ。これは頂けなかった。
突然、教室のドアが開いた。
そこにはメガネを掛けたボサボサ髪の女子が立っていた。
【続く】
難しいことはよくわからないけれど、確かに相手に対して何の了承も得ずにそういったことをするというのは、その人の人権を無視することにもなるし、いいことでないのはぼくでもよくわかる。わかるのだがーー
今ぼくは一種の軟禁の状態にあって、そんなことを考えている場合ではない。
そもそも軟禁される側の人間がする側の人間に「人権侵害だッ!」と訴えたところで、だからどうしたという話にしかならないのはいうまでもない。そんなことでビビって解放してくれるなら、そういった状況にはまずならないだろうから。
そもそも学校といった場所はある意味でいえば、基本的人権なんてモノはあってないようなモノだ。そもそも、先生の中には平気で生徒の権利を侵害する人もいるしね。ここはまるでジャングルだ。
さて、悠長にそんなことを語っている場合ではないのだ。
ぼくはイジメを目撃した教室に今軟禁されている。教室へ無理矢理連行されたぼくの目の前にはたくさんの女子の集団。といっても、派手目な女子はひとりを除いていない。そこにいた女子たちはーーあまりこういうことばは使いたくないけれどーー何処か地味で野暮ったい印象だった。だが、その全員が妙に個性的というか変な自信に満ち満ちている気がした。
それはさておいて、地味目な女子たちの中でひとりだけやたらと目を引く女子がいた。それこそが、ぼくをこのような状況に追いやった派手目な女子ーーいずみと呼ばれた女子だった。いずみはぼくのことを、まるでストリートに出没した変態を眺めるように見ていた。
そして、裁判は始まった。何をしていたのか、何で覗いていたのか、そもそも誰なのか。あれやこれや矢次はやに質問が飛んでくる。しかもそれはまるで石を投げつけるように暴力的に飛んでくる。そして、それはぼくの弁解を許すことなく、ただ一方的に罵倒したいだけのように思えてならない。
これでは収拾がつかない。ぼくはそんな状況にウンザリし始めていた。
「何だよ、その態度」
いずみがいった。いずみのひとことで、まるで嵐が去るように周りの女子たちの罵倒が和らいだ。ぼくはそれにかこつけるようにして口を開いた。
「何だっていいたいのはこっちだよ。そもそもひとりを何人で囲んで罵倒するのが目に入ったら思わず見ちゃうのは当たり前だろ」
「何人もで罵倒?」いずみがいうと、周りの女子たちが顔を見合わせた。
「そうだよ」ぼくはそもそもの疑問を口にした。「大体、何でさっきまで罵倒されてたのに、今になってソイツらと一緒になってぼくのことを悪くいうんだよ」
そう、ぼくが見つかるまで罵倒されていた女子が今になって罵倒していた女子と一緒になってぼくを罵倒してくるのだ。これは頂けなかった。
突然、教室のドアが開いた。
そこにはメガネを掛けたボサボサ髪の女子が立っていた。
【続く】