【ナナフシギ~参拾~】

文字数 1,035文字

 水が滴り弾ける音がした。

 そこは静まり返っていた。冷たい空気。そんな中でふたりの少年が地面に寝転がっていた。ふたりは、弓永と森永だった。ふたりとも目を閉じて寝息を立てていた。

 先に目を覚ましたのは弓永だった。ダルそうに起き上がると、辺りの様子を探った。だが、そこは暗くて殆ど何も見えはしなかった。弓永は森永の名を呼んだ。反応はなかった。だが、寝息が聴こえることから、更に強い口調で名前を呼び、手探りで森永の身体を探り当てると、強めに叩いた。

「......何だよ」

 寝ぼけた様子で森永はいった。弓永は、

「うるせぇ。てか、ここ何処だよ?」

 ふたりは自分たちが何故この場所にいるのか皆目わからない様子だった。森永もようやく事情を察したらしく、先ほど弓永がしたように辺りを見回していった。

「ここ、何処だよ?」森永は混乱していた。「......おれたち、どうしちゃったんだよ?」

 弓永は森永のことばに対して知らぬ存ぜぬというスタンスを取りつつも、今のこの状況に至るまでにあったことを可能な限りで思い返し始めた。

 時間はわからない。というか、もはやあの世とこの世の狭間で、現実世界の時間の流れなど当てになるかはわからない。わかるのは、ふたりが家庭科室を調べていた、ということだ。そして、何かイヤな感じがした。それから、まずは森永が倒れた。鈍い音とともに。弓永はその音の発生源と森永が倒れることとなった元凶を探した。だがーー

「気づけば、おれらはここにいる」

 説明するまでもなく、弓永も気絶していたのだ。そして弓永は顔を歪め、手で後頭部を押さえた。じんわりとした痛みが広がっている。森永に至っては、頭に殴られた痛みと鈍い頭痛のような内から来る痛みが広がっていたようだった。

「何だか、吐きそう」と森永。

「ここで吐くなよ」

「んなこといったって......」

 寒い。夏だというのに。寒さはふたりの体温を奪っていき、森永の身体を蝕んでいく。耳障りな水滴の弾ける音。その音がふたりの神経を逆撫でさせる。

「......マジで何処なんだよ?」と弓永。「家庭科室じゃないよな」

 その時、何かが動いた。弓永は思わず声を張り上げた。ビクッとした森永。急な大声に対し、森永は悪態をついた。だが、弓永はそんなことはお構いなしに今目の前で動いたモノに対して注意を向け続けていた。

 突然、火がボウッと灯った。と、そこにひとつの顔が浮かび上がった。

「鮫島ッ!」森永は叫んだ。

 鮫島の目は何処か虚ろだった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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