【ホームランボールは飛んでかない】
文字数 2,997文字
正直、毎日妄想話を書くのはどうかと思うのだ。
妄想話というのはいうまでもなく、『妄想間違い電話篇』のことなのだけど、変な話、架空のシナリオを一日一本書くのはどうかと思う。
というのも、シナリオの全体をろくに構築していない状態で毎日、しかも推敲も殆どせずにシナリオの断片をリリースすると、どうしてもクオリティに限界がーーあ、時間掛けて推敲してもクオリティは同じ?それでいいや。
というワケで今日は『妄想間違い電話篇』は休みな。
なら今日は雑談かと思われるかもしれないが、雑談もしない。じゃあ、どうするか。答えは通常営業だ。たまには駄文的エッセイを書かないと精神の均衡が保てないからなーーそれはそれで人間的に問題ありなんだけどさ。
というワケで、今日はいつも通り昔のトチ狂った日常の話をしていこうかと思う。まさか、あの『間違い電話篇』が待ち遠しくて仕方ないなんてヤツはいないだろうしな。
そんなワケで話していこう。
あれは中学三年の時のことだ。シーズン的にはちょうどこの時期のことだったと思う。
その頃のおれといえば、体育祭の応援団長を退き、日々、受験勉強に勤しんでいた。
とはいえ、勉強ばかりでストレスが溜まるのはいうまでもなく、そんなガス抜きのためにも休み時間になれば友人と談笑し、学校を終えて塾にいけば、空いた時間にまた友人と談笑し、という生活を送っていた。
改めて考えると、受験勉強ってキツイよな。まさか、これを読んでいるヤツに受験生なんていないだろうけど、もしいるんだったら、こんなもん読んでないで勉強しな。頑張るんだぜ。
まぁ、たまにやたらとナーバスになって、「落ちる」とか「滑る」とかってワードにやたらと敏感になるヤツがいるけど、安心してくれ。そういうヤツはそんなワードをいわなくても勝手に失敗するから。
理由?ーーその程度のことで過剰に反応するヤツが、大舞台に立って成功するワケがねえからな。それにその程度のワードで頭抱えるようなヤツって勉強してる自分に何処かで酔ってんだよ。酔っ払いに正常な思考はできないんよ。
と、そんなことはさておき、だ。
その日の塾の授業の時間にて、先生が神妙な表情を浮かべながら教室に入ってきたのだ。
この先生だが、確かに勉強に関しては厳しいのだが、普段の生活においては冗談をいうのが好きな人物で、授業前に神妙な顔を浮かべて教室に入ってくることはそうそうなかった。
それこそ、殆どのヤツの成績が崩壊していたり、何か不吉なことが起きでもしない限りはそんな顔をすることはなかったのだ。
おれは固唾を飲み、先生が口を開くのを待った。が、予想に反して先生は「じゃあ、始めていこう」と口にしたのだった。
これには拍子抜けで、おれも困惑したと同時に、胸を撫で下ろした。が、先生は、
「しかし、アイツもバカだなぁ」
一部の人が先生に同意するように相槌を打つ。が、おれにはその意味がわからず、
「何かあったんですか?」
と先生に訊ねたのだ。すると先生は、
「あれ、何も聴いてないの?」
と不思議そうな顔をした。おれは特に何も聴いていないといった。すると、先生はーー
「いやぁ、麻生が病院に運ばれたんだよ」
絶句した。
麻生といえば、おれが人生で出会った中でもよくも悪くも頭脳がバグっているヤツで、国内最高の国立大を卒業後、県庁の職員となったのだが、その職務に飽きて「手に職をつけたいから」という理由で国立大の医学部に編入してしまうといったようなとんでもなく優秀なことを平気な顔をしてやってのけてしまう男だった。
とはいえ、同時にどこか抜けているところもあって、『妄想間違い電話篇』が始まる前に書いたとある話では、階段にてジャンプをしたら、天井に頭をぶつけ、しかも段差にも頭をぶつけて緊急搬送されるというイカれたことをやらかしてしまったこともあった。
そう。そんな麻生が、またもや病院に搬送されたというのだ。しかし、何故ーー
その答えはすぐに明らかになった。何でも、
体育の時間に行っていたソフトボールにてバットが頭にヒットしてしまったというのだ。
血の気が引いた。よくフィクションにおいてバットで頭を殴るという描写が普通にあるが、当たり前な話、バットで頭を殴られれば、最悪の場合脳挫傷によって死亡する。
仮に死亡しないにしても、脳震盪を起こすか、何かしらの後遺症が残ることも考えられる。そう考えると、バットで頭を打つなど、とてもじゃないが笑えない話だった。
そうでなくとも体育の授業にて事故が起こることは少なくない。ソフトボールともなれば、ボールが顔面にぶつかって眼底骨折なんてこともあるだろうし、人が振ったバットが頭に当たることも有り得ない話ではない。
おれは麻生を気の毒に思った。
しかし、ここで引っ掛かることがひとつ。
それは先生のいったひとことだ。
先生は何故、麻生のことを「バカだなぁ」といったのか。
その先生は生徒たちの身に何かあれば、それこそ真摯にその事実と向き合おうとする人だった。そんな先生が、人の受難においてそんなコメントを残すとは思えなかったのだ。
おれは「どうしてそんなことに?」と訊ねた。すると、驚愕の事実が明らかになった。
何と麻生の頭をバットで殴ったのは、麻生自身だというのだ。
これにはおれも「?」となり、心配することも忘れて口をぽっかり開けながらそうなるに至ったシチュエーションを思い浮かべたのだが、
んなもん、わかるワケがなかった。
何をどう間違えたらそんなことになるのか。まったくわからない。おれは唖然とし、
「どういうことですか?」
と訊ねた。すると、先生はとんでもない事実を口にした。何とーー
麻生はバットを素振りして、その結果自分の頭を殴ってしまったというのだ。
うん、バカである。
それから更なる情報が、一緒に体育に参加していた生徒たちから話されたのだけど、何でも、麻生はシンプルにやる気がなくて適当にバットを素振りしたところ自分の頭をホームランしてしまったというのだ。
うーん、ワケがわからない。
仮にやる気がなくて、適当にバットを振っても、自分の頭なんか打たんだろうに。
まぁ、その話は取り敢えずそこで切り上げられたのだけど、翌日、頭に包帯を巻き、ネットを被った麻生が登校してきたんで、怪我について訊いてみたのだ。
というのも、もしかしたら、自分の振ったバットが当たったというのは誤報で、本当は誰かのスイングが当たったのかもしれない。それに、頭を打った後ということで、心配だったのはいうまでもなかった。しかしーー
残念ながら、事実だった。
麻生は適当にバットを振って自分の頭をホームランしたのだ。もうワケがわからんよ。
ちなみに、麻生は頭を打ったとはいえ正常ーーいや、異常でした。というのも、
「医療費が嵩んで受験に影響出たらやだなぁ」
とかいい出したのだ。いや、問題はそこじゃない。
結局、その後も麻生にはこれといった問題もなく、後に国内トップクラスの公立高校へと進学し、授業をサボってマクドナルドにいたところ、別の教員に見つかってマクドナルドで土下座して謝ることとなったのでした。
高校時代も何かとやらかしていたのはナチュラルなのか、それとも怪我の後遺症か。
ナチュラルだな。
秀才の仕出かすことはわからんね。
アスタラビスタ。
妄想話というのはいうまでもなく、『妄想間違い電話篇』のことなのだけど、変な話、架空のシナリオを一日一本書くのはどうかと思う。
というのも、シナリオの全体をろくに構築していない状態で毎日、しかも推敲も殆どせずにシナリオの断片をリリースすると、どうしてもクオリティに限界がーーあ、時間掛けて推敲してもクオリティは同じ?それでいいや。
というワケで今日は『妄想間違い電話篇』は休みな。
なら今日は雑談かと思われるかもしれないが、雑談もしない。じゃあ、どうするか。答えは通常営業だ。たまには駄文的エッセイを書かないと精神の均衡が保てないからなーーそれはそれで人間的に問題ありなんだけどさ。
というワケで、今日はいつも通り昔のトチ狂った日常の話をしていこうかと思う。まさか、あの『間違い電話篇』が待ち遠しくて仕方ないなんてヤツはいないだろうしな。
そんなワケで話していこう。
あれは中学三年の時のことだ。シーズン的にはちょうどこの時期のことだったと思う。
その頃のおれといえば、体育祭の応援団長を退き、日々、受験勉強に勤しんでいた。
とはいえ、勉強ばかりでストレスが溜まるのはいうまでもなく、そんなガス抜きのためにも休み時間になれば友人と談笑し、学校を終えて塾にいけば、空いた時間にまた友人と談笑し、という生活を送っていた。
改めて考えると、受験勉強ってキツイよな。まさか、これを読んでいるヤツに受験生なんていないだろうけど、もしいるんだったら、こんなもん読んでないで勉強しな。頑張るんだぜ。
まぁ、たまにやたらとナーバスになって、「落ちる」とか「滑る」とかってワードにやたらと敏感になるヤツがいるけど、安心してくれ。そういうヤツはそんなワードをいわなくても勝手に失敗するから。
理由?ーーその程度のことで過剰に反応するヤツが、大舞台に立って成功するワケがねえからな。それにその程度のワードで頭抱えるようなヤツって勉強してる自分に何処かで酔ってんだよ。酔っ払いに正常な思考はできないんよ。
と、そんなことはさておき、だ。
その日の塾の授業の時間にて、先生が神妙な表情を浮かべながら教室に入ってきたのだ。
この先生だが、確かに勉強に関しては厳しいのだが、普段の生活においては冗談をいうのが好きな人物で、授業前に神妙な顔を浮かべて教室に入ってくることはそうそうなかった。
それこそ、殆どのヤツの成績が崩壊していたり、何か不吉なことが起きでもしない限りはそんな顔をすることはなかったのだ。
おれは固唾を飲み、先生が口を開くのを待った。が、予想に反して先生は「じゃあ、始めていこう」と口にしたのだった。
これには拍子抜けで、おれも困惑したと同時に、胸を撫で下ろした。が、先生は、
「しかし、アイツもバカだなぁ」
一部の人が先生に同意するように相槌を打つ。が、おれにはその意味がわからず、
「何かあったんですか?」
と先生に訊ねたのだ。すると先生は、
「あれ、何も聴いてないの?」
と不思議そうな顔をした。おれは特に何も聴いていないといった。すると、先生はーー
「いやぁ、麻生が病院に運ばれたんだよ」
絶句した。
麻生といえば、おれが人生で出会った中でもよくも悪くも頭脳がバグっているヤツで、国内最高の国立大を卒業後、県庁の職員となったのだが、その職務に飽きて「手に職をつけたいから」という理由で国立大の医学部に編入してしまうといったようなとんでもなく優秀なことを平気な顔をしてやってのけてしまう男だった。
とはいえ、同時にどこか抜けているところもあって、『妄想間違い電話篇』が始まる前に書いたとある話では、階段にてジャンプをしたら、天井に頭をぶつけ、しかも段差にも頭をぶつけて緊急搬送されるというイカれたことをやらかしてしまったこともあった。
そう。そんな麻生が、またもや病院に搬送されたというのだ。しかし、何故ーー
その答えはすぐに明らかになった。何でも、
体育の時間に行っていたソフトボールにてバットが頭にヒットしてしまったというのだ。
血の気が引いた。よくフィクションにおいてバットで頭を殴るという描写が普通にあるが、当たり前な話、バットで頭を殴られれば、最悪の場合脳挫傷によって死亡する。
仮に死亡しないにしても、脳震盪を起こすか、何かしらの後遺症が残ることも考えられる。そう考えると、バットで頭を打つなど、とてもじゃないが笑えない話だった。
そうでなくとも体育の授業にて事故が起こることは少なくない。ソフトボールともなれば、ボールが顔面にぶつかって眼底骨折なんてこともあるだろうし、人が振ったバットが頭に当たることも有り得ない話ではない。
おれは麻生を気の毒に思った。
しかし、ここで引っ掛かることがひとつ。
それは先生のいったひとことだ。
先生は何故、麻生のことを「バカだなぁ」といったのか。
その先生は生徒たちの身に何かあれば、それこそ真摯にその事実と向き合おうとする人だった。そんな先生が、人の受難においてそんなコメントを残すとは思えなかったのだ。
おれは「どうしてそんなことに?」と訊ねた。すると、驚愕の事実が明らかになった。
何と麻生の頭をバットで殴ったのは、麻生自身だというのだ。
これにはおれも「?」となり、心配することも忘れて口をぽっかり開けながらそうなるに至ったシチュエーションを思い浮かべたのだが、
んなもん、わかるワケがなかった。
何をどう間違えたらそんなことになるのか。まったくわからない。おれは唖然とし、
「どういうことですか?」
と訊ねた。すると、先生はとんでもない事実を口にした。何とーー
麻生はバットを素振りして、その結果自分の頭を殴ってしまったというのだ。
うん、バカである。
それから更なる情報が、一緒に体育に参加していた生徒たちから話されたのだけど、何でも、麻生はシンプルにやる気がなくて適当にバットを素振りしたところ自分の頭をホームランしてしまったというのだ。
うーん、ワケがわからない。
仮にやる気がなくて、適当にバットを振っても、自分の頭なんか打たんだろうに。
まぁ、その話は取り敢えずそこで切り上げられたのだけど、翌日、頭に包帯を巻き、ネットを被った麻生が登校してきたんで、怪我について訊いてみたのだ。
というのも、もしかしたら、自分の振ったバットが当たったというのは誤報で、本当は誰かのスイングが当たったのかもしれない。それに、頭を打った後ということで、心配だったのはいうまでもなかった。しかしーー
残念ながら、事実だった。
麻生は適当にバットを振って自分の頭をホームランしたのだ。もうワケがわからんよ。
ちなみに、麻生は頭を打ったとはいえ正常ーーいや、異常でした。というのも、
「医療費が嵩んで受験に影響出たらやだなぁ」
とかいい出したのだ。いや、問題はそこじゃない。
結局、その後も麻生にはこれといった問題もなく、後に国内トップクラスの公立高校へと進学し、授業をサボってマクドナルドにいたところ、別の教員に見つかってマクドナルドで土下座して謝ることとなったのでした。
高校時代も何かとやらかしていたのはナチュラルなのか、それとも怪我の後遺症か。
ナチュラルだな。
秀才の仕出かすことはわからんね。
アスタラビスタ。