【丑寅は静かに嗤う~旅立】
文字数 710文字
良く晴れた日、村の辻の土を踏みしめる草履が一足ある。
手には手甲、脚には脚絆、頭には笠を被り、杖をついて歩くお遍路の格好をした白装束の者がそこにいる。
白装束の者は村から離れていく。その足取りは何処か重く、村への想いを断ち切れないというのが良くわかる。それもそのはず。
白装束の正体はお京だったのだ。
桃川が村を去った後、お京は寺へ帰り、良顕からことの真相を聴いた。お京は驚きを隠しきれなかった。自分の慕っているじい様が、桃川とお雉の両親を、また猿田源之助の仕えていた旗本を殺した張本人だというのだから。
その事実がお京を突き動かした。別に良顕のことがキライになったワケではなかった。
だが、自分はここにとどまっているべきではないと悟った。
確かに自分が飛び出せば、良顕はひとりになってしまう。だが、良顕はお京を止めることなく、お京も悲しげに村を去ることを決めた。
お雉に、共に連れていってくれと頼んだ。お雉は、一旦はそれを了承したが、お京を出し抜いてひとりでに村を去ってしまった。
裏切られた気分だった。
結局お京は、そのままひと月、ふた月は村に留まったが、村を出るという考えは日に日に強まっていった。理由はわからない。だが、諦めるワケにはいかなかった。
当てもなく、うしろだてもない旅が苦しいものになろうことはお京にだってわかっていた。だが、留まってはいられなかった。
この日、お京は村を出る決心をした。
別れ際、良顕はお京に旅に役立つモノとして、幾分かの荷を渡した。お京は涙を飲んで良顕の荷を受け取り、村を後にした。
澄んだ青空。だが、お京の頬には雨。心地よい風が拭いている。
お京はひとり涙を飲んだ。
【終幕】
手には手甲、脚には脚絆、頭には笠を被り、杖をついて歩くお遍路の格好をした白装束の者がそこにいる。
白装束の者は村から離れていく。その足取りは何処か重く、村への想いを断ち切れないというのが良くわかる。それもそのはず。
白装束の正体はお京だったのだ。
桃川が村を去った後、お京は寺へ帰り、良顕からことの真相を聴いた。お京は驚きを隠しきれなかった。自分の慕っているじい様が、桃川とお雉の両親を、また猿田源之助の仕えていた旗本を殺した張本人だというのだから。
その事実がお京を突き動かした。別に良顕のことがキライになったワケではなかった。
だが、自分はここにとどまっているべきではないと悟った。
確かに自分が飛び出せば、良顕はひとりになってしまう。だが、良顕はお京を止めることなく、お京も悲しげに村を去ることを決めた。
お雉に、共に連れていってくれと頼んだ。お雉は、一旦はそれを了承したが、お京を出し抜いてひとりでに村を去ってしまった。
裏切られた気分だった。
結局お京は、そのままひと月、ふた月は村に留まったが、村を出るという考えは日に日に強まっていった。理由はわからない。だが、諦めるワケにはいかなかった。
当てもなく、うしろだてもない旅が苦しいものになろうことはお京にだってわかっていた。だが、留まってはいられなかった。
この日、お京は村を出る決心をした。
別れ際、良顕はお京に旅に役立つモノとして、幾分かの荷を渡した。お京は涙を飲んで良顕の荷を受け取り、村を後にした。
澄んだ青空。だが、お京の頬には雨。心地よい風が拭いている。
お京はひとり涙を飲んだ。
【終幕】