【冷たい墓石で鬼は泣く~漆拾睦~】

文字数 631文字

 鋭い視線は見たモノすべてを射貫いてしまいそうなほどだった。

 わたしはワケがわからなくなった。オオカミの群れ。数にして五匹。だが、そのどれもが痩せこけて今にも倒れてしまいそうだった。

 まさかとは思った。だが、そうとしか思えなかった。村人たちの野武士に関する話しぶりの曖昧さ。アレは野武士のことを答えたかったのではない。実際の盗人は野武士ではなかったが故、何も答えることが出来なかったのだ。でなけば、わたしをハメて追い剥ぐかだが、そもそもわたしのように見るからにみすぼらしく、銭のにおいがこれっぽっちもしない風貌の男をわざわざ呼び止めてまでして村に誘うワケがなかった。

 確かに相手がオオカミであるといえば、わたしに仕事を断られると思うだろう。事実、わたしもオオカミが出るから退治してくれといわれたら、はいと答える自信はない。まぁ、メシを口実に村まで誘われた時点でわたしの負けといえば負けなのだが。

 わたしは左手の親指を刀のツバに掛けた。痩せこけた頭のオオカミはわたしのほうを見ても何の反応も示さなかった。むしろ、その表情には諦めの色が出ていて悲壮感に満ち溢れていた。

 にらみ合うわたしと頭のオオカミーーいや、にらみ合うというよりは見詰め合うという表現のほうが正しかったかもしれない。風の音と炎が弾ける音ばかりがけたたましく鳴った。わたしは自分の手が震えていることに気づいた。怖いからか、はたまた悲しみが込み上げて来るからかはわからなかった。

 わたしはーー

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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