【帝王霊~玖拾参~】

文字数 1,134文字

 まるで自分の身体が震えているようだった。

 震えていたのはスマホだったはずなのに、ぼくはまるでぼく自身の身体が震えているような、そんな錯覚に陥っていた。確実に近づいてくるタイムリミットと悲劇的な終わりがぼくの頭をよぎって行った。

 怖い。

 自分がどうなるとかそんなことはどうでも良かった。それよりも自分にとって大切な友人との不本意な別れがやって来るのではないか、もう二度と会えなくなるのではないかという恐怖感が皮膚を覆う寒気というシャツのように張り付いて来る。

 スマホの震えーーそれは電話ではなく、メッセージアプリにメッセージが届いた震え。電話ではないということは、緊急性はそんなにないということだろうか。

 アプリを開いてみると、そこには関口の名前ーーこんな時に一体、何だ?

 関口がぼくにメッセージを送って来るなんてことは殆どない。そもそも仲がいいワケでもないしーー向こうは友人だと思っているようだけど、ぼくは彼が不気味で仕方ないーー、そもそも毎日のように会っているのにメッセージを送る理由がないというのが、彼がぼくだけでなく人にメッセージを送らない理由なんだそうだ。ぼくはそんなメッセージ無精の関口からのメッセージを開いた。

 そして、硬直した。

「......どうしたんだよ?」

 いずみの声ーーまるで蜃気楼のようにその存在自体が曖昧で、自分が呼び掛けられていることも幻想のようだった。声は聴こえていた。だがすぐには反応出来なかった。ゆっくりといずみのほうを見た。

 いずみの顔は強張っていた。いつものいずみなら何の緊張もまとわず、ダルそうにしてるかイラついているかだというのに。そして、ぼくの表情を見ると、その強張った表情に不安の絵の具を混ぜてグラデーションした。ぼくはゆっくりと口を開いた。

「いずみ、悪いけど帰ってくれないか?」

 それを聴いていずみは、は?と声を上げた。

「お前、いきなり何いってんだよ?」

「いずみに何かあって欲しくないから、さ」

「何かって......、ワケのわからないこといってんじゃねえよ。てか、その先輩のお兄さん? その人に帰って大人しくしてろっていわれたんなら、それはあたしだけじゃなくて、アンタもそうでしょ?」

 その通りだーーその通り。ここで先輩のいうことを素直に聴くならぼくもいずみも家に戻るべきなのだ。だけど、今のぼくのいい分からしたら、いずみ『は』帰るように、と受け取れると思う。そして、ぼくは帰ることなくハルナを探し続ける。そう取れたのではないかと思う。それも当然だ。だってーー

「何かあったのかよ」

 いずみのことばに、ぼくはゴクリとツバを飲み、そして口許を震わせながらいった。

「ハルナの居場所がわかったかもしれない......」

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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