【一年三組の皇帝~拾漆~】

文字数 1,154文字

 カードを自分の前で掲げた。

 当然、そのカードが何なのかはわからない。だが、辻のカードが何なのかはわかる。

 8。微妙なカード。強くもなければ弱くもない、一番悩ましい数。確かに中間からしてみればやや強い部類には入るが、自分が8なら引き分け、9以上なら余裕で勝利。負けるとしても3から7の場合。

 本来のインディアンポーカーは1が最弱ではあるが、この『ネイティブ』では所謂『大富豪』形式に則っていて、最強は2でその次が1、最弱となるのが3となっている。また、プレイヤー間に2を持っている者がいる時に限り、スペードの3が最強になるという変則的なルールもあって、地味にややこしい。

 8、8という数字がぼくの頭の中で回る。普通に考えたら勝てる可能性のほうが高いだろう。ただ、もし仮にそれより下の数字を持っていたとしたら。不安ばかりが募った。

「どうする? チェンジするか?」余裕そうな笑みを浮かべながら辻はいった。

 その余裕はまるで演技のようにも見えたし、本当にそのようにも見えた。ぼくは今、出口だけが見えているが、足許は見えていないような状況にあった。

 どうする、変えるか?

「じゃあ、変える」

 ぼくは宣言した。それが命取りになるか、ファインプレーになるかもわからずに。ぼくは目の前に掲げたカードの表を見た。

 10。チェンジしなければ勝っていた。

 クソッーー思わず悪態をついてしまう。辻が不敵に笑った。まるでぼくの悔しい様を見て喜んでいるようだった。

「なるほどな、おれは10以下のカードってことか」

 ハッとした。そうだ。ぼくのこの態度は相手に対するヒントにもなってしまう。本来ならば五人やそれ以上でプレイするインディアンポーカーだが、『ネイティブ』はサシや少人数による勝負も普通にする。つまり、プレイヤーの数が少なくなればなるほど自分の態度が相手のヒントに変わってしまうということ。そして、それを逆手に取るも然りだった。

「ほら、カードを取れよ」

 辻に促され、ぼくは山からカードを取った。カードをチェンジ出来るのは二回までとなっている。つまり、それは勝てる可能性を薄くすることと同じでもある。

「......なるほどな」辻はいった。「おれも変えるわ」

 変える。そう宣言したということは、今度もぼくの勝ちだったか。辻は手に持っていた8を見て「なるほどな」と呟き、山からカードを取って前に掲げた。

 6。辻のチェンジしたカードは6だった。これまでの辻の態度から判断するに、ぼくは勝っている可能性が高いだろう。

 だが、辻は何か気に食わないようにして、またカードを交換した。次に来たのは7だった。もう辻はカードのチェンジが出来ない。さて、チェックの時間だ。

 ぼくと辻は互いにチェックとコールし、カードをテーブルの表面に置いた。

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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