【ナナフシギ~弐拾漆~】

文字数 930文字

 おどろおどろしさを放つ小学校の敷地内は何処までも広く感じられた。

 岩渕が校内へと消えた今、詩織と和雅は敷地内をふたりとぼとぼと歩いていた。和雅は何を考えているかよくわからないような表情で校舎を見上げながら歩いていた。対する詩織は何処かつまらなそうに顔を膨れさせている。

「ずるいッ!」詩織が声を上げた。「ずるいよ岩渕さんばっかり! ねぇ、そう思わない?」

 詩織がそう問い掛けても、和雅は興味もなさそうにただ相槌を打つばかりだった。相槌を打ちながらも和雅は校舎をずっと見詰めていた。

「どうしたの?」詩織。

「ううん。でも、何かやっぱり変だなぁって」

「変って、校舎が?」和雅が相槌を打つのに対して、詩織は更に続けた。「確かに幽霊の雰囲気というか、気配がそこら中からするね」

 普通の人間には見えはしないが、校舎の至るところに張られている窓ガラス、その至るところから浮遊霊が顔を覗かせていた。その顔はどれも青白く、顔つきも雰囲気もマイナスのオーラに満ち満ちていた。そんな霊たちが外を歩く詩織と和雅に注目しない理由がなかったのはいうまでもなかった。

 だが、この姉と弟はもはや霊の姿など日常的に見てしまっていて、それが普通になってしまっているせいか、特に驚くことはない。そもそも、こんな霊にまみれた夜の学校に行きたいと自らついてくる時点で普通の子供とは一線を隔しているというのはいうまでもないだろう。

「でも、つまんないなぁ。車の中でお留守番か」ブー垂れる詩織。「ずーるい、ずーるいー!」

 詩織は悪態をついた。流石にこういう様子を見ると子供なのだなとも思えるかもしれないが、普通に考えて夜に子供が出歩くこと自体がマズイ上に、いい年した大人である岩渕が小さい子供をふたりも外に連れ出して無責任に放置するのは何かと問題があるのはいうまでもない。況してや詩織たちの両親に世話を頼まれているにも関わらず、この体たらくはクビだとかそういう問題では済まされない。間違いなく責任問題を問われる。そして何よりもマズかったのは、この姉が素直に車に戻れという話を聴くワケがないということだ。

「ねぇ、わたしたちも中入っちゃおうか!」

 詩織の提案に和雅は如何にもつまらなそうに相槌を打った。

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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