【一年三組の皇帝~弐~】

文字数 1,037文字

 ヘビに睨まれたカエルということばがある。

 いってしまえば、天敵に睨みつけられて震えて動けないみたいな意味なのだけど、今のぼくがまさにそんな感じだった。

 ぼくを睨みつけている女子は結構大きかった。体型はモデルのようにスレンダーで、スカートから飛び出た脚は竹のように長い。おまけに身長も165あるぼくとほとんど変わらない。多分、多少大きいか小さいかだろう。

 容姿は端麗。つり上がり気味の目はネコのように大きく、掘りが深くて鼻は高い。唇は薄く、口の大きさは両方の黒目に掛かるくらい。髪型は黒のショートボブ。モデルをやっているといわれても可笑しくない。

 しかし、普通ならそんなキレイな女子に話し掛けられれば嬉しい限りなのにそう思えないのは、紛れもなくこの女子の声色というか、勢いが激しいからだろう。こんな迫力のある因縁をつける人は、女子はもちろん男子でも見たことがない。

「で、何してんの?」モデル女子がいった。

 何してる、そういわれて答えられることなどあるワケがーーいや、それどころでは。

「あ、いや、あのーー」

 いい掛けて気づいてしまった。教室内で繰り広げられていることばによるリンチ。もしかしたら、この女子もその一味かもしれない。そう考えたら、ことばは自然と闇の中へと飲み込まれていった。

 突然、モデル女子に肩口を掴まれた。

「ちょっと来な」

 そういってぼくを引っ張っていくモデル女子。ぼくは抵抗しようとした。が、見えてしまった。教室内の目線がぼくのほうへと注がれている。

 見つかった。

 終わった。万事休すとはこのことだろう。数週間前は辻たちに殴られ、かと思いきや今度は女子たちにリンチされることになるとは。ぼくの中学生活、暴力まみれだな。

 ぼくは、離せよとモデル女子の手を振り払った。が、モデル女子はさらにぼくの腕を掴むと、顔を思い切り近づけてガンを飛ばしてきた。

「いいから、何をしてたのか説明して貰おうか」

 こうなれば自棄だ。ぼくは覚悟を決めた。

「この教室の中でイジメがあったんだよ」

「はぁ?」モデル女子は呆気に取られたようにいった。「イジメ?」

「そうだよ。ひとりを何人かで囲んで、それでーー」

 教室のドアが開く音がした。そしてーー

「いずみー、どーかしたのー?」

 教室内にいた女子のひとりがそう声を掛けて来た。その緊張感のない声色は逆にそのイジメの残虐さを引き立てていた。

 もう完全に逃げられない。こうなれば敵地へと乗り込んで行くしかない。

 ぼくは大きく息を吐いた。

 【続く】

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み