【ナナフシギ~参拾玖~】
文字数 1,162文字
見覚えがある光景。
だが、そこが自分の知っている場所ではないと聴かされて混乱しない者はいないだろう。まず疑う。というよりかは信じられないはずだ。何故ならそこに広がっている光景は自分が毎日のように見ているモノなのだから。
「何いってんだよ......」
清水は案の定信じられないといった様子だった。それも当たり前だろう。いくら小学生とはいえ、高学年ともなればそこら辺の分別はつくようになっているのが殆どだ。だが、岩渕は笑みを崩すことなくいった。
「何をいっているんだろうねぇ?」
完全に人を小馬鹿にしたような口調。岩渕が何を考えているかなど、誰にもわからない。それは彼に近い所にいる祐太朗と詩織も同様だろう。そして、その人をナメ腐ったようなモノいいに清水も反応を示した。
「お前、何なんだよ!」
「何って、それはこちらが訊きたいところです。キミは一体、こんなところで何をしているのかな?」
柔らかくも冷たさのあることば。そのことばが清水を心配したモノではないのは明らかだった。が、清水も戸惑いの様子を見せた。当たり前だ。そもそも、夜の学校に忍び込んでいる時点で問題しかない。ましてや、岩渕は一見して用務員や警備の人間としても通用してしまうような見た目をしているのだから清水だってギクリともするだろう。
「何で、ここに、いるんだい?」
まるで小さな子供にいい聞かすように岩渕はゆっくりと丁寧に、かつ朗らかにことばことばを区切りながらいった。清水は完全に黙り込んでしまっていた。岩渕はゆっくりと清水の傍へ行った。かと思えば、清水と同程度の目線になるように静かに屈んだ。瞬間的に岩渕が清水の肩に手を掛けた。ハッとする清水。清水の顔が歪んで行った。肩に掛けられた岩渕の手ーー少しずつ力が加えられていた。だが、岩渕は笑顔のままだった。
「キミは、どうして、ここに、いるのかな?」
朗らかだが明らかに威圧的な口調だった。それもそうだろう、手には力が加えられているのだから。むしろ、岩渕の声に若干の緩さが残っているのが不思議なくらいだった。
清水が痛いと顔を歪めた。だが、岩渕は当たり前のように力を緩めたりはしなかった。
「いう、いうよ......ッ!」
殆ど消え入るような声で清水はいった。といった途端に力は緩められた。清水は大きく息をし、捕まれていた肩をさすり労った。
「で、どういうことなのかな?」
岩渕はまったく表情を変えることなくいった。清水は声を震わしながらいった。この学校にはナナフシギと呼ばれる都市伝説、怪談話があって、それを暴くために友人とともに翌日学校のない夏休みの前日に学校内に忍び込むことにしたといった。
「......なるほど。で、その友達というのに鈴木祐太朗もいるということでよろしいかな?」
岩渕の目が怪しく光った。
【続く】
だが、そこが自分の知っている場所ではないと聴かされて混乱しない者はいないだろう。まず疑う。というよりかは信じられないはずだ。何故ならそこに広がっている光景は自分が毎日のように見ているモノなのだから。
「何いってんだよ......」
清水は案の定信じられないといった様子だった。それも当たり前だろう。いくら小学生とはいえ、高学年ともなればそこら辺の分別はつくようになっているのが殆どだ。だが、岩渕は笑みを崩すことなくいった。
「何をいっているんだろうねぇ?」
完全に人を小馬鹿にしたような口調。岩渕が何を考えているかなど、誰にもわからない。それは彼に近い所にいる祐太朗と詩織も同様だろう。そして、その人をナメ腐ったようなモノいいに清水も反応を示した。
「お前、何なんだよ!」
「何って、それはこちらが訊きたいところです。キミは一体、こんなところで何をしているのかな?」
柔らかくも冷たさのあることば。そのことばが清水を心配したモノではないのは明らかだった。が、清水も戸惑いの様子を見せた。当たり前だ。そもそも、夜の学校に忍び込んでいる時点で問題しかない。ましてや、岩渕は一見して用務員や警備の人間としても通用してしまうような見た目をしているのだから清水だってギクリともするだろう。
「何で、ここに、いるんだい?」
まるで小さな子供にいい聞かすように岩渕はゆっくりと丁寧に、かつ朗らかにことばことばを区切りながらいった。清水は完全に黙り込んでしまっていた。岩渕はゆっくりと清水の傍へ行った。かと思えば、清水と同程度の目線になるように静かに屈んだ。瞬間的に岩渕が清水の肩に手を掛けた。ハッとする清水。清水の顔が歪んで行った。肩に掛けられた岩渕の手ーー少しずつ力が加えられていた。だが、岩渕は笑顔のままだった。
「キミは、どうして、ここに、いるのかな?」
朗らかだが明らかに威圧的な口調だった。それもそうだろう、手には力が加えられているのだから。むしろ、岩渕の声に若干の緩さが残っているのが不思議なくらいだった。
清水が痛いと顔を歪めた。だが、岩渕は当たり前のように力を緩めたりはしなかった。
「いう、いうよ......ッ!」
殆ど消え入るような声で清水はいった。といった途端に力は緩められた。清水は大きく息をし、捕まれていた肩をさすり労った。
「で、どういうことなのかな?」
岩渕はまったく表情を変えることなくいった。清水は声を震わしながらいった。この学校にはナナフシギと呼ばれる都市伝説、怪談話があって、それを暴くために友人とともに翌日学校のない夏休みの前日に学校内に忍び込むことにしたといった。
「......なるほど。で、その友達というのに鈴木祐太朗もいるということでよろしいかな?」
岩渕の目が怪しく光った。
【続く】