【There’s two sides to every story】

文字数 2,955文字

 景色がガラッと変わることがある。

 これは比喩的な話だけど、ただ、景色の見え方が変わることは案外多かったりする。

走ってばかりいると、周りの景色なんて全然見えない。せわしく生きていると、世の中がギスギスして見える。ただ、進むスピードが変わるだけでも景色の見え方は全然変わるし、ひと皮剥けた後は、これまで見ていたものも、また違って見える。

 さて、体育祭篇、最終回です。前回のあらすじーー「モゴモゴがやらかした」

 もうね、モゴモゴは戦犯だと思うわ。別に誰のせいで負けたか議論するのは、ナンセンスだと思うけど、最後のスピーチに関しては間違いなく戦犯はこの男だろう。てか、人のスピーチの掴みをパクって滑るなよ。おれが滑ったみたいじゃんか。

 さて、今日はその続き、完結篇であるーー

 終わったーーすべてが終わった。おれはホッと胸を撫で下ろし、外山、キャナ、TKとともに教室へと帰った。教室にて片付けを終え、ホームルームが始まる。が、その内容はおれの耳には入らない。おれはやり切った。その達成感がおれの胸をスーッとさせる。

 ホームルームが終わるとシーサーと金田がクラスの全員に聴こえるようにアナウンスする。

「打ち上げはーー時に、ーーで行うので時間に間に合うように来て下さい!」

 打ち上げ、か。さぞ、盛り上がることでしょうな。まぁ、今考えれば、中学生の打ち上げって、酒も飲めないし、会場もファミレスだしで、ただの会食じゃないかって気もするんだけどーー汚れた大人ですな。

 おれはアナウンスを聴きつつ、カバンを背負って教室を後にしようとした。すると、シーサーと金田に呼び止められた。

「五条くん、打ち上げ来るよね?」

 普通に考えたら、いくのが常道だろう。まぁ、しかし、相手は五条氏。おれはいったーー

「ごめん。おれはいけんわ」

 シンプルに断った。理由?ーー単純に塾で勉強しなきゃだから。今日くらいはいいだろうといわれるかもしれないが、そうではない。体育祭が終わった時点で、おれは応援団長ではない。魔法は解けた。今からは単なる受験生だ。おれには、遊んでいる時間はなかった。それにおれの感動はおれだけのものだった。それを誰かと共有するには、まだ早すぎたのだ。

そしたら、金田にいわれたんですなーー

「もしかして、また塾……?」

 バレバレじゃんか。とはいっても、これはバレてたワケではなく、その当時通っていた塾が他のところと比べて勉強熱心なところだったこともあって、色々とウワサになることが多かったのだ。どんなウワサ?ーーこういう時に塾へいくんだろっていわれるようなことだよ。

 図星をつかれて流石におれも困惑しそうになったんですが、ここは応援団長の経験で磨かれたアドリブ力がシンプルに役に立ったのだ。

「いやぁ……、実は母親が入院してて、見舞いにいかなきゃならないんだ……」

 まぁ、何とも親孝行な息子さん、と涙なしでは語れないような話ではあるんだがね、

 これ、ウソだからな。

 塾へいくために身内を入院させて、恥ずかしくないのかって話ですがね、実をいえばこの時期、母は本当に入院していたんです。子宮に腫瘍があって、子宮そのものを摘出するって手術もしたし、摘出した子宮の写真も見たしな。だからウソでありながら、半分は本当なんで、説得力はかなりあったはず、なのだ。

 まぁ、体育祭の一週間前には退院してたんだけど。

 もっといえば、体育祭観に来てたんだけど。

 こういうと、とてつもなくガバガバなウソである。ちなみに、母は今でも元気にヤンチャな猫の世話をしていますわ。

 まぁ、結局、打ち上げにもいかず、その日も勉強して終わったのだけど、ここからが、アフターストーリーになりますな。

 その後は、応援団長だった事実も霞のように消え、普通の生活に戻ったのだけど、そんな中、あっちゃんはーー

「お前の団、負けたなぁ、うけけけけ」

 とか煽ってきました。マジで武装した五〇〇人のヤクザにリンチされろ。

 シーサーと金田とは、体育祭後は普通のクラスメイトとして接した感じ。というか、それいったら、岡原、柳沢、TKもそうなんだけどね。ちなみに、彼女たちとは、中学卒業以来、会っていない。昨年末に学年全体の同窓会があったんだけど、いかなかったから、結局会うこともなかったしな。ちなみに、黄団の応援団員男子は誰も同窓会に出なかった模様ーーすげえな。

 麦藁は塾で一緒で、一度すごい揉めたんだけど、それ以降何ともなく。あと受験が近づくにつれ受験への意識が低下して、塾でしょっちゅう怒られてたのは覚えてる。中学卒業後は一度会ったきりだけど、同じ高校に通っていた人の話だと、「おれは成績上位者だッ!」みたいなしょーもないウソをついてイジメられていたらしい。そんなバレバレなウソつくなよ。

 外山とキャナとは、今でも付き合いがある。このふたりと健太郎くんのことに関しては、また別の機会に書こうかな。ちなみに外山とは今夜飲んでくるわ。

 さて、その他のメンツでいくと、ブタさんかな。中三の終わり辺りでブタさんの横暴にブチギレた五条氏はとうとういうことを聞かなくなった。とはいえ、大学時代、たまたま実家に帰った時に体育祭をやっていまして、そこで再会しましたわ。まぁ、今でも元気でしょうよ。

 芹沢くんやその友達の男子とは、廊下で擦れ違う度に話をする仲に。芹沢くんは、確か三年生になって団長をやってたと思う。現在はどうしているかわからないけど、きっと上手くやってると思う。いいヤツだったからな。

 最後に小田さんかな。おれの家の隣にひとつ下の代で生徒会長となる子が住んでいたんだけど、ある日、彼からこんなメールがきたのだ。

「たっちゃん、小田がアドレス教えて欲しいだって。教えて大丈夫?」

 ほほうと思いつつ、おれはそれを承認したんよね。で、まぁ、それから小田さんとメールのやり取りを色々としたんだけど、それ以外は特に、って感じだった。塾で会って話はしていたし、仲は悪くはなかったんだけどね。

 それからも特に何もなく、高校二年になってからは、通っている学校の関係で同じ電車に乗ることもあったんだけど、特に話すこともなく。で、昨年、ひとつ下の後輩で、小中高と同じ学校だった友人と飲んだ時に、

「そういや、小田が結婚したってさ」

 と聞いて、結婚したんだ、と少し感慨深くなったのだった。特に何かあったワケではないけど、何か印象深い子だったんよな。

 あと、「え、お前が団長なの?」といってきた他団の団長だけど、三年生を送る会の応援団長のスピーチでだだ滑りしてました。今では、彼の新築の家の前をよく通るんで、結構な確率で擦れ違いますわ。子供もできて幸せなようなんで何より。

 さて、長かった体育祭篇もこれにて終わり。明日から何書こうか、少し考えんとな。

 んじゃ。

【追伸】

 今週中に上げるといってた『ミス・ラストスタンド』だけど、もしかしたら、日曜の八時、最悪でも月曜の八時には上げますわ。色々と手間取ってしまってね。申し訳ない。
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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