【帝王霊~百弐~】
文字数 557文字
全身の毛穴が開いたようだった。
突っ込んで来る男の姿を見て、汗がブワッと吹き出して来るようだった。
右手に握られた妖しく光るナイフの刃が、暗闇を受けて更に光っていた。
ぼくは咄嗟に左に大きくよけた。
危なかった。恐らく山田さんにまともに稽古をつけて貰っていなかったら今の一撃はかわせなかっただろう。相手の右側に入ったのも山田さんの稽古の結果である。
だが、ぼくは大きくよけすぎていた。相手に追撃をすることは出来ずに、距離が開きすぎてしまっている。これでは意味がない上に、相手に右側を警戒させる理由を作ってしまう。オマケに相手の右側は潜り込めば相手を一瞬で倒せるが、それが甘ければ凪払われて逆にダメージを負う危険性がある。
ぼくは大きく呼吸した。落ち着け、落ち着くんだ。ぼくは山田さんにいわれたことを思い返していた。
山田さんーー居合で大切なのはその時その時で適切な姿勢でいることだといっていた。そして、その時に見るべきは、相手の姿勢。上半身、特に首が垂れている時は重心が上がっているから下半身の支えが不十分になっている。そして、凶器を持っているならその握り手もしっかり見るのだ。慣れていない凶器は総じてクソ握りになりやすい。加えて片手持ちで充分なモノを両手で持っていればーー
男は再び飛び掛かって来た。
【続く】
突っ込んで来る男の姿を見て、汗がブワッと吹き出して来るようだった。
右手に握られた妖しく光るナイフの刃が、暗闇を受けて更に光っていた。
ぼくは咄嗟に左に大きくよけた。
危なかった。恐らく山田さんにまともに稽古をつけて貰っていなかったら今の一撃はかわせなかっただろう。相手の右側に入ったのも山田さんの稽古の結果である。
だが、ぼくは大きくよけすぎていた。相手に追撃をすることは出来ずに、距離が開きすぎてしまっている。これでは意味がない上に、相手に右側を警戒させる理由を作ってしまう。オマケに相手の右側は潜り込めば相手を一瞬で倒せるが、それが甘ければ凪払われて逆にダメージを負う危険性がある。
ぼくは大きく呼吸した。落ち着け、落ち着くんだ。ぼくは山田さんにいわれたことを思い返していた。
山田さんーー居合で大切なのはその時その時で適切な姿勢でいることだといっていた。そして、その時に見るべきは、相手の姿勢。上半身、特に首が垂れている時は重心が上がっているから下半身の支えが不十分になっている。そして、凶器を持っているならその握り手もしっかり見るのだ。慣れていない凶器は総じてクソ握りになりやすい。加えて片手持ちで充分なモノを両手で持っていればーー
男は再び飛び掛かって来た。
【続く】