【いろは歌地獄旅~ずっとそこに~】

文字数 719文字

 ずっとそこに有り続けるモノはない。

 それはつまり、何事も不変であり続ける存在は、あり得ないということだ。

 確かに理論や概念というモノには不変もあるだろう。だが、今そこにある一個体、ひとつの物理的な存在というものは必ず劣化し、壊滅していく。肉体は朽ち、植物は枯れていく。

 ここには四十六の扉がある。猫に始まり、老人、同心、人殺し。過去から現代、そして未来。現実から近未来まで色にバラツキがある。

 死ぬ者もいれば、生き残る者もいる。絶望する者もいれば、幸せになる者もいる。四十六の世界の中にはそれらが入り乱れている。

 そして、ここが終点。四十七つ目の地獄。といっても、残っているモノは何もない。これまで起きた四十六の出来事はすでに終了した。

 後にすべきはすべてを終わらせることのみ。執着すべきはただ流れ続けること。行く川の流れは耐えることなし。同じ状態を維持し続けることは何事においても不可能でしかない。

 その川の流れが地獄になるか、はたまた極楽になるか、それは所詮自分次第でしかないということだ。

 ライトが落ちていく。

 このスクリーンからもそろそろ彩りのある映像は消え失せてしまうだろう。そうすればまた真っ白な世界が戻ってくるだろう。

 何もないまっさらなカンバスのような白のスクリーン。何事にも染まっていない白。夜が来れば白は黒。沈黙の中で劇場は静かに封印されていく。そして、その扉が開かれることは二度とない、ということだ。

 きっと、ここもすぐに瓦礫の山となるだろう。だが、物体は消えても、そこにそれがあったという事実は消え失せない。そこに生きていた人間がいる限り。

 さて、劇場も閉館の時間となった。

 四十七。

 四十九にはふたつ及ばない。
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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