【ナナフシギ~睦拾漆~】

文字数 1,028文字

 焦燥ーーこころが焦げるほどに煽られている時は細かなことに気が行かなくなる。

 遊具のところにいる妹と弟ーー詩織と和雅。祐太朗はふたりの姿のヴィジョンを見て気が気ではなくなっていた。

 ふたりはまったく知らない少年と一緒にいた。そして、それが悪霊であることを祐太朗は気づいていた。とはいえ、詩織と和雅もその少年が悪霊であることに気づいているはずーー特に和雅は三人の兄弟の中で最も霊感が強い。まず、和雅がその少年を脅威に感じないはずもなければ、恐れないはずもーー

 いや、仮に恐れようが、相手が悪霊だとわかろうが関係ない。恐れてもわかっても、取り込まれてしまってはもはや手遅れ。

 もしかしたら、ふたりはもう悪霊の餌食になっているかもしれない。祐太朗がそう思うのも無理はなかった。祐太朗は校舎の中庭に出ると、そこからグラウンドに向かって走った。あまり運動は得意でもないし、体力があるワケでもない。走り方だってフォームなんて概念すらないようなほどに崩れていた。だが、必死なのはひと目でわかった。

 祐太朗が焦るのも理由があった。というのは、悪霊の中でも子供の悪霊は特に性質が悪いからだった。というのは、子供の霊というのは、擦れた大人とは違い、よりその想いがストレートで純粋だ。故に霊となればそこに強い想い感情が生まれる、或いは強い怨恨が生まれてしまうというワケだ。だからこそ、祐太朗が焦るのも無理はなかったのだ。

 グラウンドの真ん中、祐太朗は突然立ち止まった。それに追いついたエミリ、清水。岩渕はまったく急ぐ様子もなくゆっくりと歩いていた。エミリは立ち止まって膝に手を置いていった。

「どうしたの......? 遊具はまだ向こうだよ?」

「すげえヤな感じだ」と祐太朗。

「......え?」

「まるでこことあそこにある遊具がまったく別の場所にあるような、そんな感じがする」

「......どうゆうことだよ?」清水がいった。

「ここまで酷いと霊感がなくても感じるんじゃないか? 何ていうか、自分の中でこっちに行っちゃダメだって感じるようというか、無意識の内にイヤだってなるようというか。音楽室のあの女子も結構強い怨恨を持っていたけど、あそこはそれよりもずっとキツイ。まるで、あそこら辺全部に怨念が渦巻いているような、そんな感じーー」

 祐太朗はビクッと身体を震わせてうしろじさった。「どうしたの?」とエミリ。

「坊っちゃんのいう通りですよ」

 遅れて来た岩渕が余裕な表情でいった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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