【冷たい墓石で鬼は泣く~漆拾弐~】

文字数 568文字

 野武士相手ならある程度はどうにかなるーー少なくともわたしはそう思っていた。

 流石に三人以上をいっぺんに相手しなければならないとなると大変なのはいうまでもないが、百姓から作物を奪わなければならないほど困窮していることを考えると、相手もさほど大したことはないだろうというのが本音だった。

 そもそも、粗末なモノばかり口にしていれば体力も落ちていくし、まともに頭も回らなくなっていく。もちろん、ここの百姓たちが作った作物が粗末だとはいわないが、ちゃんと食材を調理出来る人間がいるとするならば、むしろそういった者が別の場所で材料を調達してくるはずだ。

 話を聴いた限りでは敵の野武士は五人ほどらしい。五人の野武士となると、それなりの量がないと腹には貯まらないだろう。下手すれば頭が殆ど持っていき、他のヤツラは飢餓状態なんてことも当たり前に考えられる。その場合、気にすべきは頭だけで、他の連中は戦力にならないだろう。

 わたしは麦飯を口に入れながら考えた。彼らはどうしてそんなことになってしまったのだろうか。五人の野武士ーー何処かの御家に仕えていたが、何かしらの事情で御家は取り潰され、路頭に迷った者たちは野盗にならざるを得なくなった。そういうことだろうか。

 だとしたら、今のわたしと何も変わりはない。野武士たちのことが頭から離れなかった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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