【一年三組の皇帝~死拾参~】

文字数 1,162文字

 疑心暗鬼ーー人のことを疑うばかりで、まったく信用できないような心理状態。

 ぼくはまさにそんな状態だった。

 とはいえ、今のぼくは、少なくともこのテーブルに座っている人間の中で誰ひとりとして信用などしていなかった。

 関口とその取り巻き、そして何の関係もないであろうただのプレイヤー、或いは野次馬であるクラスメイト。今このテーブルに座っている人間、それとぼくたちを取り巻いている連中、その殆どすべてが信用できなかった。

 もちろん、ハルナや片山さん、田宮や和田といった友人たちのことは信用できた。とはいえ、それだけ。敵か味方かわからない、亡霊のような存在がこの教室にはあまりにも多すぎた。ぼくは完全に四面楚歌の状態にあった。

「じゃあ、おれ、交換するわ」

 そういったのは2を持つ関口の取り巻きだった。それに対して関口はただ薄ら笑いを浮かべるのみだった。また取り巻きの一部は「交換したほうがいい」や「止めとけ!」と仲間であるはずの取り巻きのひとりを誘惑するようなことばを掛け続ける。それに対して、何だよ、やめろよ、といった調子で馴れ合うようなやり取りをする取り巻きのひとり。

「うん、やっぱ変えるわ!」

 取り巻きのひとりはカードをチェンジすることを宣言した。この『ネイティブ』のルールとして、自分が交換したカードの数字を確かめることはできない。結局、『2』という最強の数字は、その姿を見せることなく墓場へと消えて行った。

 その時、取り巻きたちの中には安堵の表情を浮かべる者、不敵に笑い者がいた。何とも胡散臭い表情。所詮、ゲームとはいっても、コイツらは仲間同士。本当に潰すべき相手はぼくであることはわかりきっている。なのに、彼らの浮かべる表情の一つひとつがあまりにも薄っぺらく、空虚な馴れ合いにしか見えなかった。関口の表情を覗き込んだ。関口はニヤリと笑ったままぼくのことを見ていた。

「......どうしたの?」

 関口にそう訊ねると、関口は表情を崩すことなくぼくのことをじっと眺めて、

「今のチェンジ、安心したんじゃない?」

 揺さぶって来た。ぼくはそんなことには興味がないといわんばかりに関口のことばを無視した。確かに相手が「2」を捨てたということは、完全敗北の可能性はなくなり、僅かながらに自分の勝てる可能性が出てきた。あとは、コイツが何を引くか、だーー

「何だよ、そんなにいいカードだったのかよ」2を捨てた取り巻きは困惑したように周りに訊ねていた。「何だよ」

 取り巻きのひとりは自分が強いカードを捨てたのではと動揺しているようだった。その反応は実に自然だった。

 これは演技じゃないのか?ーー沸き上がる疑問が頭の中でこだました。

 そして、取り巻きのひとりは新しくカードを得るためにカードの山に手を掛けた。

 ぼくの予想が正しければーー

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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