【一年三組の皇帝~伍拾死~】
文字数 575文字
翌朝、教室に入ると妙な圧迫感を感じた。
別に教室内はいつも通りだ。みんな、各々いつものグループで固まって雑談している。ぼくが入室したからといって視線がこっちに集中するというワケでもない。
ただ、何かが重苦しかった。その正体が何なのかはわからなかった。ひとつ思ったのは、この重苦しさは、自分自身で作り出した幻想なのかもしれないということ。そうとでも思わないと自分を納得させることが出来なかった。
「シンちゃん」声のしたほうーーハルナがいた。「おはよう」
努めて元気に見せようとするような明るい声に笑顔だった。それで救われたといえば救われたし、ある種の緊張感も生んだ。彼女もぼくのことをかなり気遣ってくれているのだろう。そして、これからぼくがやらなきゃいけないことも。
右肩を叩かれて振り向いた。突如、右頬に何かが突き刺さった。人差し指だった。痛い。
「何だよ」
ぼくは不満を全開にしていった。辻だった。険しい顔をしているようにも見えるが、どことなく笑いを堪えているようにも見えるのが何とも憎たらしかった。
「長谷川が呼んでる」
「え?」呆気に取られた。「......あぁ、ありがとう」
ぼくは取り敢えず教室に入ってカバンを置こうとした。と、またもや辻に肩を叩かれ。
「行かねえのか?」
「カバン置くんだよ」
「......そうか」
何だか様子が変だった。
【続く】
別に教室内はいつも通りだ。みんな、各々いつものグループで固まって雑談している。ぼくが入室したからといって視線がこっちに集中するというワケでもない。
ただ、何かが重苦しかった。その正体が何なのかはわからなかった。ひとつ思ったのは、この重苦しさは、自分自身で作り出した幻想なのかもしれないということ。そうとでも思わないと自分を納得させることが出来なかった。
「シンちゃん」声のしたほうーーハルナがいた。「おはよう」
努めて元気に見せようとするような明るい声に笑顔だった。それで救われたといえば救われたし、ある種の緊張感も生んだ。彼女もぼくのことをかなり気遣ってくれているのだろう。そして、これからぼくがやらなきゃいけないことも。
右肩を叩かれて振り向いた。突如、右頬に何かが突き刺さった。人差し指だった。痛い。
「何だよ」
ぼくは不満を全開にしていった。辻だった。険しい顔をしているようにも見えるが、どことなく笑いを堪えているようにも見えるのが何とも憎たらしかった。
「長谷川が呼んでる」
「え?」呆気に取られた。「......あぁ、ありがとう」
ぼくは取り敢えず教室に入ってカバンを置こうとした。と、またもや辻に肩を叩かれ。
「行かねえのか?」
「カバン置くんだよ」
「......そうか」
何だか様子が変だった。
【続く】