【帝王霊~玖拾捌~】

文字数 1,061文字

 何でこんなことも出来ないんだーーこれまで何度となく浴びせられて来たことばだ。

 何で出来ないのか、それはおれにもわからなかった。おれという人間はいわれたことに対する再現度が著しく低いタイプの人間だった。アレやってといわれると、一見冷静なように見えたとしても頭の中では軽いパニックを起こしている。

 どうすればいいのだーー結構簡単なことですらそうなりがちだ。おれは自分が如何に理解力の低い人間なのかを思い知るのに、随分と時間を掛けた。いや、気づくのが遅かったのではない、気づかないふりをしていたのだ。

 自分に吐き気を覚える。何でこんなことも出来ないのだろう。人にいわれる度に自分は生きる価値すらないのだろうと思った。そして、そんなネガティブな思いを胸に生き続ければ、精神を病むのも当たり前だ。なるべく迷惑にならないように、人から嫌われないようにと笑顔を振り撒いて完全な無害を装うが、そうすればするほどに人からはナメられるようになる。結局どう生きても自分は蔑まれる運命にある。本当にウンザリだった。

 役者なんてやっているが、結局しっかりといられたことなどなかった。むしろ、苦労し苦悩し、遅れを取りながら何とかやって来た。だが、そんな窮屈なことを続けていれば、いずれは自分にウンザリする時がくる。

 また、お前は最後尾。人のケツを追うだけの人生。追っていると思いきや、その距離はどんどん離れて行く。お手々つないで一緒にゴールというのがいいとはまったく思わない。だが、芝居というのは、座組の人たちと手をつないで共にゴールするモノだ。

 おれはその輪の中に入り切れないアウトサイダーでしかない。

 そりゃ他人に対して友好的な顔を見せる。だが、それは摩擦が起きないための策にすぎない。だが、おれはいつだって摩擦の真っ只中にいる。何も出来ないから。

 シンゴちゃんが突っ走るーーそんなことはわかりきっていた。だが、それに対して何の対策も取らなかった。取れなかったのではない、取らなかったのだ。自分の希望的観測の中で勝手にこうなるだろうと期待した結果がこれだ。まったく、バカ馬鹿しい。

 死ね、死んでしまえ。お前が死ねば二酸化炭素の濃度もほんのちょっとは薄くなるさ。だが、自殺するにも今はそれどころではない。まずはシンゴちゃんを何とかしないと。

「それで、彼と別れたのはどの辺なんだ!」

 疑問というよりは詰問に近かった。人に何かを訊ねる態度ではなかった。そんな自分がまたイヤになった。おれは、追い詰められていた。と、その時ーー

 電話が鳴った。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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