【一年三組の皇帝~玖~】

文字数 1,489文字

 賭けトランプーーこれが問題の種だった。

 切っ掛けなんてモノはもはや覚えていない。ただ、最初は何も賭けられていなかったことはしっかりと覚えている。それに、何故トランプをやろうなんて話になったかといえば、新しく入学して早々、同じ小学校出身の人たちで固まり、グループ化し始めていたのが何よりの理由だった。

 最初に声を上げたのは、土佐健太という男子で、みんなそんな一部でヒソヒソやらないでトランプでもして遊ばないか?という誘い文句を上げた。最初はみんな戸惑っていた。学校でトランプなんて先生に見つかったらトランプも取り上げられて怒られる未来しか見えないじゃないか。みんなそんな風なスタンスだった。

 ぼくはその当時は和田のイジメの件でそれどころではなかったのだけど、このトランプ維新を一気に推し進める存在があった。

 それが、学級委員の関口の存在だった。

 土佐の提案に対し関口は、みんな硬くなってるから仲良くなる切っ掛けが必要だよねといってクラスのトップ自らトランプへの参加を表明したのだ。こうなれば後は雪崩のよう。学級委員が参加するのなら、と一部の男子連中は何となくそちらへと流れて行った。そのメンツの中には辻たち三人も含まれていた。

 人も揃いゲームは何にしようと話になった。ババ抜きは時間が掛かり過ぎるという理由で没になった。スピードは一対一のゲームでメインでやるには見物する人が多くなってしまう。

 では、即座に結果が出るという意味でもポーカーが最適かとも思われた。だが、これは関口が否定した。というのは、

「ポーカーは役を知らない人が不利だから止めておこう。覚えるまでに負け続けちゃえば、みんなで交流を深めようってなる前にイヤな気分になって孤立してしまいかねないよね」

 とのことだった。ほんと、もっともらしい理由だと思った。だが、改めて考えると、もし賭けトランプの流れに持っていくという魂胆が最初からあったのならば、これほどいい手はない。

 ポーカーをまともに知らない人からしたら何てことないだろう。でも、人次第ーー特に大人からみたら、ポーカーほど賭けのイメージが強いゲームもないだろう。そう考えると、敢えてポーカーを候補から外したのは上手いとも思える。

 そして最終的に候補として残ったのは、大富豪とインディアンポーカーだ。

 大富豪はそこまで説明するまでもないだろう。要は三からスタートして次々に大きい数字を重ねて行き、最終的に自分の手札を早くなくした人の勝ちになる。そして、アガッた速さに対して大富豪や大貧民といった称号が付き、次のゲームでペナルティやボーナスがあるというワケだ。

 そう、これが巧妙だった。ゲーム内部で擬似的に格付けをすることが出来、富豪貧民の受け渡しを別の形で行うことが出来る。これならばゲーム感覚で日常の自分の地位を上げ下げし、賭けをすることが出来てしまう。

 そして、もうひとつ。インディアンポーカーは、ポーカーという名前が付いているとはいえ、まったく違うゲームで、しかも内容は単純だ。というのも、カードを一枚もらい、それを見ずに自分の額のところでかざし、最終的に自分が一番大きな数字であれば勝ちというゲームだからだ。

 もちろんカードの交換はありで、この交換を他人の口車に乗るか否かで決めていく。そう、周りの相手は基本的に人のカードは見えているので、変えるべきかどうかをいってくるのだ。

 そう、これは相手を如何に欺き、相手から欺かれず、自分のカードを交換しながら上を目指すゲーム。心理戦にはもってこい、だ。

 ゲームはこのふたつをメインに行うこととなった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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