【転がる岩石は燃え上がる】
文字数 2,261文字
予想だにしないことが起こることがある。
それは衝撃的なことが殆どであり、自分が当事者であろうとなかろうと関係ない。
かくいうおれもこういった出来事は大変苦手だ。昔に比べたらアドリブ力がついた分、急な出来事に対する耐性もある程度はついたとはいえ、出来ることならやはりそういったイベントは起きないで貰えるとありがたい。
とはいえ、何が起こるか予想するなんて容易なことではない。不可能ではないとはいえ、様々な事象が複雑に絡み合えば、それも困難になってしまうのはいうまでもない。
だからこそ、普段から気をつけなければならない。常に襟元を正し、足許に気をつけ、危険に配慮していなければならないのだ。
何故なら、危険はいつだって人の足許を掬おうとタイミングを測っているから。
さて、今日はそんな急場の危険に関する話をしていこうと思う。ごむリン篇の最終回は明日か明後日にでも書く予定。まぁ、ゆっくり待っててくれーー待ってねぇか。
じゃ、書いてくーー
あれは高校三年の時のことだった。当時はまだ進級して間もなく、所属していた部活も引退しておらず、普通に活動している頃だった。
高校時代におれが所属していたのはバドミントン部なのだけど、以前からよくいっているように、おれは部活に顔を出しながら如何にサボるかを考えていたような体たらくだったこともあって、その腕は酷いモンだった。
それはさておき、バドミントンとなると基本は体育館で練習するのだけど、バレー部やバスケ部との兼ね合いもあって週に一、二度は室内で練習を行えない日があった。
じゃあ、そんな日はどうするか。答えは簡単、学外でランニングするのである。
ちなみにこの当時のおれは、中学時代と違って地味に体力があって、長距離走に関してはそこまで苦手意識はなかった。
まぁ、走る場所というのが、土手の砂利道ということもあって非常に走りづらかったのだけど、そんなことにはお構い無し。ノルマの八キロを走るのも大した苦労はなかった。
さて、そんなある日のことである。
その日もバレー部、バスケ部との練習の兼ね合いで、バドミントン部は外でランニングをすることとなっていたのだ。
部長の号令があり、ランニングが開始される。おれは自分のペースで走った。とはいえ、慣れたモンだ。先を走る者はいないし、息が切れることもない。かつての自分からは想像も出来ないくらいに、体力がついていた。
砂利道を走り出して数十分ほどした頃のことだった。おれは相も変わらず普通な顔のまま走っていた。正直、同じ景色を見続けていて飽き始めていたのだけど、そんな時ーー
背後から男の悲鳴が聴こえたのだ。
これには思わず走るのを止め、その場で足踏みをしながら振り返り、後方に目を凝らした。が、何も見えなかった。多分、気のせいだろう。そう思い、おれは再び走り始めた。
一〇分ほどして、おれはゴールし、ひとりで部室まで歩いて戻った。部室にて休んでいると、続々と人が戻ってきた。
そんな中、同じクラスで一年の頃からの友人でもある坪田が笑いながら戻ってきたのだ。
「どうしたんだよ」
坪田にそう訊ねると、
「いや、マジ聴いてくれよ」
そういって坪田は自分が笑っている理由を話し始めたのだけど、坪田の話を聴いて思わずアゴが外れそうになった。というのもーー
同期の岩村が土手から滑り落ちたというのだ。
ワケがわからなかった。というのも、おれたちが走っている土手というのが、足を踏み外すような道幅でもなく、自転車や歩行者の通りも皆無に等しいからだった。
さて、ここで岩村について説明しなきゃだろう。
岩村はおれの同学年の生徒で、特進クラスに所属するオタクだった。そのオタクぶりは同級生たちからすこぶる不評で、休み時間になると萌え系のマンガを読みながら、「グフッ! グフッ!」という不気味な笑い声を上げ、クラスメイトから気持ち悪がられていた。
ちなみにおれは別に岩村のことは嫌いではなく、むしろ観察対象としてはファニーな存在で、やたらと早口でオタク知識をひけらかされるのが面倒だったとはいえ、話せない相手ではなく、むしろよく話す仲だった。
ついでにいうと岩村は空手をやっていたこともあってか、運動も苦手というよりは出来るほうではあったはずなのだけど、にしても、どうやったらあの土手で足を踏み外すーー
と、突然、坪田は突然変な声を上げ始めたのだ。何それ、と訊ねてみるとーー
岩村が足を滑らせた時の声の真似とのことだった。
それで、おれは確信した。そうーー
おれが聴いた悲鳴は、岩村のモノだったのだ。
すべてが氷解した。しかし、足を滑らせたとなると怪我しているのではと思ったのだけど、坪田曰く、土手を転がり落ちはしたが、その後普通に土手を登って走り出していたので何ともなさそうだったとのこと。まぁ、本当ならそれでいいんだけども。
その後、少しして岩村が戻ってきた。
岩村に足の状態を訊ねると、別に問題はないとのことだった。が、それよりも気になるのはどうしてあんな幅のある土手から落ちたのか、だ。それについて訊ねると、岩村はーー
「いやぁ、アニメのこと考えながら走ってたら足踏み外しちゃったよ、グフッ! グフッ!」
完全に自業自得じゃねぇか。
この世の中、どこに危険が潜んでいるかわからない。注意一瞬、ケガ一生。落とし穴はどこにあるのかわからない。まぁ、岩村の場合は何やってんだかって感じだけどさ。
足許にはくれぐれもお気をつけを。
アスタラビスタ。
それは衝撃的なことが殆どであり、自分が当事者であろうとなかろうと関係ない。
かくいうおれもこういった出来事は大変苦手だ。昔に比べたらアドリブ力がついた分、急な出来事に対する耐性もある程度はついたとはいえ、出来ることならやはりそういったイベントは起きないで貰えるとありがたい。
とはいえ、何が起こるか予想するなんて容易なことではない。不可能ではないとはいえ、様々な事象が複雑に絡み合えば、それも困難になってしまうのはいうまでもない。
だからこそ、普段から気をつけなければならない。常に襟元を正し、足許に気をつけ、危険に配慮していなければならないのだ。
何故なら、危険はいつだって人の足許を掬おうとタイミングを測っているから。
さて、今日はそんな急場の危険に関する話をしていこうと思う。ごむリン篇の最終回は明日か明後日にでも書く予定。まぁ、ゆっくり待っててくれーー待ってねぇか。
じゃ、書いてくーー
あれは高校三年の時のことだった。当時はまだ進級して間もなく、所属していた部活も引退しておらず、普通に活動している頃だった。
高校時代におれが所属していたのはバドミントン部なのだけど、以前からよくいっているように、おれは部活に顔を出しながら如何にサボるかを考えていたような体たらくだったこともあって、その腕は酷いモンだった。
それはさておき、バドミントンとなると基本は体育館で練習するのだけど、バレー部やバスケ部との兼ね合いもあって週に一、二度は室内で練習を行えない日があった。
じゃあ、そんな日はどうするか。答えは簡単、学外でランニングするのである。
ちなみにこの当時のおれは、中学時代と違って地味に体力があって、長距離走に関してはそこまで苦手意識はなかった。
まぁ、走る場所というのが、土手の砂利道ということもあって非常に走りづらかったのだけど、そんなことにはお構い無し。ノルマの八キロを走るのも大した苦労はなかった。
さて、そんなある日のことである。
その日もバレー部、バスケ部との練習の兼ね合いで、バドミントン部は外でランニングをすることとなっていたのだ。
部長の号令があり、ランニングが開始される。おれは自分のペースで走った。とはいえ、慣れたモンだ。先を走る者はいないし、息が切れることもない。かつての自分からは想像も出来ないくらいに、体力がついていた。
砂利道を走り出して数十分ほどした頃のことだった。おれは相も変わらず普通な顔のまま走っていた。正直、同じ景色を見続けていて飽き始めていたのだけど、そんな時ーー
背後から男の悲鳴が聴こえたのだ。
これには思わず走るのを止め、その場で足踏みをしながら振り返り、後方に目を凝らした。が、何も見えなかった。多分、気のせいだろう。そう思い、おれは再び走り始めた。
一〇分ほどして、おれはゴールし、ひとりで部室まで歩いて戻った。部室にて休んでいると、続々と人が戻ってきた。
そんな中、同じクラスで一年の頃からの友人でもある坪田が笑いながら戻ってきたのだ。
「どうしたんだよ」
坪田にそう訊ねると、
「いや、マジ聴いてくれよ」
そういって坪田は自分が笑っている理由を話し始めたのだけど、坪田の話を聴いて思わずアゴが外れそうになった。というのもーー
同期の岩村が土手から滑り落ちたというのだ。
ワケがわからなかった。というのも、おれたちが走っている土手というのが、足を踏み外すような道幅でもなく、自転車や歩行者の通りも皆無に等しいからだった。
さて、ここで岩村について説明しなきゃだろう。
岩村はおれの同学年の生徒で、特進クラスに所属するオタクだった。そのオタクぶりは同級生たちからすこぶる不評で、休み時間になると萌え系のマンガを読みながら、「グフッ! グフッ!」という不気味な笑い声を上げ、クラスメイトから気持ち悪がられていた。
ちなみにおれは別に岩村のことは嫌いではなく、むしろ観察対象としてはファニーな存在で、やたらと早口でオタク知識をひけらかされるのが面倒だったとはいえ、話せない相手ではなく、むしろよく話す仲だった。
ついでにいうと岩村は空手をやっていたこともあってか、運動も苦手というよりは出来るほうではあったはずなのだけど、にしても、どうやったらあの土手で足を踏み外すーー
と、突然、坪田は突然変な声を上げ始めたのだ。何それ、と訊ねてみるとーー
岩村が足を滑らせた時の声の真似とのことだった。
それで、おれは確信した。そうーー
おれが聴いた悲鳴は、岩村のモノだったのだ。
すべてが氷解した。しかし、足を滑らせたとなると怪我しているのではと思ったのだけど、坪田曰く、土手を転がり落ちはしたが、その後普通に土手を登って走り出していたので何ともなさそうだったとのこと。まぁ、本当ならそれでいいんだけども。
その後、少しして岩村が戻ってきた。
岩村に足の状態を訊ねると、別に問題はないとのことだった。が、それよりも気になるのはどうしてあんな幅のある土手から落ちたのか、だ。それについて訊ねると、岩村はーー
「いやぁ、アニメのこと考えながら走ってたら足踏み外しちゃったよ、グフッ! グフッ!」
完全に自業自得じゃねぇか。
この世の中、どこに危険が潜んでいるかわからない。注意一瞬、ケガ一生。落とし穴はどこにあるのかわからない。まぁ、岩村の場合は何やってんだかって感じだけどさ。
足許にはくれぐれもお気をつけを。
アスタラビスタ。