【帝王霊~百拾参~】
文字数 674文字
背面観察ーー意味はわからないが不吉な響きがするのは、あたしにもわかった。
これまで散々この佐野めぐみという女には振り回されて来たけれど、そんなよくわからないけど不吉な肩書きで呼ばれているのを聞くと、改めてこの女はロクデもない存在なんじゃないかと思えて来た。
佐野はいつもの薄ら笑いを引っ込めていて、珍しく神妙な表情をしていた。逆に弓永くんが薄ら笑いをし、その表情からは不気味な殺意のようなモノを感じた。そして、お兄さんはーー死んだような虚ろな目で佐野のことを見つめていた。
かと思いきや、お兄さんはもはや人形のようになった詩織をゆっくりと地面に寝かせると一気に立ち上がり佐野のほうへ歩くとそのままの勢いで佐野の顔面を蹴り飛ばした。勢い良く倒れた佐野。お兄さんはそのまま佐野を何度も踏みつけ、蹴りつけた。
「ちょっと、止めて!」
思わず止めに入ってしまった。あたしにとっても佐野という女は気に食わない存在だっていうのに、ただ無抵抗に暴力を奮われる姿には耐えられなかった。弓永くんは止める気がまったくなかったようだった。
あたしが半ば強引にお兄さんを止めると、お兄さんは修羅のような目付きであたしを見た。お兄さんの呼吸が荒くなっていた。相当興奮しているらしかった。あたしのほうにまで拳が飛んで来るんじゃないかと少し覚悟はしていたけど、それはなかった。
「......こんなことしても、何の解決にもならないよ」あたしはいった。「教えて、その背面観察ってヤツ。それと、この女がどうそれに関わってるかを」
お兄さんの目はジャンキーのようにトんでいた。
【続く】
これまで散々この佐野めぐみという女には振り回されて来たけれど、そんなよくわからないけど不吉な肩書きで呼ばれているのを聞くと、改めてこの女はロクデもない存在なんじゃないかと思えて来た。
佐野はいつもの薄ら笑いを引っ込めていて、珍しく神妙な表情をしていた。逆に弓永くんが薄ら笑いをし、その表情からは不気味な殺意のようなモノを感じた。そして、お兄さんはーー死んだような虚ろな目で佐野のことを見つめていた。
かと思いきや、お兄さんはもはや人形のようになった詩織をゆっくりと地面に寝かせると一気に立ち上がり佐野のほうへ歩くとそのままの勢いで佐野の顔面を蹴り飛ばした。勢い良く倒れた佐野。お兄さんはそのまま佐野を何度も踏みつけ、蹴りつけた。
「ちょっと、止めて!」
思わず止めに入ってしまった。あたしにとっても佐野という女は気に食わない存在だっていうのに、ただ無抵抗に暴力を奮われる姿には耐えられなかった。弓永くんは止める気がまったくなかったようだった。
あたしが半ば強引にお兄さんを止めると、お兄さんは修羅のような目付きであたしを見た。お兄さんの呼吸が荒くなっていた。相当興奮しているらしかった。あたしのほうにまで拳が飛んで来るんじゃないかと少し覚悟はしていたけど、それはなかった。
「......こんなことしても、何の解決にもならないよ」あたしはいった。「教えて、その背面観察ってヤツ。それと、この女がどうそれに関わってるかを」
お兄さんの目はジャンキーのようにトんでいた。
【続く】