【一年三組の皇帝~伍拾玖~】
文字数 605文字
声が震えていた。
「おれがバカだったよ。和田の件は完全におれが悪かった。それと、お前をフクロにしたことも......」
辻の声が震えていた。明らかに感情が震えている。これは何だろうかーーこれは何の感情だろうか。悔しさか。それは自分が今までしてきたことに対する? それともぼくに負けたことに対する? それかぼくにこんなことをしていることに? いずれにしてもぼくが狼狽するには充分だった。
「......何であんなことしたんだよ」
ぼくはいった。多分、今ここにある光景に対する気持ちを紛らわしたかったんだと思う。辻は啜り泣きながら答えた。
「......ムカついたんだよ。ウジウジしてる姿にさ。それに何やっても反応がない感じも。おれが何やっても反応は薄いし、それがエスカレートしてもう何してもいいやみたいな感じになったのはあると思う。それに......、何というか、自分は強いみたいな勘違いしてたんだろうな。そこをお前に付け込まれた。気づいたら教室でおれに向けられていた目は『怖い』から『軽蔑』に変わってた。でも、それも当たり前だよな......」
何だか惨めになってきた。そして、あの時ふと思ったことが現実になったことを知った。和田を救うためには辻たちを傷つけなければならない。実際、辻は傷ついていたのだ。そして、その切っ掛けを作ったのはいうまでもない自分。
啜り泣く声が下の階の喧騒に紛れて静かに響いた。
【続く】
「おれがバカだったよ。和田の件は完全におれが悪かった。それと、お前をフクロにしたことも......」
辻の声が震えていた。明らかに感情が震えている。これは何だろうかーーこれは何の感情だろうか。悔しさか。それは自分が今までしてきたことに対する? それともぼくに負けたことに対する? それかぼくにこんなことをしていることに? いずれにしてもぼくが狼狽するには充分だった。
「......何であんなことしたんだよ」
ぼくはいった。多分、今ここにある光景に対する気持ちを紛らわしたかったんだと思う。辻は啜り泣きながら答えた。
「......ムカついたんだよ。ウジウジしてる姿にさ。それに何やっても反応がない感じも。おれが何やっても反応は薄いし、それがエスカレートしてもう何してもいいやみたいな感じになったのはあると思う。それに......、何というか、自分は強いみたいな勘違いしてたんだろうな。そこをお前に付け込まれた。気づいたら教室でおれに向けられていた目は『怖い』から『軽蔑』に変わってた。でも、それも当たり前だよな......」
何だか惨めになってきた。そして、あの時ふと思ったことが現実になったことを知った。和田を救うためには辻たちを傷つけなければならない。実際、辻は傷ついていたのだ。そして、その切っ掛けを作ったのはいうまでもない自分。
啜り泣く声が下の階の喧騒に紛れて静かに響いた。
【続く】