【特技の原点は修羅の道】
文字数 2,816文字
特技は何?と訊かれてアナタは何と答えるだろうか。
大概の人は首を捻ってしまうかもしれない。というのも、この「特技」というのが、カテゴリーとしてかなり曖昧なモノだからだ。
特技ーー辞書によると「特別な技能」とある。
また、ある記述によれば、他者よりも優れている技術とある。
となるとかなり選ぶのが難しくなる。
というのも、「自分が『特技』と呼べるほど、それを極めているのか」と考えた時、一歩引いてしまう人が多いだろうからだ。
確かに、自分の技能に対し謙遜するのは悪いことではないし、「特技」と称した割に大したことがなかったとなれば、これほど恥ずかしいことはない。
加えていえば、「専門性の強い場所で、その専門分野を特技と称することをよしとするか」という問題もある。
これは簡単にいえば、こういったサイトで「特技は文章を書くことです」と宣言するようなことだ。
変な話、こういったサイトでシナリオをはじめ、その他文章を書くのは、表現したいことがあるからという理由もあるだろうが、やはり、書き手の潜在意識の中で、「自分には文章を書く力がある」と信じているからだと思う。
変な話、おれも自分で自分の文章を「駄文」だとか、「三流」だとかいっているが、何だかんだで、そこら辺の人よりは文章が書けるほうなのではないかとは思っている。まぁ、こういったサイトでは底辺も底辺なんだろうけど。
とはいえ、そういったコミュニティの中で「特技は文章を書くことです」と称するのはかなりリスキーだ。
何故なら、ある意味それは「当たり前のこと」だからだ。
ある専門性を持ったコミュニティや組織で、その専門分野を「特技」とするのは野暮、というか当たり前のこと過ぎて逆に「特技じゃなかったら何なのか」ということになってしまう。
とまぁ、ここらの話は個人によって意見はまちまちだろう。おれも自分の意見が絶対とは思わないしな。この話はここらで切り上げるわ。
さて、こんな風に特技に関して話して来たワケだけど、かくいうおれにとっての特技は何かといわれたら、それは恐らく「居合」になるのではないかと思うのだ。
おれとしても慢心はしたくないし、自分でもまだまだ未熟だと思っているから特技と称するには抵抗があるのだけど、敢えて特技は何かと定めるなら、居合ぐらいしかないだろう。一応段持ちだし、大会でも二度入賞してるしな。
さて、そんな感じで前置きが長くなったけど、今日こそは『居合篇』の続きを書いていくわ。とりあえず、あらすじーー
『ブラストに嫌気が差した五条氏は、市民体育館にて見つけた居合の道場のチラシを頼りに、居合の体験に出向いた。そこで出会ったのは、後に良き仲間となる「臼田さん」と、良き師匠となる「坂久保先生」だった』
とこんな感じだな。さて、書いてくわーー
着替えを済ませて稽古場である剣道場に入ると、坂久保さんから居合刀をお借りした。長さは二尺三寸五分、おれが扱うには短いかもしれないとのことだった。
袴の下に巻いた帯の下から二枚目に、刀を差す。不思議といい気分。多分、ちゃんとした刀ーー模造刀とはいえーーを差したのは初めての経験だったからだろう。
これまで殺陣で差していたのは鞘なしの木刀だったこともあって、そこまで気分は乗らなかったが、やはり居合刀を帯刀すると気が引き締まる。
試しに鞘から刀を抜いてみると、刀身の輝きに思わずこころを奪われてしまった。真剣とは違うとはいえ、模造刀でも感覚は全然違った。
坂久保さんの号令で稽古が始まる。
ギコチナイ動作で各挨拶を終えると、坂久保さんにいわれ、おれと臼田さん、新人道場生の三人は、おれらの指導に回る向山五段と共に空きスペースへと移動した。
向山さんは、六九歳の老年ではあったが、見た感じはまだ五〇代といわれても不思議ではなかった。
向山さんとの挨拶を済ませると、早速稽古に移った。まずやることといえば、一番最初にやる基本の業、「正座前」だ。
「正座前」はその名の通り、正座の状態から刀を抜き、膝立ちの状態で相手の胸ーー道場によっては、正座状態の相手の目ーーを横一線に斬撃し、そのまま真っ向に縦一閃する基本中の基本の業だ。
とはいえ、この業を極めようとすると、まぁ大変なんだけど、その話をし出すと長くなるんでしないでおくわ。
早速、向山さんの基太刀ーー指導者が練習生の稽古に合わせて先に業を行うことーーに合わせて「正座前」をやってみるのだが、
抜けない。
刀が鞘から離れないのだ。
これには困り果ててしまった。予想以上に刀を鞘から放つのが難しいのだ。
いざ、刀が抜けても、抜き様横一閃をするどころか、剣線が大きくブレ、とてもじゃないが敵を切るような動作にはなっていなかった。
その後の縦一閃に関しては難なく行えたのだが、更に難しかったのが、大血振りだ。
大血振りは、早い話が上から刀を振って血を振るう動作だ。多分、アニメやマンガ、映画なんかで一度は見たことがあるのではないだろうか。
が、問題は片膝立ちの状態から大血振りをし、振っている最中に立ち上がらなければならないということだ。
正直、文章にしておきながら、自分でも説明しづらいなと思っているのだけど、読んでいるほうはもっとわからんよな。まぁ、早い話が、刀を下に振り下ろしながら立ち上がるってことよ。難しいよな。
案の定、その当時のおれもその動きができなくて本当に困った。まぁ、何となくはできるんだけど、淀みなくなんてまず無理だった。
そして、最後に納刀だ。これもわざわざいうまでもないのだけど、
刀が鞘に納まらないのだ。
そもそも、殺陣で習ったときは、納刀は「左足を引いて行う」ということだったのだけど、「正座前」にて行う納刀は右足を引いて行う。
要は鞘のある左側の足を引かない分、刀の切っ先から鞘の鯉口までの距離が短くなり納刀しづらくなるということだ。
これには完全に困惑してしまった。これまで殺陣で習った内容とは丸っきり異なっていたからだ。まぁ、今だからいうけど、あの殺陣サークルで教えていた内容はほぼほぼインチキだったんよね。残念だけど。
ま、そんな感じで苦悩しながら、「前」に続き、「右」、「左」、「後」と三つの業をやったのだけど、ダメだったよね。
「どうでしたか? 続けてみます?」
稽古終了後、坂久保さんにそう訊ねられる。そこで臼田さんは、入門を宣言し、おれはーー
「面白かったです。是非、もう少し体験してみたいです」
と半ばリップサービスみたいなことをいいつつも、本当に上達できるのだろうかと不安に思うのだった。これが、おれの居合とのファーストコンタクトだったーー
とまぁ、こんな感じ。折角だからもう少し続きを書いてみるか。次回以降も何回か続けて見るわ。そうだな……、初段取るくらいまでを駆け足で書いてみるか。じゃ、そんな感じで。
アスタラビスタ。
大概の人は首を捻ってしまうかもしれない。というのも、この「特技」というのが、カテゴリーとしてかなり曖昧なモノだからだ。
特技ーー辞書によると「特別な技能」とある。
また、ある記述によれば、他者よりも優れている技術とある。
となるとかなり選ぶのが難しくなる。
というのも、「自分が『特技』と呼べるほど、それを極めているのか」と考えた時、一歩引いてしまう人が多いだろうからだ。
確かに、自分の技能に対し謙遜するのは悪いことではないし、「特技」と称した割に大したことがなかったとなれば、これほど恥ずかしいことはない。
加えていえば、「専門性の強い場所で、その専門分野を特技と称することをよしとするか」という問題もある。
これは簡単にいえば、こういったサイトで「特技は文章を書くことです」と宣言するようなことだ。
変な話、こういったサイトでシナリオをはじめ、その他文章を書くのは、表現したいことがあるからという理由もあるだろうが、やはり、書き手の潜在意識の中で、「自分には文章を書く力がある」と信じているからだと思う。
変な話、おれも自分で自分の文章を「駄文」だとか、「三流」だとかいっているが、何だかんだで、そこら辺の人よりは文章が書けるほうなのではないかとは思っている。まぁ、こういったサイトでは底辺も底辺なんだろうけど。
とはいえ、そういったコミュニティの中で「特技は文章を書くことです」と称するのはかなりリスキーだ。
何故なら、ある意味それは「当たり前のこと」だからだ。
ある専門性を持ったコミュニティや組織で、その専門分野を「特技」とするのは野暮、というか当たり前のこと過ぎて逆に「特技じゃなかったら何なのか」ということになってしまう。
とまぁ、ここらの話は個人によって意見はまちまちだろう。おれも自分の意見が絶対とは思わないしな。この話はここらで切り上げるわ。
さて、こんな風に特技に関して話して来たワケだけど、かくいうおれにとっての特技は何かといわれたら、それは恐らく「居合」になるのではないかと思うのだ。
おれとしても慢心はしたくないし、自分でもまだまだ未熟だと思っているから特技と称するには抵抗があるのだけど、敢えて特技は何かと定めるなら、居合ぐらいしかないだろう。一応段持ちだし、大会でも二度入賞してるしな。
さて、そんな感じで前置きが長くなったけど、今日こそは『居合篇』の続きを書いていくわ。とりあえず、あらすじーー
『ブラストに嫌気が差した五条氏は、市民体育館にて見つけた居合の道場のチラシを頼りに、居合の体験に出向いた。そこで出会ったのは、後に良き仲間となる「臼田さん」と、良き師匠となる「坂久保先生」だった』
とこんな感じだな。さて、書いてくわーー
着替えを済ませて稽古場である剣道場に入ると、坂久保さんから居合刀をお借りした。長さは二尺三寸五分、おれが扱うには短いかもしれないとのことだった。
袴の下に巻いた帯の下から二枚目に、刀を差す。不思議といい気分。多分、ちゃんとした刀ーー模造刀とはいえーーを差したのは初めての経験だったからだろう。
これまで殺陣で差していたのは鞘なしの木刀だったこともあって、そこまで気分は乗らなかったが、やはり居合刀を帯刀すると気が引き締まる。
試しに鞘から刀を抜いてみると、刀身の輝きに思わずこころを奪われてしまった。真剣とは違うとはいえ、模造刀でも感覚は全然違った。
坂久保さんの号令で稽古が始まる。
ギコチナイ動作で各挨拶を終えると、坂久保さんにいわれ、おれと臼田さん、新人道場生の三人は、おれらの指導に回る向山五段と共に空きスペースへと移動した。
向山さんは、六九歳の老年ではあったが、見た感じはまだ五〇代といわれても不思議ではなかった。
向山さんとの挨拶を済ませると、早速稽古に移った。まずやることといえば、一番最初にやる基本の業、「正座前」だ。
「正座前」はその名の通り、正座の状態から刀を抜き、膝立ちの状態で相手の胸ーー道場によっては、正座状態の相手の目ーーを横一線に斬撃し、そのまま真っ向に縦一閃する基本中の基本の業だ。
とはいえ、この業を極めようとすると、まぁ大変なんだけど、その話をし出すと長くなるんでしないでおくわ。
早速、向山さんの基太刀ーー指導者が練習生の稽古に合わせて先に業を行うことーーに合わせて「正座前」をやってみるのだが、
抜けない。
刀が鞘から離れないのだ。
これには困り果ててしまった。予想以上に刀を鞘から放つのが難しいのだ。
いざ、刀が抜けても、抜き様横一閃をするどころか、剣線が大きくブレ、とてもじゃないが敵を切るような動作にはなっていなかった。
その後の縦一閃に関しては難なく行えたのだが、更に難しかったのが、大血振りだ。
大血振りは、早い話が上から刀を振って血を振るう動作だ。多分、アニメやマンガ、映画なんかで一度は見たことがあるのではないだろうか。
が、問題は片膝立ちの状態から大血振りをし、振っている最中に立ち上がらなければならないということだ。
正直、文章にしておきながら、自分でも説明しづらいなと思っているのだけど、読んでいるほうはもっとわからんよな。まぁ、早い話が、刀を下に振り下ろしながら立ち上がるってことよ。難しいよな。
案の定、その当時のおれもその動きができなくて本当に困った。まぁ、何となくはできるんだけど、淀みなくなんてまず無理だった。
そして、最後に納刀だ。これもわざわざいうまでもないのだけど、
刀が鞘に納まらないのだ。
そもそも、殺陣で習ったときは、納刀は「左足を引いて行う」ということだったのだけど、「正座前」にて行う納刀は右足を引いて行う。
要は鞘のある左側の足を引かない分、刀の切っ先から鞘の鯉口までの距離が短くなり納刀しづらくなるということだ。
これには完全に困惑してしまった。これまで殺陣で習った内容とは丸っきり異なっていたからだ。まぁ、今だからいうけど、あの殺陣サークルで教えていた内容はほぼほぼインチキだったんよね。残念だけど。
ま、そんな感じで苦悩しながら、「前」に続き、「右」、「左」、「後」と三つの業をやったのだけど、ダメだったよね。
「どうでしたか? 続けてみます?」
稽古終了後、坂久保さんにそう訊ねられる。そこで臼田さんは、入門を宣言し、おれはーー
「面白かったです。是非、もう少し体験してみたいです」
と半ばリップサービスみたいなことをいいつつも、本当に上達できるのだろうかと不安に思うのだった。これが、おれの居合とのファーストコンタクトだったーー
とまぁ、こんな感じ。折角だからもう少し続きを書いてみるか。次回以降も何回か続けて見るわ。そうだな……、初段取るくらいまでを駆け足で書いてみるか。じゃ、そんな感じで。
アスタラビスタ。