【ナナフシギ~伍拾玖~】
文字数 1,086文字
身内だからといって、必ずしも仲がいいとは限らない。
それはもちろん、兄弟であれば育てられ方の格差だったり、互いの能力差だったり、もちろん後の遺産相続だったりと様々な要因があるのはいうまでもない。
これは兄弟だけに限らず、親と子という関係にも充分当てはまる。むしろ、兄弟よりも親との確執のほうが泥沼になりやすい傾向にある。親といっても立派な人間ばかりではない。この世における最大の平等は聖人だろうが、バカでもクズでも親になれるということだろう。そして、後者は子供にたかったり、ネグレクト、虐待をしたり、自分の考え、思想を押し付けたりして、子供の後の人生を狂わせたりする。そうなれば後はいわずもがな。ロクデナシの親に育てられれば子もロクデナシになる傾向が高くなり、後は無限の連鎖が繰り広げられることとなる。
本来一番近しいであろう身内ですらそんなモノなのだから、これが他人となったらもっと酷いことになるのはいうまでもないだろう。そもそも他人は他人でしかなく、相手の人生に対する責任など一切負う必要などないのだから、それはよりドライになるーーと思いきや、確執が酷くなればなるほど、人は嫌いな人間に湿っぽくなっていく。
ちょっとやってこれで終わりーーそんな簡単にはいかない。湿っぽい確執は互いが死んでもその亡骸を蹴飛ばすような凄惨さがある。そして、それは端から見ていいモノであるワケはまったくない。
祐太朗と岩淵はまさにそうだった。岩淵は何を考えているかわからないとはいえ、祐太朗はこころの底から岩淵のことを嫌っていた。それは岩淵が両親の忠実な側近だからとかいう簡単な理由ではおさまり切らない複雑な事情が絡んでいそうだった。
「じゃあ、テメェは何でここにいるんだ?」
祐太朗が厳しい口調でそう訊ねると、岩淵はケラケラと笑って見せた。だが、その目は一切笑っていなかった。
「それは坊っちゃんが小学校へ行かれたとおふたりから聞いたからですよ」
「じゃあ、それにあのふたりが同行してないって、どうしていい切れるんだよ?」
まるで泥の掛け合い。いや、むしろそこにはもはや泥などなく、互いの排泄物を掴んでそれを相手にぶつけているような、そんな様子だった。そこにあるのは相手の名誉をキズつけたいという身も蓋もない願望。
「ご両親からアナタ方のお守りを頼まれているわたしが、そんなことすると思いますか?」
「思う」祐太朗は即答した。「それに答えになってねぇ」
エミリは祐太朗を宥めるように名前を呼び掛けた。祐太朗はそれに答えず、じっと岩淵のことを睨みつけていた。
と、突然闇の奥から音がした。
【続く】
それはもちろん、兄弟であれば育てられ方の格差だったり、互いの能力差だったり、もちろん後の遺産相続だったりと様々な要因があるのはいうまでもない。
これは兄弟だけに限らず、親と子という関係にも充分当てはまる。むしろ、兄弟よりも親との確執のほうが泥沼になりやすい傾向にある。親といっても立派な人間ばかりではない。この世における最大の平等は聖人だろうが、バカでもクズでも親になれるということだろう。そして、後者は子供にたかったり、ネグレクト、虐待をしたり、自分の考え、思想を押し付けたりして、子供の後の人生を狂わせたりする。そうなれば後はいわずもがな。ロクデナシの親に育てられれば子もロクデナシになる傾向が高くなり、後は無限の連鎖が繰り広げられることとなる。
本来一番近しいであろう身内ですらそんなモノなのだから、これが他人となったらもっと酷いことになるのはいうまでもないだろう。そもそも他人は他人でしかなく、相手の人生に対する責任など一切負う必要などないのだから、それはよりドライになるーーと思いきや、確執が酷くなればなるほど、人は嫌いな人間に湿っぽくなっていく。
ちょっとやってこれで終わりーーそんな簡単にはいかない。湿っぽい確執は互いが死んでもその亡骸を蹴飛ばすような凄惨さがある。そして、それは端から見ていいモノであるワケはまったくない。
祐太朗と岩淵はまさにそうだった。岩淵は何を考えているかわからないとはいえ、祐太朗はこころの底から岩淵のことを嫌っていた。それは岩淵が両親の忠実な側近だからとかいう簡単な理由ではおさまり切らない複雑な事情が絡んでいそうだった。
「じゃあ、テメェは何でここにいるんだ?」
祐太朗が厳しい口調でそう訊ねると、岩淵はケラケラと笑って見せた。だが、その目は一切笑っていなかった。
「それは坊っちゃんが小学校へ行かれたとおふたりから聞いたからですよ」
「じゃあ、それにあのふたりが同行してないって、どうしていい切れるんだよ?」
まるで泥の掛け合い。いや、むしろそこにはもはや泥などなく、互いの排泄物を掴んでそれを相手にぶつけているような、そんな様子だった。そこにあるのは相手の名誉をキズつけたいという身も蓋もない願望。
「ご両親からアナタ方のお守りを頼まれているわたしが、そんなことすると思いますか?」
「思う」祐太朗は即答した。「それに答えになってねぇ」
エミリは祐太朗を宥めるように名前を呼び掛けた。祐太朗はそれに答えず、じっと岩淵のことを睨みつけていた。
と、突然闇の奥から音がした。
【続く】