【ナナフシギ~睦拾漆~】
文字数 1,040文字
イヤな感じがするーーそれは気のせいではないことが多い。
中には気にしすぎだったり、ヒステリックなこともなくはないのだが、そういう傾向のない人が感じるイヤな感じというのは何かしらの要因がある。
ただ、そこにいるだけで気分が悪くなる。これも立派なイヤな感じである。そして、それは臭いだったり視覚的な不快感だったり、様々なことが原因になって起こるーー或いは霊障だったり。
「坊っちゃんのって......」清水はいった。「どういうことだよ?」
岩淵は説明し始めた。祐太朗の抱いている違和感、それは遊具のある一帯が大量の悪霊、それも子供の霊に覆われてしまっているということだった。そして、そこに入れなかったはぐれ者の悪霊たちが校庭のそこら中に点在していて、生きている人間のエネルギーを吸おうとしている、ということだった。
「じゃあ、この辺りは......」
「えぇ」岩淵は頷いた。「今は悪霊たちに囲まれています」
囲まれているーーそのひとことで清水はその場に尻餅をついてしまった。エミリはハッとしつつも、何処か気丈な態度を取って見せた。わずか数時間とはいえ、幽霊のいる空間にいることに慣れてしまったらしい。祐太朗はもはやそんな周りにいるであろう霊のことなどどうでもいいといわんばかりに、遊具のほうを眺めていた。
遊具の辺りはもはや黒いモヤが掛かったようになっていた。見えるのに見えづらい。禍々しい空気を纏い、それほどまでに霊障が酷くなっている様子だった。
次第に辺りから呻き声のようなモノが聴こえるようになっていた。祐太朗たちを取り巻く悪霊たちの声が大きくなっているようだった。そして、それらは霊感のないエミリや清水にも聴こえるようだった。
「うるさいですね」不敵な笑みを浮かべて岩淵はいった。「死に損ないの悪霊は地獄がお似合いです。おつかれさまでした」
岩淵は自分の両サイドに向けて腕を伸ばした。祐太朗はそれを見てハッとした。
「岩淵!」祐太朗の声に、周りは向き直った。「やめろ!」
「どうしたの?」
とエミリ。祐太朗はいった。
「この辺りの悪霊を全員徐霊するつもりだ!」
徐霊、そのことばを聴いてエミリと清水もハッとした。エミリは岩淵の腕を掴んだ。
「悪霊とはいっても、みんな子供なんでしょ? いくらここが現世じゃないっていっても、消しちゃうなんてかわいそうだよ!」
「離しなさい」
岩淵が冷酷にいい放っても、エミリは離すつもりはないようだった。それどころか、より強く岩淵の腕にしがみついた。
【続く】
中には気にしすぎだったり、ヒステリックなこともなくはないのだが、そういう傾向のない人が感じるイヤな感じというのは何かしらの要因がある。
ただ、そこにいるだけで気分が悪くなる。これも立派なイヤな感じである。そして、それは臭いだったり視覚的な不快感だったり、様々なことが原因になって起こるーー或いは霊障だったり。
「坊っちゃんのって......」清水はいった。「どういうことだよ?」
岩淵は説明し始めた。祐太朗の抱いている違和感、それは遊具のある一帯が大量の悪霊、それも子供の霊に覆われてしまっているということだった。そして、そこに入れなかったはぐれ者の悪霊たちが校庭のそこら中に点在していて、生きている人間のエネルギーを吸おうとしている、ということだった。
「じゃあ、この辺りは......」
「えぇ」岩淵は頷いた。「今は悪霊たちに囲まれています」
囲まれているーーそのひとことで清水はその場に尻餅をついてしまった。エミリはハッとしつつも、何処か気丈な態度を取って見せた。わずか数時間とはいえ、幽霊のいる空間にいることに慣れてしまったらしい。祐太朗はもはやそんな周りにいるであろう霊のことなどどうでもいいといわんばかりに、遊具のほうを眺めていた。
遊具の辺りはもはや黒いモヤが掛かったようになっていた。見えるのに見えづらい。禍々しい空気を纏い、それほどまでに霊障が酷くなっている様子だった。
次第に辺りから呻き声のようなモノが聴こえるようになっていた。祐太朗たちを取り巻く悪霊たちの声が大きくなっているようだった。そして、それらは霊感のないエミリや清水にも聴こえるようだった。
「うるさいですね」不敵な笑みを浮かべて岩淵はいった。「死に損ないの悪霊は地獄がお似合いです。おつかれさまでした」
岩淵は自分の両サイドに向けて腕を伸ばした。祐太朗はそれを見てハッとした。
「岩淵!」祐太朗の声に、周りは向き直った。「やめろ!」
「どうしたの?」
とエミリ。祐太朗はいった。
「この辺りの悪霊を全員徐霊するつもりだ!」
徐霊、そのことばを聴いてエミリと清水もハッとした。エミリは岩淵の腕を掴んだ。
「悪霊とはいっても、みんな子供なんでしょ? いくらここが現世じゃないっていっても、消しちゃうなんてかわいそうだよ!」
「離しなさい」
岩淵が冷酷にいい放っても、エミリは離すつもりはないようだった。それどころか、より強く岩淵の腕にしがみついた。
【続く】