【冷たい墓石で鬼は泣く~捌拾弐~】
文字数 652文字
結論からいえば、翌日も翌々日も、その次の日も『野武士』は現れなかった。
わたしはムスッとした表情を浮かべながらも内心ではホッとしていた。あのオオカミたちに自分のことばが通じたようで何よりだった。確かに彼らは村の食物をあさって盗んで行く盗人には変わりないが、腹を空かして苦しんでいるオオカミに対して不思議と非情にはなれなかった自分がいた。
今の自分がそもそも困窮して拾われた身であるのだが、それ故に彼らの苦しみに共感してしまったのだろうか。
村のモノを盗んで行くというのは、人間の食いモノの味を覚えてしまったからというのもあるだろうが、恐らく彼らはもはや他の動物を狩る体力すら満足に残っていないのだろう。一番手っ取り早く済む狩りをしないのは、それが大きいに違いない。
まぁ結局、わたしはオオカミたちに同情して村の人たちの役に立つどころか逆に欺く結果となってしまったワケだが。
何度となくわたしを引き止めていた平蔵もここまで来たら引き止める理由もなくなってしまったらしく、わたしは村を後にした。もちろん、褒美など何もない。そもそも、仕事をしていないのだから当たり前なのだが。まぁ、ここ数日、メシを食わせて貰っただけでも充分といったところだろう。
しかし、これからどうするか。
わたしは取り敢えず、村からずっと歩いて来た道を引き返し、道中にある空き小屋に入った。これならひと晩くらい何とかなるだろう。ここ数日、全然寝ていない。少しでもいいから休みたかった。
わたしはすぐに暗闇に飲み込まれていった。
【続く】
わたしはムスッとした表情を浮かべながらも内心ではホッとしていた。あのオオカミたちに自分のことばが通じたようで何よりだった。確かに彼らは村の食物をあさって盗んで行く盗人には変わりないが、腹を空かして苦しんでいるオオカミに対して不思議と非情にはなれなかった自分がいた。
今の自分がそもそも困窮して拾われた身であるのだが、それ故に彼らの苦しみに共感してしまったのだろうか。
村のモノを盗んで行くというのは、人間の食いモノの味を覚えてしまったからというのもあるだろうが、恐らく彼らはもはや他の動物を狩る体力すら満足に残っていないのだろう。一番手っ取り早く済む狩りをしないのは、それが大きいに違いない。
まぁ結局、わたしはオオカミたちに同情して村の人たちの役に立つどころか逆に欺く結果となってしまったワケだが。
何度となくわたしを引き止めていた平蔵もここまで来たら引き止める理由もなくなってしまったらしく、わたしは村を後にした。もちろん、褒美など何もない。そもそも、仕事をしていないのだから当たり前なのだが。まぁ、ここ数日、メシを食わせて貰っただけでも充分といったところだろう。
しかし、これからどうするか。
わたしは取り敢えず、村からずっと歩いて来た道を引き返し、道中にある空き小屋に入った。これならひと晩くらい何とかなるだろう。ここ数日、全然寝ていない。少しでもいいから休みたかった。
わたしはすぐに暗闇に飲み込まれていった。
【続く】