【ナナフシギ~弐拾睦~】
文字数 1,167文字
夜の学校は墓場よりも静けさに包まれていた。
「うーん」唸る岩渕。「これはヒドイもんですねぇ......」
岩渕、詩織、和雅の三人は学校の昇降口のひとつの前に立っていた。祐太朗たちが入った場所とは、また別の昇降口だ。
「岩渕さん」詩織はいった。「ここ、本当にわたしたちの学校なの?」
「えぇ、そのはずです......」岩渕は困惑しつつもそう答えた。
岩渕が困惑するのも無理はないだろう。というのも、普段は何てこともない学舎でしかない学校が、おどろおどろしい霊障に包まれているのだから。
しかし、実際のことをいえば、案外学校に幽霊が出るというのも、可笑しなことでは決してない。というのも、学校は元気な子供がたくさんいる。当たり前の話ではあるが、浮遊霊はそういったポジティブなエネルギーに寄ってきやすい。というのも、浮遊霊はネガティブなオーラをまとっており、常にポジティブなエネルギーを求めている。何故なら、ポジティブなエネルギーや、そういったエネルギーをまとっている人に寄っていけば、自分もエネルギーを貰えるのではないかと考える傾向にあるからである。
また、それだけではない。学校というのは、どういうワケか学校が建つ前は暗い歴史を持つ施設であったことも少なくはない。一例でいえば、火葬場や留置場といった、人の死や怨念、怨恨といったモノが渦巻くような施設がそうだ。そのような暗い歴史を持つ施設跡に学校が建てられるということもなくはない。
当然、創立前にお祓いは済ませるのだが、時が経つと共にその効果も薄れてしまう。そうなれば、お祓いによって張られていた結界も弱まり、外から浮遊霊や怨念が侵入してくることも全然ありうる話になってしまう。そうなれば、土地本来にあった霊的なエネルギーが復活し、学校は霊の巣窟となってしまう。
そして、今回のように学校の昇降口が霊道となって、あの世とこの世の狭間への入り口となってしまう、ということだ。
和雅は詩織にしがみついた。
「どうしたの?」
詩織が和雅に訊ねると、和雅は首を横に振りながら、ここイヤだというばかりだった。詩織は和雅を説得しようとするも、和雅はもはや人形のように首を横に振り続けるばかりだった。
「それがいいと思います」岩渕はそういうと、懐から車のキーを取り出した。「おふたりは車で待っていなさい。祐太朗さんとお友達はわたしが何とかしますから。いいですね?」
そうはいっても、詩織は素直に従おうとはしなかった。だが、岩渕が更に詰めると、詩織はふて腐れ気味になってキーを受け取った。
「いい子ですね。では、お車に戻って、ちゃんと鍵を閉めて待っているのですよ。いいですね?」岩渕は詩織が頷くのを確認し、更にいう。「では、行って参りますから」
岩渕は昇降口の扉に手を掛けた。
扉はやはり開いていた。
【続く】
「うーん」唸る岩渕。「これはヒドイもんですねぇ......」
岩渕、詩織、和雅の三人は学校の昇降口のひとつの前に立っていた。祐太朗たちが入った場所とは、また別の昇降口だ。
「岩渕さん」詩織はいった。「ここ、本当にわたしたちの学校なの?」
「えぇ、そのはずです......」岩渕は困惑しつつもそう答えた。
岩渕が困惑するのも無理はないだろう。というのも、普段は何てこともない学舎でしかない学校が、おどろおどろしい霊障に包まれているのだから。
しかし、実際のことをいえば、案外学校に幽霊が出るというのも、可笑しなことでは決してない。というのも、学校は元気な子供がたくさんいる。当たり前の話ではあるが、浮遊霊はそういったポジティブなエネルギーに寄ってきやすい。というのも、浮遊霊はネガティブなオーラをまとっており、常にポジティブなエネルギーを求めている。何故なら、ポジティブなエネルギーや、そういったエネルギーをまとっている人に寄っていけば、自分もエネルギーを貰えるのではないかと考える傾向にあるからである。
また、それだけではない。学校というのは、どういうワケか学校が建つ前は暗い歴史を持つ施設であったことも少なくはない。一例でいえば、火葬場や留置場といった、人の死や怨念、怨恨といったモノが渦巻くような施設がそうだ。そのような暗い歴史を持つ施設跡に学校が建てられるということもなくはない。
当然、創立前にお祓いは済ませるのだが、時が経つと共にその効果も薄れてしまう。そうなれば、お祓いによって張られていた結界も弱まり、外から浮遊霊や怨念が侵入してくることも全然ありうる話になってしまう。そうなれば、土地本来にあった霊的なエネルギーが復活し、学校は霊の巣窟となってしまう。
そして、今回のように学校の昇降口が霊道となって、あの世とこの世の狭間への入り口となってしまう、ということだ。
和雅は詩織にしがみついた。
「どうしたの?」
詩織が和雅に訊ねると、和雅は首を横に振りながら、ここイヤだというばかりだった。詩織は和雅を説得しようとするも、和雅はもはや人形のように首を横に振り続けるばかりだった。
「それがいいと思います」岩渕はそういうと、懐から車のキーを取り出した。「おふたりは車で待っていなさい。祐太朗さんとお友達はわたしが何とかしますから。いいですね?」
そうはいっても、詩織は素直に従おうとはしなかった。だが、岩渕が更に詰めると、詩織はふて腐れ気味になってキーを受け取った。
「いい子ですね。では、お車に戻って、ちゃんと鍵を閉めて待っているのですよ。いいですね?」岩渕は詩織が頷くのを確認し、更にいう。「では、行って参りますから」
岩渕は昇降口の扉に手を掛けた。
扉はやはり開いていた。
【続く】