【夜闇にまぎれて~伍~】

文字数 1,050文字

 大神神社に辿りついた時には四時十五分を回っていた。

 いくら静まり返ったエリアとはいえ、神社ともなれば初詣のために人も集まるらしい。少し前までは初詣も自重して下さいと勧告が出ていたが、ここまでくると流石にそんなモノはどうでもいいらしかった。

 大神神社はおれの実家からちょっと歩いたところにある。エリア的には実家の圏内にあって、すぐ真横には公民館、そしてその横にはおれの通っていた小学校がある。神社とはいうが、規模自体は大きくなく、むしろ小さい部類だろう。

 だが、地元の人間は結構初詣の場所をここにするらしく、一月一日の夜中から早朝にかけてはまぁまぁな混み様を見せる。この時の混み様も案の定といった感じだった。

 賽銭箱へと続く道にはなかなかの行列が出来ていた。その端では地区の剣道連盟が子供による乱取り稽古を披露していた。自治会の名前を冠にしたいくつかのテントでは、甘酒やおしるこ、開運のお守りやおみくじが売られていた。久しぶりにおみくじでも買ってみるか。ふとそう思い、おれはテントに立ち寄っると、おみくじを買い、開いた。

 末吉だった。

 まぁ、こんなモンだろう。別に大吉だとか結構な運勢など求めていなかった。

「あら、末吉かぁ」販売員のオジサンがいった。「まぁ、でも気を落としなさんな。運がないよかあるほうがずっとマシだし、何より年の始めにそれなら、あとは昇るばかりなんだからさ」

 おみくじの結果にショックを受けていたとでも思われたのだろうか。正直、どうでも良かったのだが、そういう風に声を掛けて貰えるのはありがたかった。確かに凶を引いて運がまったくないことを見せつけられるよりは、多少でも運があるほうがいいのかもしれない。ギャンブルでは中途半端にツいている半ヅキというのが一番良くないとはいうが、これはギャンブルではない。

 おれはオジサンのことばに同調し、礼をいってテントから去った。さて、お次はーー

「あれ、山田じゃん」

 ふと声を掛けられて振り向くと、そこには懐かしい顔。小、中学の同級生が数人いた。みな、三十代もなかばということもあって、ちょっと太ったような気がした。まぁ、おれがいえたことではないけど。

「いやぁ、久しぶりだなぁ。今日は外山は一緒じゃねえのかよ?」

 おれは一緒じゃないと答えた。多分、今頃アイツは酒を大量に喰らって夢の中だろう。しかし、これはこれで悪くはない。ノスタルジアに包まれて新年を迎えるというのも、なかなか乙なモノかもしれない。

 久しぶりに柔らかい笑みを浮かべられた。

 【完】
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み