【ハイブリッドヤンキー】

文字数 3,252文字

 人のことを毛嫌いするのはよくない。

 まぁ、おれみたいなヤツがいったところでまったく説得力がないのだけど、やはり人のことを毛嫌いするのはよくないと思うのだ。

 それは、人間だし、好き嫌いというのは必ずあるだろう。とはいえ、相手のことが気にくわないからどうというのはよろしくない。それがイジメにつながったり、何かしらのトラブルに繋がるのはいうまでもないしな。

 おれという人間は、あまり人のことを嫌いにならないし、どんなに怒りを覚えても、一定の段階を経るとどうでもよくなってしまう。

 というより、実力行使主義のおれにとって、怒りを覚えたら、殴ったり蹴ったりという手段は使わずに、何かしらの行動に出て問題解決に乗り出してしまうので、それで問題を解決してしまえば、どうでもよくなってしまうというだけなのだけど。

 逆におれは一部のタイプの人間から非常に毛嫌いされがちだったりする。そのタイプとは、

 中途半端に悪ぶる連中だ。

 いってしまえば、ちょっと制服を着崩してみたり、勉強しないでみたり、タバコをすってみたりすることがカッコいいと思っている連中のことだったりする。

 おれはそういうタイプの人間から嫌われがちなのだ。

 多分、見ていてイラッとするんだろうな。比較的教師に好かれていたところとかは、取り入っていると思われていたのだろうし、自ら勉強して成績を上げようとしているのも、そう見えたに違いない。

 でも、社会ってそういうもんだ。

 何事も真面目にやったもん勝ちーーというか、真面目にやるのが本来は当たり前なのだ。

 しっかりとやっていれば、自然とことは上手く運んでいくし、味方も増えていく。変に突っ張って他人を僻んだ目で見る暇があったら、自分のやるべきカリキュラムをひとつでも消費したほうが絶対にいい。

 とはいえ、それをしないことがカッコいいと思っているヤツは決して絶滅しないというか、大人になってもそう思っているヤツはたくさんいるのだけど。

 高校二年の時のことだ。

 五条氏の高校二年といえば、修学旅行中に倒れたり、盲目間際の先生とのやり取りがあったりといいことから悪いことまで様々な出来事があったのだけど、自分の中に残っているのは基本的に楽しい記憶ばかりだった。

 とはいえ、中にはそうとも思えないものがあるのも確かだ。

 当時おれが所属していたのは普通科理系コースのクラスで、成績の上下はあるとはいえ、皆いい人ばかりだったーーあるひとりを除いて。

 そいつは名前を「小佐田」といった。小佐田は、身長一七〇いかないくらいで、見た目的には外来種の不細工犬をイメージしてもらえればパーフェクトだと思う。

 小佐田は男子校という環境の中で、どういうワケか、変に気取るヤツだった。シャツを出しては他人に挑戦的な態度を取り、いつもヘラヘラしては、何も面白くないギャグをいって悦に入るという典型的な寒い太鼓持ちだった。

 まぁ、これだけでも充分害悪で、人から嫌われていたのだけど、そんな小佐田は、自分のことをーー

 ヤンキーでホストなイケイケ男子だと自称していたのだ。

 もはや書いているだけでも恥ずかしいのだけど、それを誇らしげに語る小佐田は本当に寒かった。

 そもそも進学校で「勉強面倒臭ぇ」とかアピールしている時点で寒いのに、どこの誰に向けたのかわからないヤンキーとホストアピールは、周りの奴らを本当に凍りつかせた。「ドンペリ一本入りまぁ~す」じゃねえよ。

 ちなみに、小佐田は自分の源氏名を持っており、その名を「優也」といった。うん、普通。もっと工夫しろよって話なのだけど、そんなヤンキーホストの優也くんのことをオタクから陽キャまでが一丸となってバカにしていた。

 そんな小佐田だが、どういうワケかおれのことが気にくわなかったらしいのだ。

 当時のおれはというと、成績は中の上か上の下くらいで、クラス旗をデザインしたり、文化祭にて有志の出し物をしたりと学校生活を徹底的にエンジョイしていた。

 教員とも仲がよく、クラスの生活安全係で、それはそれは上手く立ち回っていたと思う。

 多分、小佐田はそれが気にくわなかったのだと思う。小佐田は何かとおれが関わると不満げな顔を見せた。おれが小佐田と仲のいいヤツと話しているだけでイヤそうにするし、話に割り込んでおれを置いてきぼりにしようとする。

 まぁ、当時のおれはクラスのどのグループにも所属していないーーというか、どのグループにも入っていける珍しい立ち位置にいたおかげで、置いてきぼりにはならなかったのだけど、流石に小佐田の行為にはおれも顔をしかめた。

 とはいえ、別にケンカしたいとも思わなかったし、揉め事を起こしたいとも思わなかった。何よりも楽しく過ごせればそれでいいと思っていたからな。

 が、事件は唐突に起きた。

 あれは体育でバスケをやった時だった。まぁ、クラスでは上手く立ち回り、成績もそれなりだった五条氏ではあったけれど、如何せん運動だけは苦手だった。

 中学から合わせて五年ほど運動部にいたとはいえ、どうも身体の動かし方がわからず、それはそれは酷いものだった。

 バスケなんて本当に酷いもので、ドリブルをしようとして足の甲にボールを当ててしまい、場外にやってしまうのはよくあることだった。

 が、やれる限りはやるしかない。パス回しだったり、シュートだったりをしっかりこなすしかなかったのだ。

 そんな中、ある試合において、おれらのチームの対戦チームの中に小佐田がいた。その時もヘラヘラしつつ、バカみたいなスタンスを貫いていたのだけど、

 唐突におれを睨み付けてきたのだ。

 これにはおれも「何だコイツ」って感じざるを得なかったのだけど、そんなことはそれ以上気にせずに、試合は始まった。

 試合は進み、得点は互いに拮抗していたと思う。そんな中、敵チームのシュートが外れ、珍しくおれがリバウンドを取り、ドリブルで相手チームのゴールへ向かおうとしたのだが、

 小佐田の野郎、おれの腹を殴ってきやがった。

 最初は何が起きたかわからなかった。ただ、腹部に衝撃がきてボールを取り落としたのはわかった。そっからボールを小佐田に奪われ再度攻め込まれて一点を許してしまったのだ。

「どうした?」

 チームメイトに訊かれるも確かなことはわからず、適当に話を逸らしたのだが、その後も、

 小佐田はおれにタックルや足を踏むといった反則行為を平気でやって来たのだ。

 加えて小佐田は挑発的な笑みを浮かべてこちらを見てくるでないの。そこで確信した。全部コイツの仕業だ、と。

 体育後、おれの様子が可笑しかったことでクラスの友人たちが話を訊きに来たのだけど、そこでおれは小佐田の仕打ちを全部話した。

 男子校という空間は特異なもので、共学では小佐田みたいな存在が正義になるが、男子校では逆に小佐田みたいなヤツは絶対悪になる。

 お陰で小佐田はみんなから嫌われ、孤立することとなってしまったワケだ。

 男は女の前では調子に乗る。生物としての本能が、他の男子よりも上等な存在だと女子にアピールするためにイキる。

 だが、男子校は違う。男子校においてイキることは重罪だ。男だけの閉鎖的な空間であるが故に、各々が柵なくオープンにコミュニケーションを取り、学校生活を楽しもうとしている。そんな中では、ヤンキー気取りのバカは淘汰されるしかない。これに関しては仕方ないよな。

 やはり、変に他人に対してマウントを取ろうとしたり、イキったりするヤツは嫌われる。もし、そういうヤツが徒党を組んでいるような空間にいるとしたら、さっさとトンズラしたほうがいいのかもしれない。

 ヤツラはルールを守らないことがカッコいいと思っているし、グループの中にいたとしても、そんな中では腐っていくだけだからな。

 珍しく怒りのアフガン的な文章を書いてしまったのだけど、別に怒ってはないです。

 ただ、そういうストレスなく楽しい生活が送れたらいいよな。

 次回は下らない話を書きたいわ。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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