【冷たい墓石で鬼は泣く~漆拾伍~】
文字数 529文字
櫓は思いの外高かった。
梯子を下るにしても、かじかんだ手のせいで中々降りられなかった。何より邪魔だったのは他でもない刀だった。
元々、身体がよく動くほうではないが、寒さで感覚が可笑しくなっている分、余計に動きが悪くなっていた。しかし、アレが村人のいう野武士だというのだろうか。いや、これは偶然か。不意に起きた出来事だったのか。
いや、どちらにせよヤツラが侵入して来ることは想定していなかったこと。しかも、下手したらこれは相手が野武士よりもタチが悪いかもしれない。それに、これは野武士数人を相手にするよりも手強いだろう。
わたしの白い息が跳ね返って顔に掛かった。気持ちの悪い温かさだった。冷えきった身体に唐突に熱が甦って来る。息が荒くなる。乱れる。刀が梯子に当たって音を立てる。うるさい。下を見た。わたしは改めて何もいわずに急いで梯子を降りた。
梯子を降り切ると、わたしは村の中央へと走った。ずっと寒いところに座っていたせいで身体が硬直していた。マズイと思った。
立ち止まった。相手に目を見据えた。1、2、3......、結構な数の敵がいる。ギラッと光るたくさんの目にわたしは身を引きそうになった。その頭にいたヤツと目が合った。
オオカミの頭にーー
【続く】
梯子を下るにしても、かじかんだ手のせいで中々降りられなかった。何より邪魔だったのは他でもない刀だった。
元々、身体がよく動くほうではないが、寒さで感覚が可笑しくなっている分、余計に動きが悪くなっていた。しかし、アレが村人のいう野武士だというのだろうか。いや、これは偶然か。不意に起きた出来事だったのか。
いや、どちらにせよヤツラが侵入して来ることは想定していなかったこと。しかも、下手したらこれは相手が野武士よりもタチが悪いかもしれない。それに、これは野武士数人を相手にするよりも手強いだろう。
わたしの白い息が跳ね返って顔に掛かった。気持ちの悪い温かさだった。冷えきった身体に唐突に熱が甦って来る。息が荒くなる。乱れる。刀が梯子に当たって音を立てる。うるさい。下を見た。わたしは改めて何もいわずに急いで梯子を降りた。
梯子を降り切ると、わたしは村の中央へと走った。ずっと寒いところに座っていたせいで身体が硬直していた。マズイと思った。
立ち止まった。相手に目を見据えた。1、2、3......、結構な数の敵がいる。ギラッと光るたくさんの目にわたしは身を引きそうになった。その頭にいたヤツと目が合った。
オオカミの頭にーー
【続く】