【藪医者放浪記~玖拾壱~】
文字数 637文字
せわしい時ほど時の流れは早くなる。
これは実際に早くなっているのではなくて、潜在的な意識が時への意識を切らしてしまうからといっていいだろう。人は皆、無意識に時を意識している。時間に追われがちな現代人なら尚更だろう。
そして、ここにとある要素が付くと、途端に時の流れは余計に早く感じられる。その要素とは「焦燥」である。そう、焦りが加わると、意識的な余裕がなくなる上に、精神的な圧迫感も加わって余計に時の過ぎ去り方が早くなる。もう少しだけ時間をーーそう思えば思うほど時の流れは早く感じられるだろう。
さて、この焦燥感に満ち溢れた中庭も意識の内で、爆速で時が過ぎ去っていた。
「何だよ?」
お咲の君が訊ねた。それから茂作はキョロキョロと辺りを見回した。それから何事もなかったかのようにーー
「......いや、あのサムライふたり、遅えなと思って」
「あのサムライ?」怪訝そうにお咲の君はいった。「......あぁ、源之助と向こうの遣いの者か。確かに姿が見えないが、何か知ってるのか?」
茂作はギョッとした。猿田源之助に牛野寅三郎、このふたりが何をしようとしているか、茂作は知っていた。互いに反目する立場ではあるが、その能力が高いのは茂作でなくともわかること。そんなふたりが何を手こずっているのかと思うと、確かにふたりの姿が見えないのは不思議なことではあるだろう。
「......ちょっと、探してくるわ」
茂作は立ち上がって歩き出したーー猿田たちが消えて行ったほうと逆に向かって。
【続】
これは実際に早くなっているのではなくて、潜在的な意識が時への意識を切らしてしまうからといっていいだろう。人は皆、無意識に時を意識している。時間に追われがちな現代人なら尚更だろう。
そして、ここにとある要素が付くと、途端に時の流れは余計に早く感じられる。その要素とは「焦燥」である。そう、焦りが加わると、意識的な余裕がなくなる上に、精神的な圧迫感も加わって余計に時の過ぎ去り方が早くなる。もう少しだけ時間をーーそう思えば思うほど時の流れは早く感じられるだろう。
さて、この焦燥感に満ち溢れた中庭も意識の内で、爆速で時が過ぎ去っていた。
「何だよ?」
お咲の君が訊ねた。それから茂作はキョロキョロと辺りを見回した。それから何事もなかったかのようにーー
「......いや、あのサムライふたり、遅えなと思って」
「あのサムライ?」怪訝そうにお咲の君はいった。「......あぁ、源之助と向こうの遣いの者か。確かに姿が見えないが、何か知ってるのか?」
茂作はギョッとした。猿田源之助に牛野寅三郎、このふたりが何をしようとしているか、茂作は知っていた。互いに反目する立場ではあるが、その能力が高いのは茂作でなくともわかること。そんなふたりが何を手こずっているのかと思うと、確かにふたりの姿が見えないのは不思議なことではあるだろう。
「......ちょっと、探してくるわ」
茂作は立ち上がって歩き出したーー猿田たちが消えて行ったほうと逆に向かって。
【続】