【ナナフシギ~拾漆~】
文字数 1,091文字
夜は霧をまとったように白く深かった。
あの世とこの世、その狭間がここにある。といっても、一見してそんな風には見えはしない。何処からどう見ても、そこに広がるは夜の学校ばかり。
「何でお前なんかと」弓永は悪態をつく。
「知るかよ。おれだってお前なんかと一緒なんてイヤだわ」森永。
理科室での一件以降、四人はふた手に分かれることとなった。非常にリスクのデカイ決断ではあったが、時間もそう多く残されているワケではない。だとしたら、可能な限りの項目をクリアしてしまったほうがいい。
祐太朗とエミリは三階の音楽室へ向かった。プラス、男女を問わずトイレの探索を重点的に行うこととなった。対する弓永と森永は家庭科室と職員室を探すことになった。現在は二階廊下、職員室へと向かっている。
ちなみにまだ体育館が残っているのだが、それは最後、全員揃って向かうこととなった。というのも、祐太朗がこんなことをいったのだ。
「体育館は......、ひとりじゃダメだ。霊力がヤバすぎる」
霊感のある人間がそういうのなら、説得力は十二分にあったのはいうまでもなかった。結局、それに反論するモノはいなかった。
「でもよ、お前、信じてるのかよ」森永が弓永に訊ねる。
「何が?」
「鈴木が幽霊見えるって話」
「......あぁ」弓永は意味深に相槌を打つ。「正直、おれも信じてなかった」
「でも、今は信じてる?」
「......こんな非現実的なことあってたまるかって感じだけど、でも色々見ちゃったしな。お前もそうじゃないのか?」
「まぁな。でも、おれらふたりでどうにかなるモンなんかな」
「......そうだな」
そういって弓永はポケットから紙切れを一枚取り出して眺める。一見して何が書いてあるかわからない、凡語のようなうねりを持った模様が描かれている。
「それ、本当だと思う?」森永。
「......信じるしかないだろ」
この紙切れは祐太朗に渡されたモノだった。紙に書かれた模様は祐太朗が書いたモノで、そこには祐太朗の持つ霊力が込められており、悪霊を取り除くための徐霊能力を秘めている。すなわち簡易的なお札ということになる。
「でも、それ、どうやって使うんだろうな」
「それは、まぁ......」
見当なんてつくわけがない。お札だから貼って何とかするか。しかし、相手は実体を持たない幽霊だ。貼るというのは物理的にも無理がある。だとしたら、
「待てッ......」弓永は足を止め囁いた。
森永は足を止めつつ普通の音量で、
「どうした?」
「静かにしろ......ッ!」強く呟く弓永。
静寂が響き渡る。そして、その静寂の先にはーー
足音が響いていた。
【続く】
あの世とこの世、その狭間がここにある。といっても、一見してそんな風には見えはしない。何処からどう見ても、そこに広がるは夜の学校ばかり。
「何でお前なんかと」弓永は悪態をつく。
「知るかよ。おれだってお前なんかと一緒なんてイヤだわ」森永。
理科室での一件以降、四人はふた手に分かれることとなった。非常にリスクのデカイ決断ではあったが、時間もそう多く残されているワケではない。だとしたら、可能な限りの項目をクリアしてしまったほうがいい。
祐太朗とエミリは三階の音楽室へ向かった。プラス、男女を問わずトイレの探索を重点的に行うこととなった。対する弓永と森永は家庭科室と職員室を探すことになった。現在は二階廊下、職員室へと向かっている。
ちなみにまだ体育館が残っているのだが、それは最後、全員揃って向かうこととなった。というのも、祐太朗がこんなことをいったのだ。
「体育館は......、ひとりじゃダメだ。霊力がヤバすぎる」
霊感のある人間がそういうのなら、説得力は十二分にあったのはいうまでもなかった。結局、それに反論するモノはいなかった。
「でもよ、お前、信じてるのかよ」森永が弓永に訊ねる。
「何が?」
「鈴木が幽霊見えるって話」
「......あぁ」弓永は意味深に相槌を打つ。「正直、おれも信じてなかった」
「でも、今は信じてる?」
「......こんな非現実的なことあってたまるかって感じだけど、でも色々見ちゃったしな。お前もそうじゃないのか?」
「まぁな。でも、おれらふたりでどうにかなるモンなんかな」
「......そうだな」
そういって弓永はポケットから紙切れを一枚取り出して眺める。一見して何が書いてあるかわからない、凡語のようなうねりを持った模様が描かれている。
「それ、本当だと思う?」森永。
「......信じるしかないだろ」
この紙切れは祐太朗に渡されたモノだった。紙に書かれた模様は祐太朗が書いたモノで、そこには祐太朗の持つ霊力が込められており、悪霊を取り除くための徐霊能力を秘めている。すなわち簡易的なお札ということになる。
「でも、それ、どうやって使うんだろうな」
「それは、まぁ......」
見当なんてつくわけがない。お札だから貼って何とかするか。しかし、相手は実体を持たない幽霊だ。貼るというのは物理的にも無理がある。だとしたら、
「待てッ......」弓永は足を止め囁いた。
森永は足を止めつつ普通の音量で、
「どうした?」
「静かにしろ......ッ!」強く呟く弓永。
静寂が響き渡る。そして、その静寂の先にはーー
足音が響いていた。
【続く】