【土曜深夜の魔術師】

文字数 3,908文字

 土曜の夜は女といなくちゃ寂しいぜ。

 唐突に何をいい出すんだ、このゴミは。と思われるかも知れんがね、これは泉谷しげるの『翼なき野郎ども』の歌詞なんよ。いい曲よね。

 しかし、例のアレの影響もあって、最近では外に出る機会もめっきり少なくなって、土曜の夜が地味にしんどく感じるんだけど、キミたちは土曜の夜を如何お過ごしだろうか。

 まぁ、先週は中学時代の友人たちとリモート飲みをしていたんで楽しく過ごせたのだけど、今週の土曜は本当に何もない。某動画サイトの配信を見ながらこんな文章を打つくらいしかやることがない。困ったもんだ。

 さて、話を進める前に、先に告知しておくか。

 九月の上旬のどこかで新しい小説をアップするわ。タイトルは『ミス・ラストスタンド』、主人公は鈴木兄妹でもなければ和雅でもなく新参の女性で、あることが切っ掛けとなって「ラストスタンド」というゲームに巻き込まれていくという、ね。ま、気長にお待ちーー誰も待ってねえか。

 さて、告知は終わり、話の続きな。

 まぁ、別に動画配信を見ながら文章を書くのもいいと思うんよ。でも、これまでの土曜の夜と比べると明らかにパッとしないというか、味気なく感じてしまう。

 まぁ、かといってこれまでも毎土曜、充実した日々を送っていたかといわれるとそれは怪しい。高校時代は土曜も授業があったし、大学時代は一日中映画を観るくらいしかなかった。

 そう考えると毎土曜、確実に誰かと遊んでいた小、中学校が一番土曜という曜日を謳歌していたのではないだろうか。

 特に中学時代は、昼から夕方にかけて人と遊び、夜はドラマや映画を観て、そこからゲームをやり、オンエアバトル、ブラックワイドショー、ランク王国、ワールドプロレスリングを観て寝ると、兎に角エンジョイしまくっていた記憶しかないのだ。

 とはいえ、あの時はおれも子供で、目に写ったものすべてが瑞々しく新鮮に映って楽しくて仕方なかったのだろう。だが、現在は、といえばそんな新しいものとの出会いなんて殆どなく、灰色の土曜日を過ごすことが多くなった。

 まぁ、社会人になってからも、土曜はジムにいくなり、芝居の稽古なり、飲み会なりで時間を持て余すこともなかったんだが、それらも今の情勢を考えると、どうにも気が引けてしまうし、しようとも思えない。

 今は耐えるしかないーーと、そんなカッコよさげなことをいっても仕方がないんで、昔あったとある土曜日のことについて書きますわ。

 中学二年の時のことだ。その頃は、wifiなんて技術は欠片もなく、ISDNやADSLといった回線が主流で、パソコンの処理能力も壊滅的だったんだが、うちは残念なことにそれすらない、電話回線経由の費用嵩みまくりな設定でインターネットに接続していたのだ。

 まぁ、当時の電話代が如何なものだったかは流石に覚えてないのだけど、多分相当に酷かっただろう。それはさておき、そんな毎回インターネットに繋いで何をやっていたのかといわれると、それは色々だった。

 例を挙げるなら、お絵かき掲示板で絵を描いたり、自分のホームページを弄くり回したり、贔屓のサイトを覗いたりと色々だったのだが、中でも特に時間を費やしていたのが、某サイトでのチャットだったりする。

 まぁ、どこのサイトかわかってしまうのを前提で書くけど、当時は『ヒカルの碁』が流行っていたこともあって、ネットでコミュニティ内の人間と碁の対局ができるサイトがそれなりにあったのだ。

 おれはその中のとあるサイトに、友人たちと入り浸っては、チャットを楽しんでいたのだけど、実のことをいうとーー

 おれ、碁は打てないんだわ。

 じゃあ何で碁のサイトに居座ってたんだよ、といわれると、単純に友人とチャットで話したかったのと、顔も知らない誰かとオンライン上で交流してみたかったというのが主な理由。

ただ、『ヒカルの碁』全盛の時期ということもあって、アクセスするのは小、中学生が多く、中々のおバカさんもいたりして、それはそれで面白いことが多かったのだ。

 まぁ、おバカさんは、おれも例外ではなかったのだけど。というのもーー

 おれも結構な荒らし屋だったのだ。

 まぁ、もう昔の話だし、そのサイトも残っていないので時効的な感じで話すけど、おれは結構悪質な荒らしだったのだ。

 とはいえ、自分から何処かの対局にいって荒らすということはせず、どちらかというと、自分に絡んできたヤツや明らかに可笑しなヤツと相手はかなり選んでいた。

 まぁ、とはいえ、自分のメインのアカウントでは一切荒らすことなく、ちゃんと荒らし専用のアカウントを持っていて、それを使っていたのだ。その名前はーー

 康子先生の名前だったりする。

 康子先生といえば、小野寺先生のホームページの回に名前が出てきた中年の教員で、どういうワケか生徒たちからの評判がすこぶる悪かった人なのだけど、それに便乗しておれもネットでの荒らし用のアカウント名を「康子」にしていたのだ。具体的な理由?ーー覚えてない。

 ただ、おれ自身は康子先生のことを悪くは思っておらず、当時はただ単に色んな人をネタにしたくて堪らなかったのだ。まぁ、まさに中二病だったんだろうな。

 とまぁ、「康子」なんて名前を使っているとーー更には自己紹介の欄に「教師です」とか書いてあると、それこそ変なのがメッセージを送りまくってくるのだ。例えばーー

「(電話番号)←ここに電話して話そうよ!」

 や、

「女教師を調教したいな♪」

 や、

「おれの女になれよ」

 と、囲碁とはまったく関係ない、完全に出会い系サイトと勘違いしているような煩悩に満ちたメッセージが次々と舞い込んでくるのだ。

まぁ、とにかく気持ち悪いのだけど、そういう連中を返り討ちにするのが、楽しくて仕方なかったのだ。まッ!ーー性格の悪いことッ!

 そんなこともあって、そういった煩悩まみれのメッセージにおれもちゃんと返信することにしていたのだ。こんな風にーー

「あ? テメエみてえな変態、相手にしてる暇はねぇんだよ。失せろ」

 女の名前で、しかも教師というプロフィールにはおおよそ相応しくないことば使いに、出会い目的の変態はどうも辟易とするらしく、大抵はそこで話は終わるのだ。

 ちなみに、この感じは当時自分がハマっていた『ギルティギア』のキャラクターが元ネタだったのだけど、改めて考えると、自分が描いていたイメージと全然違うしゃべり方をしてきた相手ってシンプルに怖いよな。

 まぁ、そのアカウントは他にも自分と友人が作った部屋に入ってきた可笑しなヤツにケンカを売ったりと、案外役に立ってはいたのだけど、ある時、こんなメッセージが届いたのだ。

「教師なんですか?」

 もはや、プロフィールに書いてあるだろって話なんだけど、唐突にそんなことを訊いてきたもんだから間違いなく出会い目的の変態だと思って、こんな感じで返信したのだーー

「だったら何だってんだよ」

 いきなりのケンカ腰に、相手も困惑したと思うのだけど、そのメッセージを送って少しして、こんなメッセージがきたのだ。

「何ですか、その話し方は。教師とは思えませんね」

 いや、教師じゃないからな。とまぁ、そんな感じで、

「だったら何だって訊いてんだよ!」

 と返信したのだ。もはや教師かどうか以前に、完全に正気を失ってる人というか、単純に精神不安定な人としかいいようのないメッセージなんだけど、相手はーー

「あなたの学校に通報します。勤務先の学校と電話番号を教えなさい」

 ……ん?

 これには流石の康子も困惑してしまいまして。これはどういう意味合いでいっているのだろうと思わず首を傾げてしまったのだ。これ、おれが教師に成り済ましてるガキとしていっているのか、果たして……。

「あ? その前にテメエの自己紹介が先なんじゃねえか?」

 口調は強気ですが、この時点でかなり困惑していまして。少しして返信がきたんだけど、

「いいから、アナタの勤務先の学校と電話番号を教えなさい!」

 もしかして、おれが本物の教師だと思ってる?

 まさかとは思ったが、どうもこのメッセージの相手はおれを本物の「康子」で本物の「教師」だと思っているらしい。どう考えたら、おれが本物の教師だと思えるのだろうか。

 とまぁ、そこから話す話さないの押し問答となって、突然相手が「教師たるもの~」と説教を始めたのだ。そうーー

 完全におれを教師だと思ってやがったのだ。

 いやいや、普通に考えて、教師が自分の名前と身分を明かしてネットワーク上で荒らしなんかするわけないだろうに。世の中、変なのがいるもんだ。

 結局、教師がどうのという説教が続き、埒があかなくなったので、教師じゃないとカミングアウトしたのだけど、今度はーー

「そんなことはない! 今更ウソをついたって無駄だぞ!」

 何かもう、何がウソで何が本当なのか自分でもわからなくなりまして。流石の康子もギブアップ。そのまま静かにチャットを後にしたのです。多分、そのサイトにおける最初で最後の敗北だったと思うーー囲碁も含めてな。

 土曜の夜は人を可笑しくする。

 間違ってもメッセージ欄に、「勤務先と電話番号を教えなさいッ!」何て書き込まないでくれよな。康子先生が再登場しちゃうぞ!

 うん、本当にやめてな。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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